東海大・駅伝戦記 第53回

 関東インカレ終了後、東海大・両角速(もろずみ・はやし)監督の表情は硬かった。中長距離ブロックは目標スコアの45点に遠く及ばない33点に終わり、法政大(35点)に敗れ、2位という結果に終わってしまった。

「うーん、全体的に物足りないですよね」

 思った以上にスコアが伸びなかったのは、単純に言えば5000mと1万mで8位入賞者がひとりも出なかったからだ。



関東インカレ、男子1部5000mで11位に終わった東海大・鬼塚翔太

 大会初日の男子1部1万mは、鬼塚翔太(4年)が9位、塩澤稀夕(きせき/3年)が12位、そして今年1月の箱根駅伝8区で区間新の走りを見せた小松陽平(4年)が33位と大きく出遅れた。

 男子1部5000mは、鬼塚、關颯人(はやと/4年)、西川雄一朗(4年)の3人のエースが走り、全員8位以内の入賞の期待が大きかったが、鬼塚が11位、關が12位、西川が13位に終わり、まさかのポイントゼロに終わってしまった。

 一方、男子1部ハーフで西田壮志(たけし/3年)が3位、名取燎太(3年)が5位入賞。男子1部1500mでは飯澤千翔(かずと/1年)と館澤亨次(4年)がワンツーフィニッシュで強さを見せつけ、男子1部3000mSC(障害)では阪口竜平(4年)が優勝し、期待に応えた。

 種目によって明暗が分かれたが、関東インカレは春からの練習や選手の取り組みの成果を披露する場である。結果が出なければ、残りのトラックシーズンの強化、トレーニングなどの修正を図り、結果が出れば継続。それが秋の駅伝シーズンへとつながっていく。

 昨年で言えば、ハーフで2位に入った湯澤舜は箱根駅伝で2区を快走し、4位の西田は山登りの5区で箱根デビューとは思えない走りを披露。また、7位入賞の湊谷春紀も箱根9区で優勝を確実にする走りを見せた。

 その観点からすると、今年はハーフと1万mと5000mに期待する選手が出場していただけに、結果として「物足りない」ものになった。

 ハーフに関して言うと、大会までの調整は順調だった。9日前のポイント練習では、松尾淳之介、西田、名取が非常にいいペースで走り、西出仁明コーチから「調子いいぞ」と太鼓判を押されていた。この3人は今シーズン、大きな期待をかけられている。

 ロングを得意としていた湊谷と湯澤が卒業し、ハーフをコンスタントに走れる選手が不在になった。そこで白羽の矢が立ったのが、松尾と名取だ。

 松尾は1年時に箱根4区、2年時は5区を走ったが、今年の箱根は故障もあって3大駅伝(出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝)に絡むことができなかった。捲土重来、最終学年となった今シーズンは何がなんでも箱根を走る意欲に満ちており、春からハーフを中心にレースに出場してきた。また、名取は入学当時から故障が多く、昨年からチームを離れ、単独で強化練習を積んできた。

 3月の立川ハーフで松尾は6位に入り、名取は63分31秒の自己ベストで27位、西田は32位だった。焼津みなとマラソン(ペアマラソンの部)も3人で走り、名取がさらに自己ベスト更新して1位となり、松尾、西田も続いた。

 その後、関東インカレのハーフに照準を合わせてきた。調整はうまくいっていたかのように思えたが、いざフタを開けてみれば、両角監督の思い描いていた上位独占は果たせなかった。

 暑さのなか、西田は疲れきった表情でこう語った。

「3人とも入賞しようと練習をやってきました。大会までは順調にやってこられたと思えたんですけど、レースの結果を見ると、気持ちで負けてしまったのもありますが、ピーキングが合っていなかったのかなと思っています」

 果たして、ピーキングが勝てなかった原因なのか。レース当日の30度を超える異常な暑さが影響したのかもしれないが、条件はどこも同じ。東洋大はほぼ無名の宮下隼人(2年)が2位、蝦夷森章太(2年)が4位に入り、定方駿(4年)も6位に入るなど、強さを見せつけた。両角監督が言う。

「東洋は強いですね。勝負を想定して、しっかりと仕上げてくる。西田は昨年から順位を上げ、名取も入賞したことを考ええるとそこへの努力はあったと思うんですが、もっとやれたはずです。(10位の)松尾は物足りない感じです。箱根を走っている選手なので、そこはもう少し違いを見せてほしかったなと思います」

 両角監督の厳しい視線は選手たちだけに向けられているわけではない。他大学の動向についても詳細なチェックを行なっている。秋の駅伝シーズンまではまだ時間はあるが、トラックシーズンの出来は駅伝に影響する。

 今回、法政大は1部1万m3位の佐藤敏也(4年)以外にも、1部ハーフで坪井彗(4年)が9位に入り、1部3000SCでは青木涼真(4年)が2位、田辺佑典(3年)が4位、人見昂誠(2年)が5位に入った。

 国学院大は2部ハーフで土方英和(4年)が初優勝。また浦野雄平(4年)は2部5000mで6位、2部1万mで4位と強化が進んでおり、来年の箱根への期待が大きく膨らんだ。

 一方で最大のライバルである青山学院大は、2部ハーフで吉田祐也(4年)が4位、竹石尚人(4年)が8位、2部1500mで谷野航平(4年)が2位に入った以外、5000m、1万mともに入賞者ゼロと、やや低調な結果に終わった。

 それにしても、東海大にとって5000mと1万mともに入賞者ゼロは想定外だった。5000mは全体の持ちタイムでいえば、關が2位、鬼塚が4位だった。強力なライバルである東洋大の相澤晃(4年)、法政大・佐藤らがいたが、スタート直後は西川が留学生に次いで2番手をキープするなど、積極的なレースを見せた。2000mでは留学生プラス、相澤、佐藤、鬼塚が競っていた。だが、3000mを超えると鬼塚が出遅れ、結局、8位入賞を逃してしまった。

 このレースに合わせて調整してきた關は、レース後、次のように語った。

「余裕はあるんですけど、体が動かないというか、動かせない……練習もしっかりと積んできているんですが、なんだかなぁという感じです」

 1万mにも出場し、2つのレースで結果を出せなかった鬼塚は、關とともに両角監督とかなり長い時間話していた。

 秋の駅伝シーズンに向けて、鬼塚と關の復調は非常に大きなポイントになる。とりわけ關は故障が続いたこともあるが、2年連続で箱根を走れていない。エースと呼ばれる彼らの復調なくして、今シーズンの目標である「学生駅伝3冠」を達成するのは難しい。それだけに両角監督は、鬼塚と關の走りに大きな期待を寄せていたが、結果を残すことはできなかった。

「鬼塚は練習でやってきたことをうまく試合に結びつけることができていないですね。關は弱気になっています。1年の時の1万mでは、果敢に留学生についていったんです。それが今はできなくなっている。そこに何があるのか。何を恐れているのかって感じですね」

 両角監督は悩める鬼塚と關について、そう語った。

 關は、これから教育実習に入るため部を離れることになる。母校に戻り、高校生とふれあい、一緒に走ることで何かしらの刺激を受け、気持ち的に変われるものがあれば、チームに戻ってからのトレーニングはより意欲的にこなせるだろう。そうして7月に出場予定のホクレンで結果を出し、故障なく夏合宿を乗り越えることができれば、最終学年で3つの駅伝を走ることは十分に可能だ。

「最終学年ですし、最後にもう一度、箱根を走って優勝したい」

 昨年優勝したチームにあって走れなかった悔しさは、来年の箱根を走ることで晴らすしかない。

 5000mと1万mの結果は出なかったが、現時点において課題が見えたことは東海大にとっては大きい。出場した選手は主力だけに、これから調子を取り戻し、さらに成長する余地を残している。

 また、東洋大、法政大、国学院大、駒沢大などが結果を出し、着実にチーム力を上げて「打倒・東海」の準備を進めてきている。それを垣間見ることができたのは選手には大きな刺激になっただろうし、両角監督、西出コーチは強い危機感を抱いたに違いない。そして、それは今後の強化に十分、生かされていくはずだ。