人呼んで「鬼軍曹」。千葉ロッテマリーンズの鳥越裕介ヘッドコーチはいつも厳しい視線を選手に注いでいる。選手を指導する上で…

 人呼んで「鬼軍曹」。千葉ロッテマリーンズの鳥越裕介ヘッドコーチはいつも厳しい視線を選手に注いでいる。選手を指導する上で大事にしているのは「人間力」だ。野球が上手い。それだけの選手ではなく人間力のある魅力的な選手を育てたい。いつも強い信念を持ち、指導にあたる。

 

(c)千葉ロッテマリーンズ

 

 

 「プロに行くことが決まった時に大分県立臼杵高校の先輩で、西鉄ライオンズでキャッチャーとして活躍された和田博実さんの元へ、ご挨拶に伺った。その時に頂いた言葉。今も大事にしているし実際に、それが一番大事だと思う。人としてどうあるかが最終的に大事」

 今は亡き大先輩がプロ入りした際に花向けの言葉として教えてくれた人間力の大切さ。それは長い月日が流れ、現役を引退し指導者の立場になった今でも胸に突き刺さっている。プロ野球選手として野球の力だけがあっても意味がない。人間力あってこそ存在価値がある。人間力溢れる選手こそが一流と呼ばれる。そう信じるからこそ、こと日々の立ち振る舞いには厳しく当たる。礼儀や挨拶などの細かい事や生活態度にも容赦なく苦言を呈する。

 指導をする上で大事にしているポリシーがある。それは親が子を想うように接することだ。指導者となって選手の親と接する機会が多くなった。そのたびに子を預ける親の愛情をヒシヒシと感じ取ってきた。

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 「自分は子供がいないけど親の愛は分かる。子供は宝物。子供のためなら親は何でもできるというよね。そんな子供たちを預かる立場として、軽い気持ちでやってはいけない。こっちも全身全霊で親のように接しないといけない。若い人たちの人生を預かっている。生半可な気持ちでは駄目。自分の子供のように愛情たっぷりに、こっちも人生をぶつける」

 だからこそ時には厳しく、時には優しく選手に接する。それはまさに父親のような存在。
厳しく叱るのも、その選手の人生を想っての事だ。「オレは感情的に一時の感情で怒ることはしない。これは言わないといけないと思った時に、その選手の事を想って、気持ちを込めて怒る」。怒る事。それは褒めて伸ばす事が奨励されている今の時代において、敬遠されがちである。本気で怒るのはエネルギーを要する。褒める方が、はるかに簡単なアプローチだ。楽な方を選びがちな現代の指導風潮の中にあって、選手が魅力ある人間となり、活躍して欲しいと心から願うからこそ、あえて厳しい言葉を並べる。

 「厳しくするからには、その分、自分もしっかりとしないといけない。練習前、練習中からしっかりと見ていてあげないといけない。見ていないで指摘は出来ないからね。選手は見てくれているかどうかは分かっているもの。見ていないヤツに言われたくないとなるよね。説得力がない」

 ほとばしる情熱。ゆえに周囲は敬意をこめて「鬼軍曹」と呼ぶ。ホークスコーチ時代からブレない方針。全力で選手とぶつかっていく。だから本気で怒られ、人間力を伸ばし成長してきた選手たちは父親のように慕う。人間としての成長なくして、選手としての成長なし。選手として13年、コーチ13年目。今も「人間力」を磨き、教えている。

[文:千葉ロッテマリーンズ・広報 梶原紀章]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

梶原 紀章(かじわら・のりあき)

千葉ロッテマリーンズ広報メディア室 室長。1976年8月18日生まれ。大阪府出身。関西大学卒。99年に産経新聞社大阪本社に入社しサンケイスポーツ運動部でオリックス(99~00)、阪神を担当(01~04)。04年限りで同社を退社し05年2月より千葉ロッテマリーンズ広報に就任。11年の営業職を経て12年6月より広報部門の統括責任者として千葉ロッテマリーンズの情報発信を担っている。千葉日報、朝日新聞千葉版、文藝春秋社文春コラムなど連載コラムは多数。

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