大学入学後、自己ベストを更新し続けている絶好調のルーキーがいる。それは、平河楓(スポ1=福岡・筑陽学園)だ。環境が変わった直後はタイムが出にくい選手が多い中、平河はなぜここまでの躍進を遂げているのだろうか。その要因と、来たる早慶対抗大会(…

 大学入学後、自己ベストを更新し続けている絶好調のルーキーがいる。それは、平河楓(スポ1=福岡・筑陽学園)だ。環境が変わった直後はタイムが出にくい選手が多い中、平河はなぜここまでの躍進を遂げているのだろうか。その要因と、来たる早慶対抗大会(早慶戦)に向けての意気込みを伺った。

※この取材は6月8日に行われたものです。

ブレストで競える環境に惹かれて


入学後、自己ベストを更新し続けている平河

――大学生活には慣れましたか

 はい。寮生活にもだいぶ慣れてきました。

――寮にはいつ入られたのですか

 3月の終わりからですね。

――寮の部屋はどなたと一緒なのでしょうか

 3年生の今井流星さん(スポ3=愛知・豊川)と2年生の田中航希さん(スポ2=埼玉・春日部共栄)と3人部屋です。何度か焼肉などに連れて行ってくださって、すごくおいしかったです。

――こちらに来てから、オフの日にどこか遊びに行かれましたか

 この間、人生で初めて新宿に行きました(笑)。すごく都会で楽しかったです。

――どなたと行かれたのですか

 同期の武井凜太郎(スポ1=東京・早実)です。2人でタピオカを飲んでブラブラして、午後から映画を観て、カラオケも行きました。オフを満喫できました。

――同期で仲の良い方はどなたでしょう

 やはり武井凜太郎ですね。元々お互い中学校まで福岡にいて一緒だったので、小さい頃からの仲です。

――大学の授業は受けてみていかがですか

 高校までは50分授業だったので、90分になるとやっぱりきついなと(笑)。最近は慣れてきて最後まで聞けるようにはなってきました。

――面白い授業はありましたか

 トレーニング科学という授業です。この間ストレッチ講座があって、すごく楽しかったですね。水泳部のみんなと一緒に受けています。

――では、早大を志望された理由を教えてください

 他の大学と迷ったのですが、大学でみんなで一緒に練習するという早大の環境に惹かれました。あと僕は平泳ぎをやっているのですが、一平さん(渡辺、平31スポ卒=現TOYOTA)や威久馬さん(大﨑、スポ2=神奈川・桐光学園)や流星さんなど、ブレスト(平泳ぎ)で競う選手が充実していたことです。高校までは練習で同じ平泳ぎで競う人がいなかったので、平泳ぎで競える大学がいいなと思って早大を志望しました。

――高校時代はクラブで練習されていたのでしょうか

 はい、クラブで練習していました。

――高校までの練習と違いを感じることはありますか

 クラブ練習だと同い年が2人しかいませんでしたし、年下の女の子や小さい子が多かったので練習で刺激がもらえなかったのですが、こちらに来てからはすごく刺激をもらえるので楽しいです。

――今はどのようなチームで練習されているのでしょうか

 短距離グループと、長距離と、平泳ぎ、中距離で分かれています。この前までは奥野さん(景介コーチ、昭63教卒=広島・瀬戸内)に見てもらっていたのですが、今は梶川さん(悟監督、平17人卒=愛媛・松山北)に見てもらっています。

――以前、渡辺選手が「平河は練習が強い」とおっしゃっていました

 いや、一平さんにはかなわないですよ(笑)。この間一緒に泳ぐ機会があった時に、「俺についてこいよ」と言ってくださってすごく頼もしかったです。1本でも勝てたらいいなと思っていたのですが、やっぱり勝てなくて。でも頑張れたので良かったです。

――先輩からアドバイスをもらうことはありますか

 自分は平泳ぎのスタート動作と一かき一蹴り動作がすごく人より劣っていて、試合などでもそこでかなり離されている部分があります。ブレストの速い流星さんたちはすごくスタートがうまくて、あとは伊東隼汰さん(社2=東京・早大学院)もブレストが速くて一かき一蹴り動作を教えていただきました。すごく分かりやすくて、指導していただく前と後でだいぶ変わったので、ここを徹底すればもう少しタイムが上がるのではないかと思っています。

――フォームを参考にされている選手はいらっしゃいますか

 やはり一平さんはストロークが長くて一かき一蹴りですごく進んでいて、後半にラストスパートを持っていけているので参考にしています。自分は高校まではテンポでいっていたので後半まで体力が持たず、ラストスパートをかけられないことがあったのですが、大学に入って奥野さんなどから「前半はストローク数を減らして」とか、「後半ラストスパートに持っていけるように」という指導をずっと受けてきました。去年の1年間はベストが出なかったのですが、大学に入ってからは4回試合に出て4回ベストを更新できているので、少しずつですが伸びてきていることを実感しています。

――好調の要因は他に挙げられますか

 頭を使ってレースをするようになったことですね。高校までは、例えば「決勝に残るぞ」というような大ざっぱな目標しか立てていなかったのですが、大学に入ってからは、タイムや目標を突破するために、200メートルだったら「4回あるラップをどう泳ぐか」とか「ストローク数を何回までに抑える」とか、頭を使って泳ぐようになりました。

――その中でジャパンオープンの際は「レーステンポがまだまだだ」とおっしゃっていました

 ジャパンオープンの時は200メートルを泳ぐのがこっちにきて2回目で、ゆめカップ(いきいき茨城ゆめカップ)の時とも少し違ったので。でもそれでもベストが出たので、もっと安定させることができれば後半にもつなげられるかなと思います。

――4月には大学最初の対校戦である東京六大学春季対抗戦がありました。雰囲気などはいかがでしたか

 高校の時も水泳部はあったのですがプールがなかったので、所属でやっている人の集まりで試合に出る感じでした。なので一体感とか、チームで出るということが今まではなかったので、応援なども初めてで楽しかったです。

――平河選手はチャレンジレースにも出場されました。特殊なレースでしたが、振り返っていかがでしょうか

 やる前は本当にめちゃくちゃ緊張しました(笑)。一人で泳ぐことが初めてだったので、本当に逃げたかったです(笑)。最初自分は「前半からいって後半どうなってもいいかな」というレースプランを考えていたのですが、チャレンジレースの招集所に奥野さんが来てくれてアドバイスをいただきました。その日は朝に200メートルを泳いで、そこでチャレンジレースに出ることが決まって、その後に100メートルと50メートルを泳いだのですが、「泳ぎがまだ100メートルと50メートルの感覚になっているから、200メートルは最初の50メートルをどれだけ気持ち良くいけるかが鍵だ」と言われて。それで最初の50メートルを落ち着いていけたので、ラストの50メートルにつなげられて結果が良かったです。

――そのレースでは早大だけでなく、他大からも大きな応援がありましたね

 ラスト50メートルは本当にきつかったのですが、応援がめちゃくちゃ聞こえたので、ここで(日本選手権参加標準記録を)切れなかったらやばいなと思って、最後は気持ちで乗り切りましたね(笑)。その日はトータルで1.5秒くらいベストを更新できました。

――入学したてだと記録が出にくいという話もよくお聞きしますが

 そうですね(笑)。その前のJOC(ジュニア五輪春季大会)はすごく調整して出てベストは出せたのですが、0秒1も更新できなくて、あまり所属の時のコーチに恩返しができなかったんです。でもこっちに来てから2週間くらいで一気に1.5秒くらい更新できたので、それはすごく自信になりましたし、練習でももっと頑張ろうかなと思いました。

――ゴールデンウィークの強化期間はどのようなことに取り組まれましたか

 ゴールデンウィークは坂井聖人選手(平30スポ卒=現セイコー)や一平さんたちもいて、持久力を高める系のメニューが多かったです。あんなにきつい練習をしたのはこっちに来て初めてですごくきつかったのですが、「一平さんたちに離されたくないな」という気持ちがあって頑張れました。一回200メートル×12回の2分20秒サークルという練習があって、普段だったら回れないのですが一平さんたちが速くて、そこに「ついていこう、ついていこう」という気持ちがあって結構いけました。でも終わった後は腕がやばかったです(笑)。あんなに疲れたのは初めてだったので、追い込めているなと思いました。

「競ったら必ず勝つ」


恵まれた環境で成長を続けている

――現在ご自身の中で課題などはありますか

 スタートと浮き上がり動作が一番の課題です。

――その課題のためにどのような取り組みをしていきたいですか

 今までは所属にスタート台がなかったので、スタート練習する機会がありませんでした。やるとしても試合の時にしかできなかったですし、試合も年に1回くらいしか羽根(スタート台のバックプレート)がついたプールがなくて羽根で練習できる機会が全然なかったのですが、こっちでは毎日練習できます。練習でもスタートの動画を撮ってくれる方がいるので、それをスローで見たりして改善しています。今はこれを毎日できる環境なので、ありがたい環境をしっかり生かして、頑張っていきたいなと思っています。

――所属では短水路のプールだったのでしょうか

 はい、短水路でした。スタート台もなくて浅かったので、スタート練習ができなかったですね。

――長水路での練習はいかがですか

 短水路か長水路かと言われたらやはり長水路の方が得意ですね。短水路に対する苦手意識が結構あって、短水路の試合だとスタートとターンで離されて負けることがたくさんありました。長水路だとスピードに乗れていい感じになって、練習や合宿などを長水路でやった後に試合をやるといつもすごく調子が良いので、長水路の方がいいですね。

――早慶戦に向けてのお話に移ります。個人としての目標をお聞かせください。

 やはり100メートルと200メートルで優勝することです。この間のジャパンオープンで慶大の佐藤翔馬くんが同い年なのに僕より4秒くらい速かったので、それはちょっと本当にびっくりしました(笑)。茨城(ゆめカップ)の時も隣で泳いだのですが、すごく勝負強い人です。スタートとターンがうまくいけば100メートルならまだ勝てるかなと思うのですが、200メートルでも、奥野さんに「もうちょっとタイムが出せるから、経験を重ねて行けば絶対に翔馬にも勝てる」と言われているので、諦めずに頑張りたいです。もう一人慶大には深沢大和という選手がいるのですが、タイムも同じくらいで、混戦になると思うので、競ったら絶対に負けないという気持ちで頑張っていきたいなと思います。

――やはりそのお二人を意識されているのですね

 中学校の時から全国中学(全国中学校大会)などでもずっと同じ組で隣で泳いでいで、勝ったり負けたりの繰り返しだったので早慶戦では勝ちたいと思います。

――ジュニアパンパシフィック大会でもチームメートでしたね

 そうですね。100メートルの予選では僕が1番だったのですが、決勝で落としてしまって深沢大和が日本人の中で一番だったので。200メートルも僕は2番でずっと負けっぱなしなので、次は勝ちたいです。

――最後に改めて、早慶戦への意気込みをお願いします

 かなり混戦になると思うので、競ったら必ず勝つ。タッチまで諦めずに頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 宅森咲子)


慶大のライバル選手たちに競り勝ちます!

◆平河楓(ひらかわ・かえで)

2000(平12)年7月29日生まれのO型。174センチ、71キロ。福岡・筑陽学園高出身。スポーツ科学部1年。専門種目は平泳ぎ。好きな博多名物は、博多ラーメンとめんたいこと博多通りもん。先日行われたジャパンオープンでは、福岡からサプライズで家族が応援に駆け付けてくれたそうです。その時、博多通りもんを差し入れしてくれたのだとか。地元のおいしいお菓子を力に変えて、早慶戦でも飛躍を誓います!