6月20日、バレーボールネーションズリーグの予選ラウンドが終了した。世界各国の都市を移動しながら、5週にわたって16チーム総当りで行なわれた予選で、全日本女子代表チームは7勝8敗の9位。6チームで争うファイナルラウンド(同ラウンドの開催国…

 6月20日、バレーボールネーションズリーグの予選ラウンドが終了した。世界各国の都市を移動しながら、5週にわたって16チーム総当りで行なわれた予選で、全日本女子代表チームは7勝8敗の9位。6チームで争うファイナルラウンド(同ラウンドの開催国と、それを除く予選上位5カ国)には進出できなかった。

 ネーションズリーグは、男子の「ワールドリーグ」と女子の「ワールドグランプリ」を統合する形で2018年に新設された。代表シーズンの冒頭に開催される国際大会で、各国の動向を占う大会としてバレーファンの注目を集めている。

 今大会でファイナルラウンドに進めなかった全日本女子だが、久光製薬スプリングスのエース・石井優希の攻守にわたる活躍が光った。




全日本女子の軸となる選手に成長した石井

 連続してスタメンで出場していた序盤は、大会のベストスコアラーランキングで選手全体のトップに立つことも。期間の長い大会での疲労が考慮されたこともあって、第4週の東京ラウンドから少し出番が減ったものの、予選ラウンド終了時の同ランキングで日本人トップの8位と健闘した。

 守備では、ベストディガー(スパイクレシーブ)ランキングで日本人2位の6位、ベストレシーバー(サーブレシーブ)ランキングでも日本人2位の8位(日本人トップは、ともにリベロの小幡真子)。これらの順位を見るだけでも、石井がチームの”攻守の要”になっていたことがわかる。

 2011年に19歳で全日本に初招集された石井は、中田久美監督が2017年に指揮を執るようになるまで、サーブレシーブを免除される”打ち屋”として起用されることもしばしばあった。得点能力が高く評価される一方で、サーブレシーブに入る場面では、相手に狙われてそこからリズムを崩す脆い一面もあった。

 しかし石井は守備の強化を怠らず、その成果が2017-18シーズンのVリーグ(現V.LEAGUE)で形になって表れる。そのシーズンも相手チームからサーブで狙われ続けたが、60.7%と高いレシーブ成功率で自身初のレシーブ賞を受賞。攻撃面でも久光製薬の優勝に大きく貢献してMVPに輝いた。

 翌2018-2019シーズンも攻守で活躍し、チームをリーグ連覇に導いた。そこで大きな自信を得たのだろう。石井は「国内リーグでの経験が、今のプレーにつながっていると思います。これまでは力んで余裕がなくなり、相手が見えなくなってしまうことがありましたが、今はあまりないですね」と手応えを口にする。

 また、ネーションズリーグで好調だったディグ(スパイクレシーブ)についても、「自分の強みのひとつだと思っていますし、ブロックを抜けたところは後ろの選手が拾う責任がある。日本は粘ることができないと勝てないので、もっとディフェンスで貢献していきたい」と力強く語った。

 その自信は、全日本の攻撃にもいい効果をもたらしている。中田ジャパンでは昨季からバックアタックの数が増え、相手の守備に的を絞らせないための大きな武器になっている。もともと石井はパワフルなバックアタックが打てる選手ではあったが、サーブレシーブにまだ不安が残っていた昨季は、守備からバックアタックに移る難しさを感じていたという。

 しかし今季は、サーブ、スパイクレシーブのあとでも、強烈なバックアタックを打つ場面が多くなった。

「以前に比べて苦手意識はなくなっています。今年はセッターも積極的にバックアタックを使ってくれていますし、得点も取れている。攻撃枚数を増やすために有効ですから、後衛では積極的にバックアタックにいくようにしています」

 中田監督は就任当初からセッターの試行錯誤を続けており、今季も新人の関菜々巳、昨季の世界バレーメンバーから外れた佐藤美弥、リオ五輪に出場した宮下遥と、複数のセッターを起用している。アタッカーにとってはやりづらい状況にも思えるが、石井は「特徴が違うセッターに合わせるのもアタッカーの技術だと思っています」と頼もしい。

 そんな石井について、昨季には「今年が正念場」と厳しい表情で語っていた中田監督も、今季のプレーについては穏やかな表情で次のように評価した。

「石井は(5月の)モントルーバレーマスターズからずっと頑張っています。(ネーションズリーグの)東京ラウンドも悪くはなかったのですが、長丁場なので休ませました。今シーズンは攻守ともに非常に安定していて、昨シーズンまでとは全然違う。今後も続けていってほしいですし、『さらに!』という期待もあります」

 石井本人も、今シーズンの代表でのプレーに自信をのぞかせるが、さらなる高みを目指すために満足はしていない。

「ここまでは安定していて、得点に絡めていますし、ディフェンスで貢献できた部分もあります。ただ、ネーションズリーグの東京ラウンドに入ってから少し調子を落としてしまいました。疲労も少しはあったんですが、それは言い訳にはなりません。疲れがある状態でもいいパフォーマンスを出せるようにしていけたらと思います。

 東京ラウンドは、日本のファンが会場で試合を見られるチャンスで、楽しみにしていた方も多いでしょうし、もっと活躍する姿を見せたかったという悔しさはあります。でも、その東京ラウンドの3試合でチームが勝ち越せたことが大事。そういったチームの勝利を一番に考えることを忘れず、ネーションズリーグの経験をしっかり今後につなげたいです」

 今年は9月に開幕するワールドカップ、そして来夏には東京五輪と、大舞台での戦いが控えている。全日本の軸へと成長を遂げた石井が、勝敗を分けるキープレーヤーになることは間違いない。