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クラブ史に残るスター選手と交換で『夢』を残す

現在のNBAで最高のタレントの一人、アンソニー・デイビスのレイカーズ移籍が決まった。今年1月末の時点で代理人を通じてデイビスがトレードを望んでいると伝えられたペリカンズは、セルティックスとレイカーズを天秤にかけて有利な条件を引き出した。

ロンゾ・ボール、ブランドン・イングラム、ジョシュ・ハート、今年のドラフト全体4位指名権を含むドラフト1巡目指名権3枠、というのが交渉の成果。フランチャイズプレーヤーとして長くペリカンズを牽引したデイビスを手放しても、若く期待できるチームは残ったわけだ。

当初はトレードデッドラインまでにデイビスの放出が決まると見られていたが、ここでは動かず。シーズン後半戦は勝利にこだわらず、デイビスにも無理をさせなかった。その間に交渉は進む。待ったことでセルティックスが交渉相手となり、ジェイソン・テイタムとのトレードが話し合われた。同時に、デイビスの慰留に動くという情報をメディアに出し、本命の交渉相手であるレイカーズを揺さぶった。当初はカイル・クーズマもトレード要員に挙がっていたが、これはブラフだったとの情報もある。レイカーズのオーナーであるジーニー・バスがクーズマを若手コアにおけるNo.1と見なしているのを承知の上で、クーズマの譲渡を要求することで代わりの条件を引き出したというのだ。

デイビス本人がレイカーズ移籍を望んでいたのはほぼ間違いない。ペリカンズ側はエースの気持ちを十分に尊重した上で、レイカーズとの交渉で最善の条件を引き出した。

ペリカンズは間もなく行われるNBAドラフトで全体1位指名権を持っており、将来のオールスター選手ザイオン・ウィリアムソンが加わる。ロンゾとイングラムは、ペリカンズの指揮官アルビン・ジェントリーが好むアップテンポかつ攻撃的なバスケと相性が良く、これはザイオンにも当てはまる。

また、既存のメンバーにもポジティブな影響が見込める。ロンゾが加入したことで、ドリュー・ホリデーからゲームメークの負担を取り除き得点に集中させられることは大きなプラス要素。レイカーズ時代よりもスケールの大きいプレーができるようになったジュリアス・ランドルーが、ブレイクのきっかけとなった元チームメートたちと再びプレーするのも楽しみだ。

現時点で予想されるラインナップは、ロンゾ、ホリデー、イングラム、ザイオン、ランドルー。ハートは引き続きロールプレーヤーとして存在感を発揮するだろう。これだけで十分に強力だが、編成を司るデイビッド・グリフィンの巧みなチーム強化はこれだけでは終わらないはずだ。交渉の駒となる指名権は豊富に擁している。さらにペリカンズは優秀なコーチングスタッフを揃えており、すでに完成されたスター選手に牽引されるよりも、若手で勝負すべき体制にある。

もっとも、将来性とは曖昧なもの。経験のない選手ばかりで上へと勝ち上がるのは相当に難しい。デイビスがいた7シーズンでもプレーオフ進出わずか2回のペリカンズが、いきなり大きな躍進を遂げるとは考えづらい。それでも、このチームには時間がある。数年がかりでチーム力を上げ、成長度合いを確認しながら足りない部分を補っていけばいいのだ。

『今すぐ勝つ』を選択したレイカーズとは真逆のスタイルとなったが、意外と数年後にはペリカンズがレイカーズを上回っているかもしれない。エースのトレード要求という最悪のスタート地点から、ここに着地できたこと自体が、ペリカンズにとっては大きな収穫なのだ。実際に勝てるかどうかは未知数ではあっても、間違いなく言えるのはこれからのペリカンズが『ファンに夢を見させるチーム』であることだ。