あまり気にしたことがなかったが、同じ日に身長2m超の選手が3人、ウィンブ…
あまり気にしたことがなかったが、同じ日に身長2m超の選手が3人、ウィンブルドンのシングルスでプレーしたことは過去にあっただろうか。211㎝のライリー・オペルカ(アメリカ)、同じ身長のイボ・カルロビッチ(クロアチア)、そして203㎝のケビン・アンダーソン(南アフリカ)が、この日、そろってコートに立った。
球足の速い芝コートは、ビッグサーバーに有利とされる。身長の高い選手はサーブの球速が出やすいだけでなく、角度をつけて打てるので、相手のラケットが届きにくい所を狙える。それがどんどん入ってきたら、相手はお手上げだ。ピート・サンプラス(アメリカ)が勝ちまくった1990年代に比べれば圧倒的な優位は薄れたが、今もビッグサーバー(その大半は身長の高い選手)が活躍しやすい大会であることに変わりはない。
それにしても、2mの巨人のそろい踏みはそうそうあることではない。その3人が明暗を分けた。オペルカは第22シードのスタン・ワウリンカ(スイス)に最終セット8-6で競り勝ち、アンダーソンもヤンコ・ティプサレビッチ(セルビア)を破ったが、カルロビッチは、身長173㎝のトーマス・ファビアーノ(イタリア)にフルセットで敗れた。
ファビアーノについては以前、身長170㎝と記した資料を見た記憶もある。170㎝で登録している西岡良仁、ディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)と並び、トップ100で最も小柄な選手の一人だ。
カルロビッチはサーブからネットダッシュしてくる。211㎝が突進してきたら、巨大な壁が目の前に迫ってくるように感じるだろう。それでもファビアーノは、その足もとをえぐり、わずかに見えた空間にパッシングショットを通した。5セットで2度あったタイブレークはカルロビッチが制したが、第1、第3セットと最終セットはファビアーノが相手のサービスゲームを1度ずつブレーク。これしかないという勝ち方で、巨人を倒した。
身長差40㎝近い二人を見れば、どうしても低い方の健闘を祈りたくなる。判官びいきという言葉が当たるかは分からないが、どの大会でも、これほどの身長差対決が実現したら、小柄な方に声援が集まる。小兵が技と戦術を駆使、ガッツを発揮して巨漢を倒すのはこの競技の醍醐味でもある。
実はこのファビアーノ、今年の全豪でも211㎝のオペルカに勝っている。もちろん、今大会の1回戦で身長193㎝の第7シード、ステファノス・チチパス(ギリシャ)を破ったことも忘れてはならない。
ファビアーノは巨漢を倒す秘策でも持っているのか。オペルカは、この日の試合後、ファビアーノについて話している。
「相手に関係なく彼は良い選手であり、大柄な選手にも強いということだと思う。イボ(カルロビッチ)に勝ったことも驚きではない」
小柄でも、芝の特性を理解し、チーターのようにすばしっこく走り、蜂のように鋭いひと刺しを相手に突き立てることができれば、巨漢選手を倒せる。そこが勝負の妙なのだ。
オペルカに屈したワウリンカは、ビッグサーバーとの対戦での心構えを話している。
「自分のやることに集中すべきだ。チャンスはあまり来ないだろう。鋭敏であること、普段以上に攻撃的にやること、そして、プレッシャーにさらされるのを受け入れることだ」
ウィンブルドンを除く四大大会、全豪、全米、全仏で優勝経験のあるベテランは、さすがにいいことを言う。
小兵の代表格である西岡も、前日の1回戦を勝っていたら2回戦でアンダーソンとの身長差対決が実現したのだが、ティプサレビッチに敗れた。ウィンブルドンで3度目の初戦敗退を味わった西岡は、こう嘆いた。
「サービスゲームが難しい。相手のリターンが返ってくることを想定している自分と、リターンが返ってこない、もしくは返ってきてもチャンスボールになるという想定をしているビッグサーバーとは差がある」
ティプサレビッチというより、一般論としてビッグサーバーとの違いを述べたものだ。その分析には、なるほどと納得させられるが、次こそは芝を、またビッグサーバーを攻略してほしい。
(秋山英宏)
※写真は身長差25cmのファビアーノ(左)と198cmのサム・クエリー(右)(ATP250 イーストボーンのときのもの)
(photo by Hongbo Chen/Action Plus via Getty Images)