「令和の怪物」こと大船渡のMAX163キロ右腕・佐々木朗希投手が高校最後の夏、甲子園切符を懸けて岩手大会に臨みます。岩…
「令和の怪物」こと大船渡のMAX163キロ右腕・佐々木朗希投手が高校最後の夏、甲子園切符を懸けて岩手大会に臨みます。岩手には花巻東、盛岡大付など私立の強豪チームがひしめき、これらの壁を乗り越えて夏の甲子園行きを決めるのは、並大抵のことではありません。
ネット裏にはプロのスカウトが集結し、東京から大勢の報道陣も駆けつける中、佐々木の一挙手一投足に観客の視線が注がれることになります。勝負は時の運でもありますが、甲子園に行けなければ全てが終わりかといえば、決してそうではありません。
特に現在、日本のプロ野球界を牽引するセ・パ両リーグのエース、巨人・菅野智之とソフトバンクの千賀滉大は、ともに甲子園の出場歴がないのです。
いやむしろ、高校時代に連投、連投で酷使された経験がないからこそ、じっくりと段階を踏んで大投手への道を切り開いたと言えるかもしれません。当時、それほど注目を浴びたわけではなかった二人の高校時代にスポットを当ててみたいと思います。
「未完の大器」だった東海大相模時代の菅野
菅野にとって「高校最後の夏」となったのは2007年でした。同世代の「BIG3」には大阪桐蔭・中田翔、仙台育英・佐藤由規、成田・唐川侑己が名を連ねていました。もちろん、菅野は最速148キロを誇る名門・東海大相模のエースとして、激戦区・神奈川の中でも名の知られた存在でしたが、まだ粗削りの「未完の大器」。プロ入りは「大学でワンクッション」後と見られていました。
むしろ、本人は不本意だったでしょうが「原辰徳監督の甥」「名将・原貢の孫」という見出しとともに報道されることが多かったのです。球界のエースとなった現在、このような背景を前面に出して菅野を報じるメディアはあまり見当たりません。実力と結果で「菅野智之の伯父が原辰徳」に転換させた努力は評価されてしかるべきでしょう。
そんな17歳の菅野は夏の神奈川大会準決勝・横浜戦で横浜スタジアムに3万人の大観衆が詰めかける中、168球を投げて4失点完投勝ち。しかし翌日に行われた桐光学園との決勝では、同点の9回2死満塁に2点タイムリーを浴び、8-10で敗戦。佐賀北の「がばい旋風」が吹き荒れたあの夏の甲子園には、あと一歩及びませんでした。
東海大に進学後、大学日本代表にも選出され、徐々に才能は開花。4年後のドラフトを文句なしの1位候補として迎えることになります。プロ入り後の活躍については、今さら記すまでもないでしょう。
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愛知大会3回戦敗退…知る人ぞ知る存在だった蒲郡時代の千賀
千賀は中学までは主に三塁手。蒲郡に入学してから本格的に投手に転向し、2年生からエースを務めます。最後の夏も最速144キロの速球で高校野球マニアから注目される存在でしたが、プロのスカウトが大挙して動くほどの知名度はなく、地元にあるスポーツ用品店の店主がソフトバンクのスカウトに推薦した結果、2010年の育成ドラフト4位で入団することになります。
余談ですがホークスは同年の育成ドラフト6位で大分・楊志館の強肩捕手だった甲斐拓也を指名します。ソフトバンクのスカウトの眼力、育成能力にあらためて唸ってしまう事実です。
蒲郡の夏初戦は甲子園に3度出場経験のある古豪・愛知商が相手。7-5で競り勝ち、3回戦に駒を進めますが、ここで岡崎商に1-7で完敗。全国的なニュースになることもなく、ひっそりと高校最後の夏が終わったのです。
同世代でプロ入りした選手には履正社・山田哲人(ヤクルト1位)、習志野・山下斐紹(ソフトバンク1位)、前橋商・後藤駿太(オリックス1位)、PL学園・吉川大幾(中日2位)、東海大相模・一二三慎太(阪神2位)、糸満・宮国椋丞(巨人2位)らがいます。比較的、打者に逸材豊富な年だったと言えるでしょう。
千賀のホークス育成時代の背番号は「128」。しかしファームでの鍛錬の結果、最速は153キロにまで上昇。2年目の4月に支配下選手登録されると、ジャパニーズ・ドリームをつかんでいきます。
古くは金田正一、山田久志、稲尾和久、村田兆治、村山実、江夏豊らプロ野球を彩ってきた大投手も甲子園に出ていないことも興味深いです。一方、甲子園組には桑田真澄、松坂大輔、ダルビッシュ有、田中将大らビッグネームがそびえるのも事実としてあります。高校ラストサマー。佐々木の健闘を祈るばかりです。
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[文/構成:ココカラネクスト編集部]