4月の日本選手権男子50メートル自由形で自己ベストを更新し、初の準決勝進出を果たした村上雅弥(スポ2=香川・坂出)。成長を遂げた要因は何だったのだろうか。そして、2度目の早慶戦に懸ける思いとは。その胸中に迫った。 ※この取材は6月15日に…

 4月の日本選手権男子50メートル自由形で自己ベストを更新し、初の準決勝進出を果たした村上雅弥(スポ2=香川・坂出)。成長を遂げた要因は何だったのだろうか。そして、2度目の早慶戦に懸ける思いとは。その胸中に迫った。

※この取材は6月15日に行われたものです。

「自分が思った通りに完璧に決めることができた」


日本選手権男子50メートル自由形で自身初の22秒台を記録した村上

――冬場に主に強化してきたポイントは何ですか

 大学に入ってから筋力をつけるということを重点的にやってきていました。冬場は持久力と筋力の強化を徹底的にやっていて、日本選手権では入学してきた時よりも5キロぐらい増量して、レースに臨みました。その点、冬場は筋力を強化して、肉体改造を頑張ったという感じです。基本的にウエート(トレーニング)が中心になっていましたね。

――ウエートトレーニングは楽しいですか

 僕は好きですね(笑)。Mではないですが、筋肉を痛めつけると「筋肉痛きたー」みたいな(笑)。鍛えられているという感じが好きです。

――泳ぎ込みなどで肉体改造の成果は感じられましたか

 体重が重くなるので泳ぎの部分を変えていかないと、どうしても空がきになってしまったり、反対に泳ぎが良くなればなるほど多い水を引っ掛けてかくことになってもっとパワーが必要になるので、泳ぎにも変化をもたらしていくことが大事でした。スカーリング(水をとらえるための動作)やサイドキックなどのドリルを重点的に毎日続けていったという感じです。

――スタートにも変化はありましたか

 そうですね、スタートはだいぶ変わりました。15メートルの通過をできるだけ速くしようと。入学した時には15メートルの通過に6秒5ぐらいかかったんですよ。それを世界のトップ選手は4秒9〜5秒0で通過するので、その時点で1秒5ぐらい開いてしまいます。まずはスタートの改善ということで、脚力の強化をしました。あと、飛び出しの角度が全然駄目だったので、ひたすら毎日のようにスタート練習をして、変えていきました。今は15メートルを5秒7でいけるぐらい速くなったので、スタートが速くなっただけベストが出たという部分もあります。

――その話にあったように、日本選手権の予選では自己ベストを更新されましたが、いかがでしたか

 自分がちゃんと努力してきたことが結果に出たのがすごくうれしかったなと思います。

――練習をしていて、このぐらいのタイム(22秒98)が出ると予想はしていましたか

 もちろん。23秒を切るというのを目標にずっとやってきたので、達成できました。しかも15メートル、25メートル、50メートルとラップタイムがありますが、自分が思った通りに完璧に決めることができたので、すごく満足のいくレースでした。

――22秒台が出せるという自信はいつからありましたか

 感覚が確実に良くなっているという積み重ねで、レースの日に「これは今までやってきたから大丈夫だ」という自信になったので。どこからというよりは、積み重ねの途中で何らかのチェックポイントがあったのではないかなという。

――タイムが上がった要因は何だと思いますか

 レース分析が終わって、22秒9で泳げた時に、ストロークの長さとストロークテンポを意識して1年間やってきましたが、(以前と)あんまり変わらなくて。その原因にはパワーが足りなかったり、抵抗がまだ大きかったりというのがありましたが、確実にスタートは高校の時のベストよりも速くなっていたので、その分0秒3上がったという感じですね。自分の良さは周りの選手よりもストロークテンポが上がるところで、そこを上げて今まで意識してきたストローク調を保てればどんどんタイムは上がっていくのではないかということで、今泳ぎを改善している途中ですね。

――準決勝進出という結果も狙い通りでしたか

 本当は準決勝に進んで23秒を切るというのが目標でしたが、思った以上にレベルが高かったので、23秒を切らないと準決勝にいけないという。なので、予選で切れたことはうれしかったですが、初めて準決勝を泳いで、午前と午後の時間の差で体の変化や、動き方が全然変わりました。そのあたりは準決勝のタイムに響いてきたのかなというのはありますね。

――午前と午後にレースがある場合、どのように調整はされますか

 基本的に朝体を動かして、午後は午前のレースで駄目だったところを修正して、改善できるようにその間にウォーミングアップをもう一度してみたり、チューブなどを使って筋肉を締めたり、ケアを受けるなどをやっていくのがいいかな、と今回の日本選手権で学べたので、それは良かったなと思います。

――準決勝では、予選よりも緊張感などはありましたか

 緊張感というよりは、代表になるような選手と泳げたことはいい経験になりましたが、代表選手は準決勝はまだ予選のうちに入っているのですごくリラックスして招集所にも来ていたので、そのぐらいの余裕がないと僕も戦っていけないのだろうなというのは実感しましたね。

――決勝のレースは見ましたか

 もちろん。その日レースは全然ありませんでしたが、会場まで行って決勝レースは見ました。その時に中央大学を卒業したイトマン東進の塩浦選手(慎理)がいいタイムで泳いで。目の前で21秒半ばで泳いだというレースを見れたので、自分の中ですごく印象的でした。その印象をインカレ(日本学生選手権)にもつなげていけたらいいなと思っています。

――泳ぎ方を参考にしている選手はいますか

 今は自分に合った泳ぎができるように改善していますが、今まで海外の選手の泳ぎをInstagramで見てみたり、YouTubeで探してみたりして参考にしていました。特にスタートに関してはアメリカの代表選手のケーレブ・ドレッセルのスタートを参考にしながら、そこに近づけるわけではなく、その無駄のない動きを自分の体で表現できるように、改善してやってきたという感じですね。ドレッセルはすごいですね。スタートの技術に関しては、ドルフィンキックからして分からない、という感じですね。

――同じチームで練習している選手にはどなたがいらっしゃいますか

 伊藤新盛(スポ2=岐阜・中京学院大中京)、伊東隼汰(社2=東京・早大学院)、池江毅隼さん(スポ4=東京・日大豊山)、後輩の今野太介(スポ1=山形・羽黒)と峯野友輔(スポ1=大阪・関大北陽)です。大体6人でSPグループでやります。

――6人で一斉にタイムを計ることもあるのですか

 コースが取れないので、スタートは(6人で一斉は)なかなかできないです。でも隣り合わせで、僕であれば伊東隼汰や今野太介、50のレースだと伊藤新盛と並んでやることはあります。

――来年の日本選手権での目標タイムは

 来年の選手権(日本選手権)が五輪選考会なので結構緊張感も高くて。予選、準決勝、決勝と進めていけたらいいなと思っています。決勝に残るには22秒前半でないと残れないと思うのでそのあたりを目標に、できればもっと上を目指していけたらいいなと思います。

――プライベートな話に移ります。オフの日は何をされていますか

 基本的には寮でゆっくりしています。悪くいえば引きこもりですが、良くいえばオフの時間を使ってしっかり体を休めているという(笑)。僕自身インドアで、部屋で本を読んだり、映画を見たりして過ごしています。たまには友達が誘ってくれるのでご飯にも行きますし。ゆっくりしています。

――寮ではどなたと同じ部屋ですか

 幌村さん(尚、スポ3=兵庫・西脇工)と1年生の白石くん(崇大、スポ1=広島・沼田)です。この前部屋会といってご飯を3人で食べに行きましたが、3人ともすごく仲が良くていい部屋だと思います。

――その中ではどなたが一番喋りますか

 白石は基本的にあまり喋らなくて、僕と尚さんが喋っている感じですね(笑)。

――東京六大学冬季対抗戦(冬六)では伊藤選手と共に日本選手権の参加標準記録を突破されましたが、いかがでしたか

 うれしかったですね。あの日のレースも「標準は確実に切れるだろうな」と思ってレースに挑んで、1本目で切れなかったので「チャレンジレースで確実に切るぞ」という気持ちで(臨んで)切って、良かったなと思っていたら隣で(伊藤が)泣いているので何があったんだと思ったら、全く同じタイムで泳いでいて。2人とも一年間必死に頑張ってきたかいがあったなということで、僕ももらい泣きしてしまいました(笑)。

――2人で互いにお祝いはされましたか

 でも(標準記録突破は)2人とも通過点だったので。(冬六後は)日本選手権で23秒を切るという目標が2人でありました。次はインカレで伊東隼汰も含めて50メートル自由形の決勝に3人で残るという目標を立てているので、まだ途中経過のところですね。全てに次があるので、お祝いは多分最後の最後になるかなと思います(笑)。

――2年生の雰囲気はいかがですか

 結構仲は良くて、この前寮の2年生のメンバーでディズニー(東京ディズニーリゾート)に行ったりしました。

――どなたの発案ですか

 1年生にはコースロープの張り替えや掃除などの仕事があって、その中で「みんなで仕事が終わったらディズニーにでも行けたらいいね」と誰かが言ったのから始まって、「じゃあ行くか」となってこの前行きました。

――先輩になり、心境に変化はありますか

 自分が1年生だったときは、先輩の背中を見て普段の生活に気を使っていたり、目上の人に対する話し方などを先輩方から学んでいたので、反対に2年生になってからはそれを見られているという意識をきちんと持って今は生活しています。僕がそうだったように、後輩は確実に自分たちのことを見て何か学ぼうとしている部分もあると思うので、そこで「あの先輩こんなことをしているから速くなったんだ」という変な誤解が生まれないように、いいふうに見えるようには頑張っています。

「インカレに向けてチームに勢いをつける」


インカレにもつながる泳ぎができるか

――ここからは早慶戦の話になります。水球や飛込の試合もありますが、そちらの選手とも仲良くされていますか

 水球も同じ寮なので、水球の皆さんとも仲良く寮生活をしています。試合自体は去年の早慶戦しか見たことがないので、今年もどんな試合になるのか楽しみですし、同期の樋爪吾朗(スポ2=埼玉栄)がどんな活躍をしてくれるか楽しみですね。(水球部門は)ユースを狙える立ち位置の選手が多いというのは知っているので、すごいんだなという。普段は普通の大学生でみんなはっちゃけて遊びますけどね。でも競技は違っても、やるときはやるところはすごいなというのは思います。

――早慶戦では水球の試合も全部見られるのですか

 基本的に見られますね。1年生の時はいろいろ仕事があったので動かないといけない部分もありましたが、今年は多分大丈夫だと思いますね。

――早慶戦ではどの種目に出られますか

 僕は50メートル自由形と100メートル自由形ですね。今回は50メートルの自由形をもう1回22秒台で泳ぐというのと、インカレに向けてチームに勢いをつけるというのも大事ですし、インカレにリレーのメンバーで入ってリレーでも活躍しないといけないと自分でも思っているので、100メートル自由形もポイントになってくるかなと思います。

――昨年に比べると早大への思い入れも強まっていると思いますが、いかがですか

 早稲田大学というよりも、早稲田大学水泳部に所属しているという自覚が今はすごく高まってきていて、負けてはいけないというよりも、早稲田の水泳部としてどのようなパフォーマンスができるか、結果がどうあれ自分が少しでもチームに貢献できるように頑張らないといけないというふうな心構えはあります。

――早慶戦には全力で挑みたいですか

 そうですね、ただ今は強化している途中で、調整期間は日本選手権よりも断然短いので、その中でどういうレースができるかという感じですね。これも経験かなと思います。

――ありがとうございました!

(取材 青柳香穂、編集 宇根加菜葉)


チームに貢献する泳ぎに期待です!

◆村上雅弥(むらかみ・まさや)

1999(平11)年9月4日生まれのAB型。176センチ、68キロ。香川・坂出高出身。スポーツ科学部2年。専門種目は自由形短距離。先輩では大谷隆二主務(スポ3=広島・呉港)とよくご飯を食べに行くという村上選手。「いつも誘っていただいて、おごっていただいて、最高の先輩ですね!」と話すと、「めっちゃ褒めるやん」と突っ込まれていました。