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トレードからおよそ半年後に和解

1年前の夏、ラプターズは生え抜きのデマー・デローザンを放出してまでスパーズからカワイ・レナードを獲得する、非情な決断を下した。

デローザンはこのトレードに傷つき、一時は精神面の状態が不安視されたが、ほどなくして新天地でのチャレンジを受け入れた。

古巣のラプターズがプレーオフで勝ち上がり続ける姿を見ても、彼は元チームメートたちにエールを送り続けた。そしておそらく、親友のカイル・ラウリーらが球団を初優勝に導いた後も、祝福メッセージを送ったのだろう。

このように『大人の対応』ができるデローザンは、実は今年の2月に、トレードを決断したラプターズ球団社長のマサイ・ウジーリとも和解していた。スパーズがトロントで試合を行なった2月下旬、ウジーリが、試合当日にあったエピソードを会見で明かした。

「スパーズがトロントで試合をした日のことなんだが、これまで誰にも話してこなかった。とても信じられないくらい素晴らしいことがあったんだ。デマーがチームのロッカールームを訪ねてくれて、素晴らしい人間性を示す行動を取った。私に近寄った彼は、ハグをしてくれた。そして、私の家族が元気にしているかを聞いてきた」

「とてもうれしかった。それから自宅に戻るまで一言も発していなくて、家に帰ったら、私の表情を見た妻から『どうしたの?』と言われてね。昨年の夏に起こったことを考えたら、驚くべき行動だと思う。デマー・デローザンは、素晴らしい人物だ」

ウジーリは、トレード成立後、デローザンに事実を伝える勇気を持つのに数時間かかったとも告白。時間が心の傷を癒すともいうが、ウジーリ自身も、まさか昨シーズン中に和解できるとは思っていなかったはず。デローザンの心境にどういう変化があったのかまでは分からないが、恨みの感情から生まれるものは何もないことに気づいたのかもしれない。ウジーリは「彼にとっても、私をハグしたことは意味のある行動になったと思う」と話す。

「詰まるところ、これは人生だ。時間が物事を解決してくれる。いつか、彼と膝と膝を付き合わせて、この話ができる日が来ると思っている」