やや驚きの落選だった--。

 6月3日、東京都内で記者会見が開かれ、9日から宮崎・シーガイアで行なわれるラグビー日本代表合宿のメンバー42名(FW26名、BK16名)が発表された。



日本代表の宮崎合宿メンバーに山田章仁の名前はなかった

 7月末から続けて行なわれる国際試合、そしてその先のラグビーワールドカップに向けて、それまでの候補が約60名から42名に絞り込まれた格好だ。38歳のベテランLO(ロック)トンプソン ルーク(近鉄)が2年ぶりに選ばれた一方、2015年のワールドカップで3勝に貢献した立役者のCTB(センター)立川理道(クボタ)と、WTB(ウイング)山田章仁(NTTコミュニケーションズ)の名前は呼ばれなかった。

 日本代表を率いるニュージーランド出身のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は、「(代表候補選手)全員を試合で起用する」ために、スーパーラグビーのサンウルブズだけでなく、日本代表候補選手による特別編成チーム「ウルフパック」でも経験を積ませ、当落線上の選手たちにチャンスを与えた。

 立川は、練習生という立場から候補選手に昇格したものの、サンウルブズやウルフパックの試合で相手を止めきれなかったシーンが目立ち、そのパフォーマンスがマイナス評価されての落選となった。一方、ケガの影響もあった山田は、激化するバックスリー(WTBとFB=フルバックの総称)のポジション争いにより、ウルフパックでの出場は1試合のみ。ほとんどアピールすることすら叶わなかった。

 4月末に行なわれたウルフパックの試合前、山田がメンバー外になった理由を聞かれたジョセフHCは、こう説明した。

「メンバーに入るには、それにふさわしい活躍をしないといけない。山田はハイランダーズB戦でケガをしてしまい、一方で(福岡)堅樹(パナソニック)やレメキ(ロマノ ラヴァ/ホンダ)は非常にいいパフォーマンスをしている。機会を与えられたら、しっかりと実力を見せないといけない。メンバー外の選手はケガの影響か、もしくはプレッシャーがかかる立場に置かれていると理解してほしい」

 この言葉からも、厳しい状況なのは理解していた。だがそれでも、個人的には「山田は選ばれるのでは?」と思っていた。

 2016年の秋にジェイミージャパン体制になってから、山田は福岡、レメキに次いで出場時間、試合数ともに多いWTBだった。「大舞台に強い選手」として名を馳せ、2016年11月のウェールズ代表戦では敵地でトライを挙げ、昨秋のイングランド代表戦でも14番をつけて先発出場していた。

 2015年ワールドカップの活躍は言うまでもなく、2017年度のトップリーグでは2度目のトライ王を獲得。その決定力は、33歳のベテランになっても健在だった。日本代表を率いて2年8カ月となるジョセフHCも、山田がどんな選手かは十分にわかっていたはずだ。

 しかし指揮官は、山田の名前を挙げることはなかった。

 ジョセフHCは今回の合宿メンバー42名を選考する際、身長181cmの山田ではなく、身長184cmのWTB/FBヘンリー ジェイミー(トヨタ自動車)と、身長185cmで唯一の海外組のWTBアタアタ・モエアキオラ(神戸製鋼)を選んだ。「苦渋の選択だった」と話した後、こう続けた。

「バックスリーには、福岡やレメキ、松島(幸太朗/サントリー)といった『Xファクター(特殊能力)』を持った選手が揃っている。そして、ワールドカップで対戦するアイルランド代表などの強豪国は、ハイボールを蹴って空中戦でプレッシャーをかけてくることが予想される。よって、空中戦に耐えることのできる大きい選手が必要だった」

 山田は個人の能力で局面を打開するタイプではなく、周りの選手に活かされて飛躍するタイプだ。また、自身でも「(福岡やレメキと違って)自分には特別な能力がない」と認めている。山田もハイボールの処理は上手なのだが、ジョセフHCはより身長が高く、当たりにも強い選手を選んだのだろう。

 ジョセフHCは2017年から、「複数のポジションができる選手」を重用している。イエローカード(10分間の一時的退場)やHIA(脳震盪かどうかのチェック)によって選手がピッチから離れた場合や、想定外のケガに対応するためだ。

 今季チーフス(ニュージーランド)で9試合に出場し、計3トライを挙げているモエアキオラは、WTB登録ながらSO(スタンドオフ)やCTBでもプレーができ、東海大時代にはNo.8(ナンバーエイト)としても試合に出場している。このような万能BKが控えにいれば、ジョセフHCも安心できるだろう。

 また、同じくWTBで選出されたヘンリーも、FBでのプレーが可能だ。FB登録の山中亮平(神戸製鋼)はSO出身でインサイドCTBの経験があり、FB野口竜司(パナソニック)もWTBとしてテストマッチに出場している。山田はWTBでしかプレーできないことが、最後はあだとなった。

 ワールドカップイヤーの今年、山田は9シーズンプレーしたパナソニックからNTTコミュニケーションズに移籍した。「NTTコミュニケーションズの看板を背負って、世界中にインパクトを、ひとつでもうれしいニュースを届けられるようにがんばりたい」。そう意気込んでいたが、本人もまさか6月の段階で落とされるとは思ってもいなかっただろう。

「まだ(ワールドカップに向けた)ドアが閉まったわけではない。(8月の網走合宿の前に)再度40人のスコッドを選ぶ。山田や立川はサンウルブズで試合があるので、しっかり力量をアピールすれば、チーム入りの機会は設けられている」

 会見の席で、ジョセフHCは落選した選手への配慮を見せた。

 ただ、今回選ばれた42名のうち、12名はPR(プロップ)やHO(フッカー)といったFW第一列の選手で、BKは16名とかなり絞り込まれた。ワールドカップの最終スコッドは31名で、BKは13名ほどと予想されている。ケガ人が出ないかぎり、今回の42名からワールドカップメンバーが選ばれるだろう。

 山田はこの逆境を覆し、再び桜のジャージーに返り咲くことができるだろうか--。