「eスポーツは年齢や体格、そして障害を関係なく活躍することができますし、なおかつ人や経済を動かす力があります。だから、大阪の地でこの競技を盛り上げ、eスポーツを通じた街おこしをしていきたいと考えているんです」
 スポーツタカハシ(以下、SPOTAKA)と地域計画建築研究所は、5月31日に

「大阪eスポーツ研究会」を発足し、大阪商工会議所で「eスポーツリテラシーセミナー」と称した記念イベントを開催。2025年の大阪万博に向けて同府の活性化を目指すSPOTAKAの代表取締役・高橋勝彦氏は、eスポーツ事業をスタートさせた理由について、冒頭のように説明した。




イベント内のエキシビジョンマッチで、会場を沸かせたプロゲーマーの梅原大吾(左)

 SPOTAKAは、旅館業を営む傍らで「野球をする若者を応援したい」という先代の想いにより、「高橋運動具店」として1922年に創業。以後、大阪ミナミの地で様々なスポーツムーブメントに携わってきた老舗スポーツ用品店だ。野球やサッカー、テニスなどのメジャースポーツをはじめ、スケートボード・フィットネス・トレーニング用品といったあらゆるスポーツアイテムを揃えている。

 また、「地域の課題を解決したい」という”街への愛”から様々な団体と連携し、御堂筋の整備・路上駐輪の削減や路上ゴミの清掃活動など、よりよい街にするための取り組みも欠かさない。そして3年後の2022年に迎える創業100周年に向け、「スポーツを通した地域への貢献と還元」「大阪の街をもっと盛り上げていく」という理念のもと、eスポーツの新規事業「SPOTAKA EX事業部」を設立。大阪ミナミのアメリカ村はもちろん、大阪万博を盛り上げることを目的に、活動を始めた。

 加えて”sports 2.0”に形容される、スポーツとデジタルを融合したeスポーツの領域で、「SDGs(持続可能な開発目標)」を達成する取り組みとして、新たな世代である”ミレニアル世代”の活躍をサポートしていく。

 そういった次世代人材の輩出のための教育環境を整えるべく、自治体・教育機関などを交えた運営体制を構築し、想いを実現するための”ハブ事業”としても動いているSPOTAKA。こうした様々なビジョンが形となり、今回、大阪eスポーツ研究会を発足するに至ったのだ。

 大阪eスポーツ研究会は、産官学と街が連携し、「eスポーツを通じた街の活性化」を目的とした組織。この日のイベントでは、日本eスポーツ連合(JeSU)副会長の浜村弘一氏による基調講演から始まり、日本初のプロゲーマーである梅原大吾(ウメハラ)らeスポーツ選手によるエキシビションマッチ、浜村氏やウメハラを交えてのパネルディスカッションが行なわれた。



大阪eスポーツ研究会の設立に尽力したSPOTAKAの代表取締役・高橋氏(中央)

 はじめに行われた、浜村氏による基調講演は「急成長する世界のeスポーツ市場と日本の現状・可能性」をテーマにスタート。eスポーツの市場規模について触れつつ、アジアでの成長の可能性も強調した。

「2017年度時点で6億5500万ドルの収益があると言われております。5年後の2022年には、約2.7倍の18億ドルぐらいまで大きくなると予想されているんです。eスポーツはアメリカやヨーロッパに人気がある印象があると思いますが、実は熱烈なファンはアジアに多い。2019年度予測のeスポーツの常連ファン(2億100万人)のうち57%がアジアのファンなんです」

 実際に、今年2月に福岡で行なわれた格闘ゲームのイベント「EVO Japan」でも、アジア系の来場者が多かったという。そのことからも訪日外国人客の増加によって日本が支えられていることが分かるため、eスポーツを絡めた大阪万博によって見込める巨大なインバウンド需要への期待も高まるだろう。

 最後に「野球やサッカーといったメジャースポーツはテレビで大きくなりましたが、今の若い人たちはテレビを観ません。インターネット上の動画を視聴しているんです。ただ、その中の一つのコンテンツがeスポーツだった。動画で競技を観て、選手のファンになり、支援をする。その流れが大きな経済産業を生み出しているんです。したがって、eスポーツはテレビを観なくなった若い世代が作り上げた競技。これからはその次世代の人が支えていく市場になると思うので、ベンチャー気質の高い大阪なら、伸びる可能性は十分にある」とeスポーツと大阪の相性のよさを口にした。

 続いて、プロゲーマーのウメハラ、どぐら、小路KOGの3人が登壇。”プロの凄さ”をわかりやすく説明・体感してもらえるよう小路KOGの解説を交えながら、格闘ゲーム「ストリートファイターV アーケードエディション」を使用したエキシビションマッチを開催した。

 ウメハラは初戦、同じく1990年代から活動しているレジェンド・中野貴博氏(株式会社スサノオ社長)と激突。試合は終始ウメハラのペースで進み、中野氏に付け入る隙を与えることなくウメハラが完勝。その圧倒的な強さに、会場はどよめきが起こっていた。

 続いてウメハラは、大阪を拠点に活動するプロチーム「CYCLOPS athlete gaming」に所属するどぐらと対決。今回は世界で最もポピュラーな「1試合3セット、2本先取、2R先取」のルールで試合が行なわれた。

 1試合目はウメハラが、2試合目はどぐらが取ってスコアは1-1。そして最後は、やはり百戦錬磨のウメハラが勝負強さを発揮し、2-1で勝利。プロゲーマーならではのスピーディーで高度な技の応酬に、会場からは選手に対して大きな拍手が浴びせられた。

 そして最後に、「大阪万博に向けたeスポーツの可能性」についてのパネルディスカッションを実施。浜村氏とウメハラに加え、立命館大学教授の鐘ヶ江秀彦氏、大阪観光局常務理事の市政誠氏、大阪市商店街総連盟理事長の千田忠司氏、アメリカ村の会顧問の井原正博氏の6名が登壇した。
 街おこしにeスポーツをどう活用するか、eスポーツになじみのない層をどう巻き込んでいくかなど、明確なビジョンが示された。また、エキシビジョンマッチで会場を沸かせたウメハラは、

「今はオンラインで繋がって対戦することができるけど、やっぱり人の顔を見てゲームをするのが一番面白い。ゲームは人を集めることができるんです。だから自然とeスポーツに関わる人は増えていく」と、国内での市場規模はさらに拡大することを確信している様子だった。




イベントの最後は、会場全体で大阪eスポーツ研究会を後押しした

 SPOTAKAは今後、この日のエキシビションマッチのように、地域貢献・還元型のeスポーツ大会「SPOTAKA CUP」を、様々な会場(街全体)で開催していく予定だという。それによって、eスポーツを知るきっかけとなるようゲーム市場への流入を促し、そこで生まれた人の流れを街の活性化に利用していく。主に若い層や子供たちが気軽に遊びに来られる街としての定着化を狙っていく考えだ。

「10年後、20年後には”大阪=eスポーツ”だと思われるよう、競技を大阪の文化として根付かせていきたい。そして、eスポーツによって街を興奮と”熱狂のるつぼ”に変えていきたいですね」(SPOTAKA代表取締役・高橋氏)

 この日、ウメハラらプロゲーマーたちの試合に会場が歓喜したように、大阪にeスポーツを”する場所”が増えていけば、SPOTAKAが目指す街の活性化の実現は近いだろう。その先に、eスポーツがメジャーなスポーツ競技として認知され、全国にムーブメントを起こす未来が見えてくる。