サッカーとは、実に不条理なスポーツである。美しい演技が評価に直結する採点競技とは異なり、たとえ質で相手を上回っても…
サッカーとは、実に不条理なスポーツである。美しい演技が評価に直結する採点競技とは異なり、たとえ質で相手を上回っても、それが結果につながるとは限らない。味の素スタジアムで行なわれた首位攻防戦は、サッカーの真理を突きつけられる、そんな一戦だった。

横浜FMを率いて2年目のアンジェ・ポステコグルー監督
スペインへと旅立つ久保建英の壮行的な雰囲気を含んでいたFC東京と横浜F・マリノスの一戦は、1位と2位の首位攻防戦という、より重要な見どころを備えていた。
ここまでの両者の歩みは対照的だ。堅い守備と鋭いカウンターを武器に勝利を重ねてきたFC東京に対し、横浜FMは2年目を迎えたアンジェ・ポステコグルー監督が標榜する野心的な攻撃スタイルでポイントを積み上げている。
両者の勝ち点差は、わずかに3。横浜FMとすれば、勝てば首位に浮上できる可能性もあった。
しかし、横浜FMにとってFC東京は、いわば噛み合わせのよくない相手だった。逆にFC東京とすれば、おあつらえ向きの対戦相手だっただろう。高いラインを保ち、敵陣でボールを保持しようとする横浜FMが、スピードに優れる攻撃陣を備えたFC東京のカウンターにさらされるのは、戦前から予想できた展開だった。
終始、ボールを支配したのは横浜FMだった。
序盤こそ、高い位置からプレスを仕掛けてくるFC東京に対し、ボールを運ぶことが難しくなっていたが、両サイドが果敢に仕掛けることで、相手を後方に押し込んでいく。15分にはあきらめずにボールを追った仲川輝人の折り返しを、マルコス・ジュニオールが押し込んで、幸先よく先制点を奪っている。
しかし、直後にミスがらみで同点とされたのが痛恨だった。試合を振り出しに戻されると、それまではハイプレスを狙ってきたFC東京が、後方で構える対応へと変更。これが、この試合のターニングポイントとなった。
仮に同点に追いつかれていなければ、FC東京はより前に出てこなければならず、守備組織に隙が生まれていたはずだ。しかし、ブロックを敷いたFC東京の守備はまさに強固であり、横浜FMの巧みなパスワークをもってしても、崩すのは困難だった。
38分にはCKを跳ね返され、そこからのカウンター1本で逆転ゴールを許すと、後半立ち上がりにも速さと強さを備えたFC東京の2トップに翻弄され、立て続けに2失点。終了間際に仲川が一矢を報いたものの、首位浮上を狙った横浜FMは、首位チームに完膚なきまでに叩き潰される結果となった。
「本当に残念な結果だった。何が残念かと言うと、内容がよかったなかで結果がついてこなかったことだ」
ポステコグルー監督が言うように、横浜FMがいい内容のサッカーをしていたのは確かだろう。
ビルドアップを大事にし、両ウイングが幅を取った中央のスペースにボランチだけでなくサイドバックも入り込み、パスワークに絡んでいく。出し手と受け手の関係性もよく、ここぞというタイミングで縦パスがズバッと入り、敵陣へと迫った。
もっとも、問題となったのは、アタッキングエリアでの振る舞いだ。相手の人数が揃う中央のエリアでの崩しに固執したきらいがある。あえて厳しい局面へと突っ込んでいるように見えた。それがスタイルなのだろうが、よほどのクオリティがないかぎり、相手の人海戦術を打ち破るのは困難である。
しっかりとショートパスをつないで、ようやくエリア内にたどり着いても、そこから先には進めない。そこで奪われ、一発のカウンターからピンチを招く。その繰り返しだった。
ひとつずつ丁寧に重ねた積み木が、完成目前で、ひと振りのハンマーに叩き潰されてしまう――。そんな無慈悲な光景が想起される展開だった。
いわばFC東京は効率的で、横浜FMは非効率だった。リアリズムとロマンの戦いだったと言えるかもしれない。対照的な両者のスタンスが、そのまま結果に表われたのだ。
プロは結果が最優先される世界である。一方で、プロは興行の世界でもある。リスクを承知で常にゴールに向かい続ける横浜FMのサッカーは、まさにエンターテイメント性に満ち溢れている。
FC東京の強みがカウンターにあったことは、端から理解していたはずだ。ならば、横浜FMとすれば、ラインを下げて対応することもできたであろう。CBの畠中槙之輔にその疑問をぶつけると、「その考えはなかったです」と、きっぱり言い放った。
「11対11で人数もそろっているし、プレスもかけられる。しっかりとファーストディフェンスで潰せるシーンもあったので、引く必要はないと思っていました」
カウンターで失点を重ねても、あくまで高いラインを保ち続ける。この強気な姿勢を、無謀だと笑うことはできないだろう。サッカーの歴史を紐解けば、常に革新が新たな時代を築いてきたからだ。
「私たちのサッカーはエキサイティングであり、見に来てくださっているファン・サポーターの方がワクワクするようなサッカーをやってきた。それを変えるつもりはまったくないし、2年目の段階でもいいチームになっていると自負している」
オーストラリアからやって来た革命家は、自身のスタイルを貫き、天下を取ろうとしている。もちろん今はまだ、内容と結果が伴わない状況にある。それでも、昨季は残留争いに苦しんだチームが、今季はシーズンの半分を終えた段階で上位争いを演じられるまでになったのだ。この劇的な成長が、さらなる進化を期待させる。
「まだまだ発展途上だし、学ばなければいけないことはある。今日のようなカウンターで来るチームに対して、どう戦うのか。この教訓をどう生かすかだと思う。しかし、自分のやろうとしているサッカーがここで止まることはない。突き進んでやっていくだけ」(ポステコグルー監督)
内容と結果は相反するものではない。両立できるものである。横浜FMは、その崇高で、困難なミッションに挑み続けていく。