文=丸山素行 写真=野口岳彦

4番が3ポイントシュートを決めることの意味

女子日本代表は先日行われたベルギーとの国際強化試合で連勝を飾り、強化が順調に進んでいることを証明した。

第2戦では先発陣が崩れてベルギーの猛追を浴びたが、セカンドユニットが悪い流れを断ち切る形で最終スコア84-71の勝利を収めた。今回が初代表の谷村里佳もこのセカンドユニットの一員として勝利に貢献。13分強のプレータイムを与えられた谷村は、放った2本の3ポイントシュートを沈め、2アシストを記録した。「ストレッチ4なので、いつでも3ポイントシュートを打つ準備をして、空いているスペースを意識してやっています。迷わず打つことができているので、それが確率にも繋がっているんじゃないかと思います」

『ストレッチ4』とは、4番(パワーフォワード)がペイントエリアでプレーするのではなく外でプレーするスタイルのこと。インサイドの選手がアウトサイドに出ることでオフェンスの幅が広がるだけでなく、相手ディフェンスを広げ味方にスペースを作り出す役割を持つ。

185cmの谷村が3ポイントシュートを決めることで、相手の長身選手は外に出ざるを得なくなり、ガード陣がペイントアタックしやすい状況が生まれる。指揮を執るトム・ホーバスは1番から5番の選手すべてが3ポイントシュートを打てるチーム作りを進めており、谷村が2本の3ポイントシュートを決めたことは大きな意味がある。

日本のシュート力を生かすスクリーン

オフェンスだけでなく、ディフェンスでも谷村の貢献は目立った。日本が反撃を受けた時間帯は、ディフェンスのローテーションミスが多発し、インサイドで失点する場面が目立った。だが谷村はディフェンスのズレを察知し、素早いカバーリングで守備の陣形を整えた。

谷村もディフェンス面については「特にミスはなかった」と及第点を与えた。日本代表の複雑なディフェンスのルールは、初代表の選手にとっては簡単にこなせるものではない。ここを無難にミスなく乗り切ったことは、代表定着に向けたアピールとなる。「チームディフェンスの中で、誰かがピンチの時にセンターがカバーするとか、そういうところをもうちょっとやりたい」と、さらなる向上も意識する。

今大会では同じく初代表の林咲希は2試合連続で5本の3ポイントシュートを沈め、MVPに選ばれた。もちろん、彼女のシュート力があってこその結果だが、ノーマークで打てるからこそ確率も上がる。だが、第2戦の第1クォーター残り1分27秒に林が決めた3ポイントシュートは、林をマークする相手を谷村がスクリーンで跳ね除けたから生まれたとも言える。谷村の自己犠牲精神は、ディフェンスだけでなくオフェンスでもチームを助けている。

日本のように小さいチームであればあるほど、スクリーンの重要性は増す。「日本は特に個人シュートがカギです。そういう細かいところでやっていかないと、世界では戦えません。4番、5番の選手は高さでは相手に負けるかもしれないけど、そういう細かいところで仲間を助けられるようにやっていくことが大切です」と谷村は言う。

チームを支える働きにも「当たり前のことをしただけです」

得点を決めた選手にスポットが当たるのは当然だが、スタッツに残らない形で『アシスト』した谷村の働きも重要なもの。スクリーナーが脚光を浴びることは少ないが、「スクリーンが良くても入らない時は入らないですし、決めたのは彼女の力なので」と谷村は林を称賛し、「スクリーンをかけることが仕事なので、私は当たり前のことをしただけです(笑)」と自分の働きを誇張しようとはしなかった。

東京オリンピックで金メダルを目指している日本。世界の強豪を倒すには、谷村が言う細かな積み重ねが必要となる。そして、体格で劣る日本にとっては自己犠牲の精神で攻守にチームをサポートする『ストレッチ4』の存在が必要不可欠だ。