つらい幕切れだった。敗戦後の「ホーム最終戦セレモニー」。赤く染まったスタンドの観客からのあたたかい拍手を受け、赤色ジャージのサンウルブズの選手たちが頭を深々と下げた。大型スクリーンに文字が浮かんだ。

<2019シーズン ご声援 ありがとうございました!>



試合後、納得いくプレーができず、悔しがっていた徳永祥尭

 2020年限りでのスーパーラグビー(SR)除外が決まっているサンウルブズは1日、約1万7千人が詰めかけた秩父宮ラグビー場でブランビーズ(豪州)と戦い、19-42で敗れた。これで7連敗の通算2勝12敗。参戦4年目で初めてホーム全敗に終わった。

「勝ちたかった」と、選手はみな、口をそろえた。FL(フランカー)で今季初先発した徳永祥尭(よしたか)は「ファンは、ほんとありがたいですよ」と声を絞り出した。

「”ファンのために”って選手みんな言っていました。ここで勝ちたかった。ファンサービスの時には、ファンのみなさんが”頑張れよ”と言ってくれたり、”代表として待っているから”って言ってもらったり、自分にとって、すごい味方というか、応援してくれる人がいるというのは心強いですね」

 秋のラグビーワールドカップに向けた日本代表入りを目指す選手たちにとって、この試合は2つの意味でラストチャンスだった。チームのホーム初勝利と、国内での自身の日本代表入りへのアピールである。

 27歳の徳永は80分間、フル出場した。3月に顔面を骨折し、5月の代表候補のオーストラリア遠征で実戦復帰したが、ボールキャリーの面で課題を残していた。だから、この日は積極的にボールに絡んでいった。だが、気負いからか、パスミス、ノックオンとハンドリングミスを犯した。

 アピール度は100点満点で?と酷な質問をすれば、徳永は顔をゆがめた。

「全然、ダメでした。50点ぐらいじゃないですか」

 ディフェンスではからだを張った。前に出た。よくタックルに行き、倒れてもすぐに立ち上がって、走り回った。アタックでもボールを何度も手にした。戦う気概が見えた。

「でも」と漏らした。正直な人だ。

「気持ちが先行してしまったりとか、コミュニケーションがしっかりとれなかったり…。僕の外に(ボールを)放っているのに、僕が手を出してしまったり…。もっとコミュニケーションをうまくとれていれば、ディフェンスも楽にできたかなというのはあります」

 サンウルブズに初合流してまだ10日ほどだった。チーム間での連携をとるのには時間がなさすぎた。「もう少し、早く(サンウルブズに)来たかったです」と小声で漏らした。

 試合はサンウルブズがキックオフからノーホイッスルトライで先制した。だが、チーム力の差ははっきりしていた。個々の力量はともかく、チームの連携、チームの結束でも見劣りした。しかも、肝心のスクラム、ラインアウトのセットプレーでやられた。

 サンウルブズは相手ボールのスクラム7本のうち、5本もコラプシング(故意に崩す行為)の反則をとられた。相手1番(左PR=プロップ)がステップアウトして回し気味に押してきたのに対応できず、崩されてしまった。

 右PRの浅原拓真は「ちょっと抑えられなかったですね」とぼそぼそ語った。

「狙われている感はあったんですけど、そこで打開できるほどのスキルとパワーが足りていませんでした。相手がこだわって押してくると、僕が浮いちゃって…」

 31歳の浅原がサンウルブズに合流したのは3月だった。それまでの日本代表候補合宿での長谷川慎スクラムコーチと、サンウルブズのスクラムの組み方は異なるようだ。「結構、違う」と説明する。

「シン(長谷川)さんのスクラムは8人でガチッと組ませるスクラム、こっちは個々でやっている感があります。腰の位置の高さなど、徹底できませんでした」

 スクラムは8人一体が基本だ。フォワードが試合ごとに替わってきたサンウルブズではどだい、呼吸や細部を合わせるのは難儀だろう。身長179cmの体重113kg。路上で車の下敷きになって話題を提供したことのあるタフガイもさすがに元気がない。

 浅原も日本代表入りを目指している。アピールは?

「スクラムでここまで不安を残すと厳しいと思います。あと2試合あるので…」

 途中から入った左PRの三上正貴も戸惑っていた。フロントロー陣で先週は腰の位置、今週は肩のラインにこだわったそうだが、うまく相手に対応できなかった。「厳しかったですね」と声を落とした。

 30歳の三上は日本代表首脳陣から「体脂肪を減らせ」との指示を受けている。瞬発力、運動量を上げるためだろう。またまた同じ質問。日本代表入りへのアピールは?

「スクラムで苦戦しているので…。スクラムでどれだけインパクトを残して、体脂肪を絞りながらワークレート(仕事量)を上げていくか。もっと質を上げていきたい」

 このサンウルブズの存在意義は当初、ラグビーワールドカップに挑む日本代表の強化にあった。だが、今季は代表候補の主力で固める「ウルフパック」とは別に編成されてきた。例えば、編成に一貫性のあるアルゼンチンの代表「ロス・プーマス」とSRの「ジャガーズ」との関係とは異なる。

 この日のブランビーズが今季、37人を試合登録してきたのに対し、サンウルブズは53人も使ってきた。うち、日本代表候補の主力が何人出場したのだろうか。加えて、日本代表のコーチも務めるトニー・ブラウンヘッドコーチはリーグ終盤、チームから離れた(来季、ハイランダーズ入りも判明)。いろんな国の出身者が集うサンウルブズの選手にプライドはあろうが、何のために戦うのか、チーム共通の大義が見えない。

 サンウルブズは2試合を残し、3日、日本代表候補は約60人から40人ほどに絞られ、発表される。そのメンバーに入るかどうか。徳永や浅原、三上ら当落線上の男たちの過酷な戦いはまだ、続くことになる。