東京ビッグサイトにて行われた『SPORTEC Leisure & Game』の最終日(5月24日)に、「大学スポーツ協会(UNIVAS)のビッグデータ戦略 ~データバンク構想と学生アスリートへの成果の還元~」と題して、セミナーが開催された。登壇者は遠藤利明氏(衆議院議員/東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長代行)、池田敦司氏(UNIVAS専務理事/仙台大学教授)、境田正樹氏(UNIVAS理事/東京大学理事/日本バスケットボール協会理事/Bリーグ理事)、二宮清純氏(スポーツジャーナリスト)、水原恵理氏(テレビ東京アナウンサー)。当日は会場が満席になるなど、大学スポーツに対する社会からの注目の高さが伺えた。今回は、特にUNIVASの理事を務める池田敦司専務理事並びに境田正樹理事の発言を中心に報告する。

※UNIVASの概要について話す池田専務理事

池田専務理事は日本版NCAAに当たるUNIVASの設立の経緯、大学スポーツの振興について解説した。アメリカでは大学スポーツ市場規模8000億円、NCAA収益規模1000億円ともいわれており、プロスポーツを凌ぐ巨大市場が展開されている。その収益の約8割はコンテンツ権利ビジネスである。一方、日本の大学スポーツは、未だコンテンツによって価値にばらつきが生じているのが現状だ。なるべく多くの人に大学スポーツ自体を知ってもらうために、UNIVASでは6月以降31競技、600試合を配信していく予定だ。現在加入しているのは219大学31競技団体。所属する学生アスリートは推定15万人といわれるが、『推定』として正確な実数が把握できていないこと自体が、現在の大学スポーツの課題。UNIVAS設立によって、大学スポーツの競技横断的な実態把握や、課題の解決を目指していく。

※UNIVASにおける個別データの管理・活用について述べる境田氏

バスケットボールのプロリーグ・Bリーグの創設に携わり、現在はその理事も務めている境田氏。その手腕を発揮しているのが、ビッグデータを活用し、その成果を学生アスリートたちに還元していく戦略だ。

提示された具体例は2つ。まず、プロゴルファー・横峯さくら選手と東京大学との協同プロジェクト。横峯選手の全身にマーカーを付け、動作を様々な角度から計測し、可視化するものだ。これがUNIVASでも導入されれば、加盟アスリートから競技指導者に至るまで、トップアスリートが競技の際にどのような筋肉を動かしているか見ることができ、練習や指導に活かすこともできる。技術向上だけでなく、けが予防に活用できる点もメリットだ。

もう一つは、糞便メタゲノム解析。東京大学では、通常のコンピュータでは1ヶ月かかる解析をわずか6分で完了させるスパコンと高速メタゲノム解析ソフトを導入した。より多くの学生アスリートの腸内環境を詳細に調べることができれば、コンディションを正確に把握することも可能となる。最新の科学技術によって、腸内環境制御からアスリートに最高のパフォーマンスを引き出すことが可能となる時代も近づいている。

日本版NCAAであるUNIVASが発足して2ヶ月。今回はビッグデータ戦略を中心にセミナーが行われたが、今後も革新的な戦略を打ち立て、加盟大学と競技団体を強力にバックアップしていく予定だ。様々な成果を還元することで、UNIVASに加盟する大学スポーツの裾野はさらに広がるはずである。「学業充実」「安全安心」「事業マーケティング」を軸に掲げ、学業と競技の両立、競技環境の整備を見据えた組織体制作りは、着実に前進している。

池田敦司(いけだ・あつし)
2005年楽天イーグルスの創設に参加、ボールパーク構想と地域密着戦略を進め、取締役副社長を務める。2015年ヴィッセル神戸代表取締役社長就任、集客強化とファシリティ改善を推進。野球とサッカーの両競技にて経営に携わった希少な経験を持つ。2017年から仙台大学教授。2019年3月より現職。

境田正樹(さかいだ・まさき)
弁護士としてこれまでスポーツ基本法の制定をはじめ、多くのスポーツ団体のガバナンス強化、改革に関わってきた。2015年からは、川淵三郎氏とともにBリーグの創設と日本バスケットボール協会の改革にも尽力し、現在も理事を務める。東京大学スポーツ先端科学拠点開設を主導し、最先端スポーツ科学の成果をスポーツビジネスに展開するための活動に取り組む。