メジャーリーグで通算696本塁打を放っているアレックス・ロドリゲス内野手(41)が7日(日本時間8日)、12日(同13日)の本拠地でのレイズ戦を最後に現役引退する意向を表明した。■両者にとって最良の選択― Aロッド、突然の終幕 メジャーリー…

メジャーリーグで通算696本塁打を放っているアレックス・ロドリゲス内野手(41)が7日(日本時間8日)、12日(同13日)の本拠地でのレイズ戦を最後に現役引退する意向を表明した。

■両者にとって最良の選択― Aロッド、突然の終幕

 メジャーリーグで通算696本塁打を放っているアレックス・ロドリゲス内野手(41)が7日(日本時間8日)、12日(同13日)の本拠地でのレイズ戦を最後に現役引退する意向を表明した。同時に、契約が残っている来季までヤンキース・オーナー付特別アドバイザー兼インストラクターに就任することもヤンキースから発表された。過去にヤンキースとA・ロッドが繰り広げてきた泥沼の抗争劇を考えれば、双方ともにベストの決断に至ったように思える。

「ベースボールとチームを愛している。双方に別れを告げるときがきた。18歳のときはメジャーで生き残ることが目標だった。22年間プレーできるとは思っていなかった」と話すと、涙をこらえきれなくなった。ロドリゲスによると、オーナーから自由契約の話を持ちかけられたのが今月3日。突然の終幕に気持ちの整理がつくはずもない。最後まで「球団の決断を尊重する」という言葉を用い、自らに選択肢が残されていなかったことを示唆した。

 今季打率2割4厘と不振の41歳は、トレード期限の8月1日までに主力選手を大量放出し、来季に向けて若手に切り替えているチームで浮いた存在だった。1か月前くらいから自由契約にされるのではないかとの見方がされてきた。ベテランのスーパースターが不振に陥った際の処遇は常に難しいものだが、球団の決断は早かったし、Aロッドの決断もいさぎよかった。

■キャッシュマンGM「彼には考えを変える権利がある」

 キャッシュマンGMによると、今季の残りと来季年俸(2100万ドル)の契約は履行されるという。常勝が代名詞の名門球団ではチームを支えた主力といえども、パッピーエンディングを迎えられるとは限らない。

 黄金時代を築いたコア4の一員ホルヘ・ポサダもシーズン終了後に再契約を提示されず、他球団での現役続行を模索した結果、引退。かつて4番を務めたことのあるバーニー・ウイリアムズも現役への未練を残したままユニホームを脱ぎ、数年経ってから正式に引退した。

 そう考えると、何度も禁止薬物使用問題で名前が取り沙汰され、2014年に162試合の禁止処分を受けたロドリゲスに用意された幕引きの舞台は決して悪いとは思えない。引退後即、球団のポストが用意されていること自体珍しいことだ。

 それでも、メジャーリーグ史上4人目の通算700号にあと4本に迫りながらユニホームを脱ぐことに後ろ髪を引かれる思いはあるだろう。キャッシュマンGMは「彼には考えを変える権利がある」と理解を示し、ジラルディ監督も「少し時間が経って考えが変わることもある。彼はそれだけ実績を残した」と思いやった。

■Aロッドはどのような選手として記憶に残りたいのか―

 そう、疑惑のスラッガーには最後に選択の余地も残されている。このまま静かにユニホームを脱ぐか、それとも記録への挑戦の誘惑に手を伸ばすのか――。

「常に若い選手を指導する情熱があった。若手が才能を開花するための手伝いをすることでヤンキースに貢献したい。(マイナーの球団施設がある)タンパからニューヨークをつなぐブリッジの役割をしたい」という会見の言葉通りの道を歩むなら、いさぎよい幕切れを選んだベテランは温かい拍手を浴びて舞台を去ることになる。

 だが、来季までに他球団からオファーがあった場合、ヤンキースの用意したポジションを破棄して現役復帰するようなら、周囲から再び「利己主義」と見られる可能性もある。少なくともヤンキースファンからいい反応はなさそうだ。

 どのような選手として記憶に残りたいかと、会見で聞かれたロドリゲスは「これまで多くの過ちを犯してきたが、何度倒れてもはい上がってきた」と答えた。一時は修復不可能と見られた球団とファンとの関係は昨季の活躍で驚くほど良好なものになった。そのイメージを守りきれるかは今後の決断次第だが、A・ロッドを取り巻くドラマの続編があったとしても驚きはないだろう。

伊武弘多●文 text by kouta Ibu