広島は11連勝を含む月間20勝、中日高橋が公式の月間MVPの可能性高いも…

 広島が11連勝を含め月間20勝をあげたかと思えば、ヤクルトが15連敗を含む月間20敗と明暗のコントラストが激しかった5月のセ・リーグ。なおヤクルトの連敗は6月1日まで続き、セ・リーグワーストに並ぶ16連敗を喫してしまいました。5月のチーム成績は以下の通りです。(OPSは出塁率+長打率)

広島 20勝4敗 打率.288 OPS.794 本塁打29 防御率2.35
阪神 15勝9敗 打率.254 OPS.714 本塁打19 防御率3.15
DeNA 12勝11敗 打率.249 OPS.703 本塁打23 防御率3.68
中日 10勝14敗 打率.248 OPS.672 本塁打15 防御率4.35
巨人 9勝13敗 打率.267 OPS.782 本塁打32 防御率4.24
ヤクルト 5勝20敗 打率.218 OPS.658 本塁打24 防御率5.35

 5月のヤクルトは投打とも精彩を欠いていました。打率.218もさることながら得点圏打率が.176とチャンスで打てず、QS(クオリティ・スタート=6回以上を投げ自責3以下)率30.8%、WHIP(1イニングあたりの四球+安打)1.56と投手陣も打ち込まれました。またフィールドに飛んだ打球をアウトにした割合を示すDERも65.1%と守備にもほころびが見えるデータとなっています。

 3、4月に10連敗を含む17敗を喫し、7つの負け越しとなっていたDeNAですが、5月の中旬から投手陣を中心に立て直しが図られ、1つの勝ち越しとなりました。そんなセ・リーグの月間MVPが6月11日に発表される予定です。

 月間MVPの選出基準は原則NPB公式記録が用いられます。ただ打点や勝利数といった公式記録はセイバーメトリクスでは、個人の能力を如実に反映する指標と扱わないので、個人の選手がどれだけチームに貢献したかを示す指標による評価は、公式のMVPとは異なることもあることでしょう。

 そこで、セイバーメトリクスの指標による5月の月間MVP選出を試みます。

○5月月間MVP セ・リーグ打者部門

鈴木誠也(広島)
OPS1.174 wOBA0.491 RC27 13.18 出塁率.482 長打率.691
(すべてリーグ1位)

 候補選手は8名ですが、公式による今月の月間MVP最有力候補は中日の高橋周平でしょう。

高橋周平(中日)
打率.417 40安打 二塁打13 打点29 得点圏打率.485(すべてリーグ1位)

 月間MVPに選ばれるにふさわしい成績を残し、さらには月間8回の猛打賞というプロ野球タイ記録も打ち立てました。なおこの記録は川上哲治やイチローといったビッグネームを含め過去11人が達成しています。これらが評価され、公式の月間MVPに選出される可能性は非常に大きいです。

 しかし、セイバーメトリクスの指標によると、鈴木誠也が優位であると言えます。

鈴木誠也
OPS 1.174 出塁率.482 長打率0.691 wOBA.491 RC27 13.18

高橋周平
OPS 1.122 出塁率.434 長打率0.688 wOBA.485 RC27 11.54

 出塁率と長打率を足して評価するOPS、各プレーの特典価値を累積して算出するwOBA、選手の得点創出能力を測るRC27といったセイバーメトリクスの指標によれば、鈴木誠也がすべての指標で月間1位となりました。もちろん高橋周平の指標も十分に高いものであることには間違い無いのですが、鈴木誠也のそれが高橋周平を上回っていたということです。

 また鈴木誠也が高橋を上回っていた点を挙げるとするならば、走力、そして対右、対左のバランスです。走力に関しては、まず盗塁が鈴木誠也7個(成功率87.5%)、高橋周平1個(成功率50%)と大きく差をあけられています。さらにベースランニングによる得点効果も鈴木誠也に軍配が上がります。

 そして、鈴木誠也の今シーズンここまでの対右、対左の成績を見ると

対右 176打席 打率.295 OPS .990 本塁打11
対左 72打席 打率.429 OPS1.353 本塁打6

 であるのに対し、高橋周平は

対右 164打席 打率.413 OPS1.093 本塁打3
対左 71打席 打率.203 OPS.542 本塁打1

 と、圧倒的に左を苦にしていることが判明しました。5月の打席を見ると、1日から12日までの46打席で左投手と対戦したのはわずか3回でした。これが5月からの好調の要因となったのかもしれません。後半からは左先発投手との対戦も増え、5月の対左成績は27打席26打数6安打の打率.231、OPS.644とまだ苦にしている様子が伺えます。

 ただ、5月31日の巨人戦で左の高橋優貴から二塁打とホームランを放っており、克服への兆しもみせました。交流戦ではパ・リーグの各チームがこのデータを参考に積極的に左投手を当てに来ることになるかもしれません。高橋周平が完全に覚醒するためには、左投手への対策が必要となってくるでしょう。

投手は広島の大瀬良&ジョンソン、DeNA今永が有力候補か

○5月月間MVP セ・リーグ投手部門

大瀬良大地(広島)
登板5 3勝0敗
WHIP0.76 QS率100% 与四球1 FIP1.91 RSAA9.00(すべてリーグ1位)
防御率2.13 奪三振率 7.34 被打率0.200

 候補選手は7名。その中でも有力なのはの3選手です。

○大瀬良大地
登板5 3勝0敗 防御率2.13 奪三振31 奪三振率7.34 被打率.200

○今永昇太
登板5 4勝1敗 防御率1.78 奪三振36 奪三振率9.17 被打率.195

○クリス・ジョンソン
登板4 3勝0敗 防御率1.44 奪三振22 奪三振率7.92 被打率.217

 4月の不調を振り払い、5月に月間20勝で一躍首位に躍り出た広島カープの投の立役者、大瀬良とジョンソン、そして月間4勝の今永の三つ巴になりそうです。誰もが公式の月間MVPを獲ってもおかしくない成績なのですが、私は大瀬良が獲得するものと予想します。その理由は後述します。

 ではセイバーメトリクスの視点での評価を見てみましょう。

大瀬良大地
FIP1.91 WHIP0.76 QS率100% HQS率60% K/BB31.00 RSAA9.00

今永昇太
FIP3.26 WHIP1.16 QS率100% HQS率60% K/BB2.12 RSAA3.06

クリス・ジョンソン
FIP3.48 WHIP1.16 QS率75% HQS率0% K/BB2.44 RSAA1.56

 被本塁打、与四死球、奪三振のみで投手を評価するFIP、1イニングあたり許したランナーの平均数を示すWHIP、6回以上登板で自責点3以内に抑えた割合を示すQS率、7回以上登板で自責点2以内に抑えた割合を示すHQS率、与四球に対する奪三振の割合を示すK/BB、そして平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標である

RSAA=(リーグ平均FIP-選手個人のFIP)×投球回数/9

など各部門において、大瀬良の指標はリーグ1位を示しています。特筆すべきは大瀬良の与四球数です。対戦打者数143に対し与えた四球はわずかに1。これに対し今永の与四球は15。これは大きな差になりました。ちなみに大瀬良から5月に唯一四球を選んだのは2日阪神戦での糸原健斗です。与四球が少ないということは当然投球数にも影響します。

 3投手の投球数は

大瀬良 投球回数38回 投球数512 P/IP13.47
今永 投球回数35回1/3 投球数591 P/IP16.73
ジョンソン 投球回数25回 投球数435 P/IP17.40

 P/IPは1イニングあたりの投球数平均を示しますが、大瀬良は1イニング13球程度で終えていることがわかります。