文=丸山素行 写真=野口岳彦、鈴木栄一安定したプレーで勝利に貢献するも……6月2日、女子日本代表はベルギーとの国際強化試合第2戦に84-71で勝利した。第1戦に続いて先発ポイントガードを任された本橋菜子は、8得点3アシスト2スティールを記録…

文=丸山素行 写真=野口岳彦、鈴木栄一

安定したプレーで勝利に貢献するも……

6月2日、女子日本代表はベルギーとの国際強化試合第2戦に84-71で勝利した。

第1戦に続いて先発ポイントガードを任された本橋菜子は、8得点3アシスト2スティールを記録する『高値安定』のパフォーマンスを見せた。

試合序盤から攻守ともにベルギーを上回った日本は、第2クォーター開始3分半で20点のリードを奪った。このまま一方的な試合になるかと思われたが、ノーマークのシュートが決まらず、軽率なターンオーバーも重なり、第3クォーターには5点差に迫られた。結果的に、セカンドユニットが流れを引き戻して勝利を収めたが、本橋は追い上げられた時間帯を課題に挙げた。

「第1戦はシュートが入って良い流れを作っていけたんですけど、今日はシュートが落ちた時に悪いムードになってしまいました。ディフェンスもコミュニケーションミスだったり、エナジーが足りないって言われたんですけど、そういったところが見せられなかったのが反省点です」

本橋が認めるように、日本はコミュニケーションミスからマークマンの受け渡しがスムーズにいかず、インサイドで失点するシーンが目立った。「自分たちのディフェンスに対して、アジャストしてオフェンスをされた感じ」と本橋は振り返る。

「自分たちはさらにアジャストしないといけないんですけど、そこで相手を上回れなかったかなというのはあります。そもそもの(ディフェンスの)決まりごとをまだ守り切れていないっていうのもあるし、それ以外でも相手がこのディフェンスに対して対応してきた時の守り方は、まだすぐに対応できていないです」

指揮官のトム・ホーバスは会見で「たまにウチのペースを作ったけど、遅い気がした」とコメント。これは日本が目指すスピーディーな展開が少なかったことを意味する。

本橋も「意識はしたんですけど、今日はうまく流れを戻せなかった」と同調し、「オフェンスのコントロールもそうですし、オフェンスがダメだった時のディフェンスも、考えていかないといけないかなと思います」と、ネガティブな面にばかり目を向けた。

「捨て身の覚悟でやっていた」1年前

吉田亜沙美が引退した今、誰が日本代表の先発ポイントガードになるのか。本橋は今回の2試合とも先発の座を射止めた。ちょうど1年前の国際強化試合で本橋は代表デビューを飾っている。ここでチームトップの12アシストに加え、ディフェンスで高評価を得て、信頼を勝ち取った。

「あまり期待されていなくて、あそこにいるのが自分でも不思議なぐらいでした。去年結果を残せたのは『やってやろう』の精神で、捨て身の覚悟でやっていたので、あまりプレッシャーを感じずに自由にやれたんだと思います」と、当時を振り返る。

だが、1年の月日は本橋の置かれている状況を変え、求められるレベルも上がった。その結果、本橋は見えない重圧に苦しめられ、自分を追い込んでしまったと言う。

「今回は昨年の結果があって、それをベースにさらにそれ以上の結果を残さないといけないというプレッシャーで、自分の中でいろいろ考えすぎてしまう部分がありました。余計なことを考えすぎて、自分のベストパフォーマンスはできていない感覚があります」

指揮を執るトム・ホーバスも本橋について、「まだ全然良いプレーを見ていない」と、強化合宿の時に話していた。今回の試合後の会見でも、「もちろん悪くはない」とコメントしたが、それは決してポジティブな言葉ではなかった。

だが、それらの言葉は本橋のポテンシャルを高く評価している、期待の裏返しでもある。だからこそ、この2試合で先発に選ばれたのだ。

「もっともっとレベルアップしないといけない」

本橋自身は「今回、先発は任されたんですけど、それに相応しいレベルでは全然ないと思っている」と厳しい自己評価を下す。

「安定したプレーはできていないし、もっともっとレベルアップしないといけないと感じています。コントロールもまだまだ未熟だと思うので、結果を残せるようにしたいです」

ただ思い切りやれば良かっただけの1年前とは違い、現在は求められるスタンダードレベルが上がった。また、先発という大役を任され、自分で必要以上にプレッシャーを感じてしまっている。だが、激しいチーム内競争があることで、選手個々もチームも成長する。本橋の台頭でポイントガードのポジション争いは熾烈なものとなった。

今ここで本橋が壁を乗り越えることができれば、本橋自身はもちろん、チームももう一つ上のレベルに行けるはず。そんな成長が各ポジションで繰り広げられて初めて、『東京オリンピックでの金メダル』という目標達成が現実味を帯びてくる。