32歳の山根将大代表、2013年の楽天日本一で「スポーツの力を実感」  夢は願うのではなく、叶えるものなのかもしれない。独立リーグとはいえ、球団を持つ夢を30代の若さで叶えた男がいる。  ルートインBCリーグに今季から初参戦した茨城アストロ…

32歳の山根将大代表、2013年の楽天日本一で「スポーツの力を実感」

 夢は願うのではなく、叶えるものなのかもしれない。独立リーグとはいえ、球団を持つ夢を30代の若さで叶えた男がいる。

 ルートインBCリーグに今季から初参戦した茨城アストロプラネッツの山根将大代表(32)がその人。17日に水戸のノーブルスタジアム水戸で行われた群馬戦で15連敗。BCリーグの連敗記録更新を続けているが「引き分けを挟まないNPBの連敗記録は16。残り2試合負けると史上初ですね」とポジティブに笑い飛ばした。茨城にとっての前期は、18日の群馬戦、19日の栃木戦の2試合を残すのみ。ロッテの18連敗はあるが、1引き分けを挟んでいる。確かに新記録だ。

 2011年の東日本大震災で「楽天の日本一で、地元の人が涙を流して喜んだ。スポーツの力を実感した。何とか地元を元気にしたい」と大手運送会社の社員から脱サラ。球団をつくる資金を得るため、一人でWEB制作会社を立ち上げた。障碍者支援も行い、ひたちなか市、水戸市、土浦市など6事業所を抱えて飲食業から農業にまで手を広げ、グループ全体で従業員200人以上を抱えるまでになった。前期の通算観客動員は2万人を超える栃木には及ばないが、1万人超えを達成。新潟に続くBCリーグ11球団中3位と健闘している。「今後の目線は4つの方向に向いている」という山根代表に、夢の続きを聞いた。

――「球団を持つ」と口では言えるけど、その若さで実現するとなると凄いことではないですか?

「一言で言って、人に恵まれましたね」

――きっかけは何ですか?

「新卒で長野の運送会社に勤めていた1年目の終わりに、大震災がありました。中学、高校は、ひたちなか市。高校野球のファンでしたが、大震災後の楽天日本一(2013年)で(ファン、選手が)一体になった姿を見て、茨城に被災している人たちを元気づける、プロのスポーツチーム、球団があればと思ったんです。それで茨城に独立リーグの球団をつくる動きがないか、(独立リーグの)村山代表に何度も問い合わせしましたが、そんな動きは全くありませんでした。そこで、独立リーグに雇ってもらって、(組織の力で)球団をつくれないかと採用をお願いもしましたが駄目で、それなら自分でやるしかないと、事業計画書をリーグに提出。球団創設までのプロセスを学びました」

――資本力がないと、とても球団なんか持てませんよね。

「そこで会社を立ち上げるため、2015年に(大手運送会社を)退社、8月にWEB制作会社を一人で立ち上げました。株式会社です。ECサイトのコンサルティングみたいな仕事をしていたので、色んな手法を学び、自分のアイデアも出しながらスタートしました」

参入1年目で観客動員1万人突破も「本当は年間4万人を目標にしていたんです」

――それが成功したわけですね。WEB制作会社以外にも手を広げられました。

「はい、障碍者就労支援事業です。当時は水戸市内にもそんなに多くはなく、狙い目だと思いました。ビジネスというより、僕は社会貢献したい思いがあった。前職が激務で、同期がうつ病や、引きこもりになったりで、そんな同期を救えないかなと思ったりもしました。父親は(陸上)自衛官で転勤族。生まれは広島なんです。実家がいいわけでもなく、何の後ろ盾もなかったですね」

――独力で頑張って、順調に業績も伸ばし、球団作りの足がためができたわけですね。

「最初は(障碍者支援事業の)競争相手も少なく、人も集まりました。実は、サラリーマン時代に、ボーイズリーグでチームメートだった小野瀬将紀(現茨城主将兼守備、走塁コーチ)を通じて、長峰昌司(元中日、オリックス、現茨城GM兼ヘッドコーチ)さんを紹介されたのが全てです。球団を作りたい夢を語ったら、それは面白いということで、結局、脱サラして立ち上げた障碍者就労支援の会社に入社してもらい、そこから本格的に球団づくりに入ったわけです。具体的な方策は全くなく、一緒になって汗をかきながら、ここまでやってきました。今では支援いただいている(スポンサー企業が)100社余りにもなりました」

――参入1年目で観客動員1万人超えは凄いじゃないですか?

「本当は年間4万人を目標にしていたんです。そのためには1試合平均1111人必要なんですね」

――なるほど。さすがにルーキー球団としてはリーグで苦戦していますが、今後の夢は?

「僕は目線、4つ向いてますね。ひとつはどれだけ地域に貢献できるか。2番目はファンをどれだけ喜ばせられるか。次にスポンサーに広く魅力を感じてもらえるか。最後は選手をどう育成、強化するか。このチームでよく6勝できたなって。監督、コーチがよく頑張ってくれました。選手はもっと練習してもらいたいですね」

――夢の道のりは長いですが、頑張ってください。有難うございました。(細野能功 / Yoshinori Hosono)