6月1日、2日に日本ID陸上競技選手権大会が埼玉県熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で行われた。本大会は、2019INAS グローバルゲームス陸上競技と2019WPA 世界パラ選手権大会の代表選手派遣選考対象大会でもあった。

IDとはIntellectual Disabilityの略で知的障害者の意味。文字だけで想像すると誤解を生むかもしれないが、そんな先入観は捨ててもらいたい。記録に目を向けると立派なアスリートだ。例えば、本大会の男子100mで3位に輝いた安川美喜雄選手は、ID日本記録を保持する。そのタイムは、10秒98。ウサイン・ボルトの世界記録(9秒58)にはもちろん及ばないが、10秒台で走る脚力は素晴らしいものがある。また、安川選手は、200mでも日本記録を持っていて、タイムが22秒32。正に二刀流のアスリートだ。

選手宣誓をした金子遼選手は、2019年の東京マラソンで2時間22分25秒の72位。これはID日本記録であるとともに国際知的障害者スポーツ連盟の世界記録(申請中)でもある。タイムだけを見てもすごい記録だが、雨が降った当日の天気も鑑みれば、そのすごさがよりクローズアップされる。

女子では、蒔田沙弥香選手が3000mと5000mで日本記録を持つ。タイムはそれぞれ10分16秒16、17分27秒19。3000mでは福士加代子選手が持つ日本記録(8分44秒40)と比較すると、タイム差はおよそ1分30秒。距離で見ても400〜500mくらいか。大差はない。蒔田選手は、ロンドン2012パラリンピックで1500m5位、リオ2016パラリンピックも1500m6位と輝かしい実績を持つ。さらに昨年のアジアパラ大会では1500mに出場し、大会新記録の4分53秒26で優勝した。その蒔田選手の1500mの記録を上回るID日本記録保持者が、古屋杏樹選手。タイムは4分45秒23で、日本記録保持者の小林祐梨子(4分7秒86)とは約38秒だ。

1日の最初の競技だった1500m予選では赤井大樹選手が、自らが持つ日本記録を2秒ほど縮めた。今大会での活躍が10月にオーストラリアで開催される2019INASグローバルゲームへの足がかりとなり、その先の東京2020パラリンピックにつながる。知的障がいを持つ人も、競技スポーツへの指向意欲を高く持ち、高いレベルで競技に取り組んでいる。