1年時の関東大学対抗戦(対抗戦)スタメンに名を連ね続けたSH齋藤直人主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)。そんな齋藤も最終学年を迎えた今季は主将に就任した。11年ぶりの『荒ぶる』奪還に向けて心境を伺った。

※この取材は3月29日に行われたものです。

「満足はしていない」


真剣なまなざしで質問に答える齋藤主将

――昨シーズンの結果を振り返ってみていかがですか

 まず、対抗戦優勝に関しては正直帝京に負けたということが大きくて。特に優勝した実感はないですね。かたち上は優勝だったんですけど、本当の意味で1番になったわけではないので。『年越し』に関しても色んな方から賛辞の言葉をいただけてうれしかったですが、(全国大学選手権の)決勝にも進めなかったですし、満足はしていないですね。

――大学選手権準決勝で敗れた明大がそのまま優勝を飾りましたが、どのように感じましたか

 実際に(大学選手権決勝を)観に行ってましたね。ノーサイドの笛が鳴った瞬間の明治ファンの喜び、選手の喜びを見て1年後に絶対ここで勝ちたいなということを強く思いました。多分テレビで観戦していたらあそこまで強い感情が湧くことはなかったと思うので。フランカー幸重(幸重天副将、文構4=大分舞鶴)も含めて何人か観に行ってたみたいですね。

――昨季の100周年という節目の年のプレッシャーなどは感じましたか

 いや、プレッシャーとまでは感じませんでしたけど、例年以上に声をかけられる数の多さ。式典とかもあって、早稲田ラグビーの歴史の重みというのは過去2年間よりも感じましたね。それがでもプレッシャーに感じになったとかそういうわけではないですね。応援してくれる人たちのためにも頑張ろうとか、ここまで歴史あるチームでプレーできる喜びと、感謝しなければいけないなと感じました。

――昨年の関東大学対抗戦(対抗戦)で1番印象深いことは何でしょうか

 2戦目、3戦目でボックスキックが上手くいかなかったことが印象に残ってますね。ダイレクトタッチというのが、今まであんまりなかったので。結構悩みましたけど、三井さん(三井大祐氏、平20教卒、現慶応BKヘッドコーチ)に熱心に教えてもらいました。そのミスをしたということよりも成長できたということが印象に残っています。

――対抗戦の慶応戦では腕にテーピングを巻いて文字を書いていましたが、何を書いていましたか

 ロックの三浦駿平(スポ4=秋田中央)がけがで出れなくて、1年の頃から(Aチームの)メンバーに絡んでいたのに、慶応戦だけずっと出れていなくて。「今年は出たい」とずっと言っていたので、それがあっての帝京戦でけがをしてしまったので。本当に駿平の分も頑張ろうと思って「駿平」と書きました。本人は気づいてなかったらしいですけど(笑)。そういう意味がありました。

――全国大学選手権(大学選手権)を振り返っていただけますか

 言い訳をするつもりはないですが、難しさはありましたね。同じ相手でしかも勝っているということは、個人的な意見ですけど、負けて試合をやる方がやりやすかったかなと思いますね。自分たちが勝っていたので、難しさはあるなと試合前から思っていたのですが、案の定ああいう試合になってしまいました。

――その大学選手権でのプレースキックが乱れた原因はどこにあると考えていますか

 わからないですけど、昨季本当に慶応戦だけ(ゴールが)入らなくて。それ以外の試合は大体外しても2本とかでした。覚えてるのは大学選手権での慶応戦で、PGを狙った時に、足が震えてました。これは初めての経験で、「これはやばいな」と思ったら外しました。

――昨季は特に思い入れが強いシーズンだったように感じましたが、その点についていかがでしょうか

 確かに、気持ちはすごい入ってましたね。毎年そうですが、去年は勝ちたい気持ちが強かったですし、それで周りが見えてなかったかと言われると、分かりませんが。1つ上の代は、先輩の中で1番関わった時間が長く、下級生の頃に同じで部屋だった真吾さん(佐藤真吾前主将、平31スポ卒)含め本当にお世話になった先輩が多かったです。そういう先輩方が(試合に)出ていなかったので背負って戦うという意識が気持ちの入った理由かもしれません。

――今回、色々と成功率を出してみました。2017年度の対抗戦キックの成功率はどれくらいだと思いますか

 80ぐらいですかね。

――83パーセントでした

 おお、いいですね。

――トータルで見ると、2017年度シーズンの方が成功率は高い結果となりました

 それは覚えてます。2017年シーズンは1試合につき外しても1本しか外してないんですよ。平均的に多くても2本ぐらいで、慶応戦で外して、明治戦の時は全部決めてます。外した後の試合は割と修正することができましたね。

――2018年度シーズンはどれくらいだと思いますか

 70後半ぐらいですかね。

――80パーセントです、いかがでしょうか

 成功率とか出してなかったので。85パーセント越えがいいキッカーだと聞いたことがあるので、まだまだですね。去年割とパスに練習時間を割いたイメージがあったので、自分のスキルに把握して必要な練習をしていきたいですね。

――ご自身の中で理想のキッカー像はありますか

 ヘイデンパーカー(神戸製鋼)とかに習って、真似したかったのですが、どうしても左利きの選手だと難しいので。似せているわけではないのですが、オーウェン・ファレル(イングランド代表)とかのキックは見ますね。好きですね。真似はしてないですけど、1番見てますね。

――プレースキックは誰かに教わることなどはありますか

 前までは君島さん(良夫)に教わっていました。それで、去年サンウルブズに行った時にちょっとヘイデンパーカーに教えてもらったりだとか、この前ジュニア・ジャパンに行った時は神戸製鋼のコーチに教えてもらったりだとかですかね。新しいキックの知識を教わりましたね。上手い右利きの人に教わりたいです。

――昨年のインタビューでは「ディティールにこだわる」といった言葉を多用されていましたが、どういった部分を意識していたのでしょうか

 パス1つにとっても手を伸ばすだとか、そういうのを練習中しっかりと掘り下げて、去年言えていたと思います。

――では、現在「ディティールにこだわっている」部分はどういった点でしょうか

 チームとしてラグビーをやってないの他のところ、気を付けられるのではないか。ということで部室とウエイト場を綺麗に使うとかいうルールを作りました。あとは練習中の起き上がりのスピードとか、練習間の移動のスピードとか、当たり前と思われがちなところを毎週、毎週レビューして意識しています。フィットネスの練習とかは線を踏まないとか、きつい時に下を向かないとかですかね。1番基礎の部分というか、誰でもできるところなど、「絶対に意識すればできる」部分を大事にしていますね。

――なぜそういった部分を意識するようになったのでしょうか

 4年生でどういうチームになりたいかということを2月に話したのですが、色々出てきた中に、私生活での規律の部分だとかが最後ラグビーにつながるんじゃないかという意見が多く出ました。それで、どんどんつなげていって、最終的に日本一になるために何が必要かと話した時に根本的な部分がそういったところだったので。皆には一人一人の成長がチームの成長につながると言っていて、その一人一人が成長するためには今やってる普段部室とか綺麗に保つこととかで、ラグビーに直結しませんが、人として成長する。そういったちょっとしたことを言ってますね。

――本当に「ちょっとしたこと」なのですね

 そうですね。目立つようなことではないけど大事なことです。その積み重ねが、個人の成長につながる。それがチームの成長につながる。最終的に日本一につながると思ってます。皆にまだ浸透はしてないと思います。「one tap」という体重とか体脂肪を入力するものがあるのですが、そういうものも今年設定しています。未入力の人とかもまだいるので、そういうのが本当になくなったら、まずは1段階上がるかなと思います。

――現在の成果は

 だいぶ減ってきてはいますね。ルールは色々作りましたが、それをなぜやるのかという部分が浸透してないのかなと思います。最終的に日本一になるために、まだ打ってない人がいるということはまだなぜ打つのか理解できてない人がいるのかなと思いますね。入力することは日本一という目標からすると遠いですが、少なからずつながっているので、分かって欲しいですね。

――新体制についてお伺いします。主将に就任した経緯を教えてください

 自分たちの代の投票と、1つ上の代の投票と、最後はコーチ陣の話し合いで決まったと思います。

――満場一致で決まったとお伺いしましたが、いかがですか

 どうなんですかね。票に関しては自分と幸重(天副将、文構4=大分舞鶴)の2人は見てます。

「私生活でも模範に」

――ご自身の中で主将の理想像はありますか

 プレーで引っ張るのは当然というか、自分はいつも通りのプレーがリーダーシップにつながると思います。「あいつはプレーできるから喋れなくていいよ」という風に言われるのは嫌なので、自分の言葉で思ったことはしっかりと言うことと、いつも通りのプレーをすること。あとは、私生活でも模範になるように。普通にやってることが「流石だな」と言われるようにやりたいですね。規則とかは絶対に守っていきたいです。

――参考にする主将とかはいますか

それはやっぱり堀越康介(サントリー)ですね。一昨年のジュニア・ジャパン行った時にその後帝京大でもキャプテンを務められていました。一番ハードワークするキャプテンですね。一番体張るし、一番きつい時に声を出すし、プレー面はそういったところですね。後はオンとオフですね。堀越さんはそこがすごいなと思いました。練習中厳しいことを言う時もありますが、練習が終わったら全然違う人で、そこの切り替えも大事にしたいですね。これは聞いた話なんですが、寮でゴミが落ちてて拾うとか。当たり前と思われがちですが、実際はそんなにやらない部分。そこは大事にしていきたいですね。

――高校時代からチームメイトだったフランカー柴田徹(社4=神奈川・桐蔭学園)選手との関係はどのようなものだったのでしょうか

一番頼りにしています。本当に徹は、きつい時にすごく頑張れる人で、きつい時に体張れるし、逃げない人です。すごく信頼してました。今もすごく信頼してます。どっちかというと幸重みたいに自分からは話したりするとかはないですね。

――そんな中で、フランカー幸重選手を副将に選んだ理由を教えていただけますか

自分とか徹はずっと上のチームで四年間過ごしてきました。幸重は下のチームから努力して、自分のポジションを勝ち取って今1軍にいる選手です。やっぱりどんなに下のチームを理解しようと思っても、自分とかには分からない部分があると思います。そういった意味で、チーム全体を見渡せることができるのは幸重なのかなと。ハードワークという点でもすごくよくやってくれるので、幸重にしました。役職とかに関係なく徹もリーダーシップを取ってくれると思います。

――幸重副将に求めることは何でしょうか

 自分が結構人に厳しく言うタイプなので、上手くカバーして欲しいというか(笑)。どっちかというと幸重は優しい方なので、自分とは違った声がけとかして欲しいですね。

――幸重副将はどんな方でしょうか

 本当に誰とでも楽しく話せるとか、自分は結構話しかけられて話すタイプなのですが、幸重は本当に学年とか関係なく、コミュニケーションをとれる。本当に優しくて人のことを考えられる人だと思います。お茶目な一面もありながらも、やることはやってくれますし、本当に人の気持ちを考えられる人だなと思いますね。


時折笑顔を見せる齋藤主将

――最近ハマってることはありますか

 読書にはまってます。キャプテンになってから早稲田のラグビーについての知識が全然なくて、浅はかだなと思って色々読むようになりました。100周年冊子とかですね。まぁ、ハマってはないですね(笑)。あとは、ラグビー関係ですね。

「伝統の重み」

――100周年冊子などを読んで感じたことは何でしょうか

 本当にこの早稲田のラグビー部で過ごせていることの偉大さ、伝統の重みを改めて認識しましたね。誰にでもできる経験ではないので自分の置かれている立場に責任を感じています。

――本を読んで自身の中で変わった印象はありますか

 早稲田のラグビー部はすごい選手が集まって、強い早稲田というものが印象にありました。ですが、全然違って、高校時代の無名の選手が、色々な工夫、試行錯誤をする。その中で色々考えて新しいものを作る。強いチームと戦うみたいなことが早稲田のラグビー部が大事にしていることなんだなと初めて知りました。自分のイメージとはそこが全然違いました。すごい選手が集まってくるイメージだったのですが、色々考えて強い相手に勝つ。それでこういう歴史を作ってきたのが、すごいなと思いましたね。「新しいものを作っていく」という。知れてよかったです。恥ずかしいですけど(笑)。部訓にある『緊張・創造・継承』の創造の部分ですかね。

――最近部内で流行っていることはありますか

 ないですね。前にウクレレ流行ってましたね。流行っていると言っても2、3人ですけど。

――オフの日は何をしてますか

 この前は家に帰りました。あとは釣り番組観ます。釣り行く頻度とか少ないですけど、魚釣る映像を見て「すごいな」って感じです(笑)。たまに釣りに行きますね。最近は行けてないですけど。

――これからどのように行動していきたいですか

 まずは主将として一日一日、日本一を意識して日本一になれるような環境を作っていきたいと思います。

――チームで変わってきた点はありますか

 この時期は体の面での強化ですね。自主練とかで昨年と違うのは、色々学年、チームを巻き込んでやるようになったのかなと。今まではやりたい人と練習してましたが、この前も1年生と一緒に練習しましたね。そこは変わってきました。

――個人としてはいかがですか

 まずは去年の自分を超えたいですね。全部越えたいですが、まずはフィットネスで飛び抜けたいです。今も強みではありますが、体も大きくなって落ちてるので。スキルは自分でできる部分もあると思います。チームのではなく、個人的にフィットネスに取り組みたいですね。全ての要素で日本一のSHになりたいですね。

――他大学で意識している選手はいますか

 遠征で仲良くなったSH藤原忍(天理大)です。ラグビー選手としてすごくセンスある人でした。アタック面で積極的に仕掛けるとか、そういった部分は自分にはないところなので。自分そういうところを持てたらいいなと思います。

――最後にこれからの意気込みをお願いします

 まずはグラウンド上では本当に一番ハードワークしたいです。チームの先頭に立って引っ張っていければいいですね。4年生中心に引っ張っていけたらいいなと。春シーズン結構負けがちなのですが、負けるのが普通ではないに状態にしたいですね。そのために、個人的に一番ハードワークしてチームを引っ張っていけたらいいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 小田真史)


今季の目標を力強く書いてくださいました!

◆齋藤直人(さいとう・なおと)主将

1997(平9)年8月26日生まれ。165センチ、75キロ。ポジションはSH。神奈川・桐蔭学園高出身。スポーツ科学部4年。主将に就任してから読書を始めたそうで、現在は早稲田ラグビー部の伝統を学んでいるそうです。部員は齋藤主将のことを「誰よりも上手く、誰よりも練習する人」と口をそろえて語ります。そんな齋藤主将は色紙に力強く『日本一』の3文字を書いてくださいました!11年ぶりの頂への挑戦が始まります!!