日本女子フルーレ団体が、アジアフェンシング選手権大会でアジアのトップに君臨してきた韓国を破り、初優勝を果たした。 …

 日本女子フルーレ団体が、アジアフェンシング選手権大会でアジアのトップに君臨してきた韓国を破り、初優勝を果たした。

 今大会、昨年8月のアジア競技大会優勝メンバーで19歳の東晟良(せら・日体大/世界ランキング12位)と、同じく19歳の辻すみれ(朝日大/48位)に加え、2018年世界カデ・ジュニア選手権で、カデ(13~17歳)とジュニア(17歳~20歳)の個人でダブルタイトルを獲得した17歳の上野優佳(埼玉星槎国際高校/37位)の3人が活躍した。



アジア選手権を制した女子フルーレ。左から宮脇花輪、上野優佳、東晟良、辻すみれ、菊池小巻

 日本チームは、今年5月のドイツ大会で5位になるなど、世界ランクでアジア5位にいる韓国を5大会中3大会で上回ってポイントで10点差に迫っており、この大会に自信を持って臨んだ。

 準決勝の相手は、昨年8月のアジア競技大会でも勝利している中国。メンバー最年長で今回は出番がなかった22歳の菊池小巻(セガサミー/13位)が「相手は5月のドイツ大会の時と戦い方を変えてきた」と言うように、中国は主力のフ・イーチン(21位)を起用しない布陣で、慎重に相手を見極めて攻め込まない戦法を取ってきた。

 日本は、エースの東が「中国の戦い方が変わったので最初はビックリした。すごく時間を使ってくるので戦いにくかった」と言うように、一巡目に上野が1対2とされると、2番手の東もリードを広げられ、3番手の辻も4対8となる展開になった。

 2巡目になって最初の東が9対9まで追いついたが、その後は上野も辻も相手と見合うような戦いで得点を伸ばせず、12対13と緊迫した試合になった。辻は「競っている状態だし、自分はディフェンス型なので、なかなか攻めることができなかった」と振り返る。

 その流れを変えたのが東だった。3巡目になって、スキをついて2ポイントを連取して同点に並ぶと、そのあとは相手に攻めさせることで互いに点を取り合う展開にして21対19とリード。この流れに乗った辻も、得意のディフェンスを生かして得点を重ねる戦法に集中し、5連続ポイントで26対19と差を広げた。

 そして、アンカーを任された上野は「本当に苦しい試合だったけど、ふたりが点差をつけてくれたので、それを守り切ればいいと思ってやった」と、しっかり時間を使って4点ずつを取り合う戦いで勝利を決めた。

 決勝は韓国との戦いになったが、選手たちに不安はなかった。福田佑輔監督は「韓国は世代交代がうまくいっていないところがあるので、今回は安心して見ていられました」と振り返る。

 菅原智恵子コーチも「中国戦は緊張感がありましたが、決勝の韓国戦は控えの選手たちにも笑顔が見えていた」と言う。

 決勝でいい流れを作ったのは、やはり東だった。2対2の場面の2番手で登場し、相手は韓国のエースのチョン・ヒスク。世界ランキング8位の35歳で、今大会の個人戦でも東と上野を破って優勝した格上だが、東は「コーチから無理やりいくなと言われていたので、様子を見ながら戦った」と冷静な動きで5対3とリードした。

 3番手の辻がそのリードを守ると、2巡目トップの東がうまさを発揮して14対6とリードする。続いて、2巡目のカギを握ると思われた辻とチェンの戦いは、最初に4連続ポイントを取られてヒヤリとしたものの、9点差を維持することに成功した。

「相手が私のところで点数を取ろうとしているのがわかったし、すごい勢いで来られて動揺した。でも、試合に入る時にコーチから、『相手が攻めてきている時にフェイントをかければ、その剣を相手が叩きにくるから、そこを抜いて入ればいい』と言われたことを思い出して、実行することができました」(辻)

 3巡目は余裕のある展開で、東が11点差とすると、辻が8点差まで詰められたものの、アンカーの上野は「チョン選手には個人戦の決勝で負けていたのでリベンジしたかったし、どんどんアタックにくると感じていたので、それを受けないように自分から仕掛けていきました」と、取られたら取り返す展開に。すると、ラスト2分を切ったあとは、相手の気落ちもあって10連続で得点を獲得し、45対29でアジア選手権初制覇を決めた。

 17歳らしからぬ堂々とした戦いぶりでアンカーを務めた上野は、試合をこう振り返る。

「前回のアジア選手権に私は出られなかったけど、韓国に1本勝負で負けたのを見ていてすごく悔しかったので、今回は絶対に勝とうと思っていました」

 そんな上野を辻は、「いろんな試合でアンカーをやってもらっているけど、すごく頼りがいがある」と言い、菅原コーチも「絶対に勝ち切る力を持っている。最年少だが、アンカー上野は変えるつもりはない」と高く評価する。

 福田監督も上野が最後に入る影響をこう語る。

「上野はフィジカルが強いし、精神面も『ベテランフェンサーか?』と思うくらい落ち着いている。最後に入ると緊張するものですが、今回の決勝は、何本か取られながらもそこから気持ちを切り替えて攻撃に転じていた。そこは、他の選手とは違うなと思いました。彼女がアンカーに入ることで、東がポイントゲッターとしてのびのび戦えて、辻がしっかり守るというチームの形ができつつある。序盤でリードできれば、今の日本の女子の戦い方はしっかりできると思う」

 今回は出番がなかった菊地や、控えに回った宮脇花輪(マイナビ/33位)もまだ22歳。それぞれがよきチームメイトであり、競争意識もあるいい環境と言える。

 今回の優勝で、日本の世界ランキングは韓国を抜いてアジア勢トップの5位に上がった。7月の世界選手権でメダルを獲得すれば、東京五輪出場権争いでも優位に立てる状況で、福田監督が「今のアジアの位置関係では、女子は男子フルーレより上にいっていると思う」と話すほどだ。

 その男子も、今回の決勝で中国を45対43の接戦で破って優勝している。女子と同じように若いチームで、個人戦で優勝した敷根崇裕と鈴村健太(ともに法大)がポイントを取り、松山恭助(JTB)が締めるという形ができ上がりつつある。日本は世界ランキングを7位まで落としていたが、今回優勝したことで6位になり、4位にいる韓国に次ぐアジア2番手のポジションを取り戻した。

「フルーレは男女とも、7月の世界選手権でもそれなりの結果を残すことができれば、自信がついてくる。東京五輪でもしっかりとメダルが狙える種目になると思います」と福田監督は言う。今回の優勝は男女とも、大きな意味を持つ勝利だった。