『エース』の称号を継承した早川隆久(スポ3=千葉・木更津総合)。今季はここまで3勝を挙げ、防御率は2.29。安定感のある投球を続けているが、「エースとしての役割はまだまだ果たせていない」という。早川にとってのエースとは何か――。理想のエース像に加え、投球術。さらには今季好調の打撃に関する秘話まで、幅広くお話を伺った。

※この取材は5月24日に行われたものです。

「エースとしてはまだまだ」


取材に応じる早川

――まずは今季をざっくりと振り返ってください

 役割はそれなりに果たしているのかなと思いますけれども、エースとしての役割はまだまだ果たせていないかなと。先発としての役割はできているのかなと思いますね

――エースの役割とは何でしょう

 やっぱり(1試合を)一人で投げ切ることが重要だと思うので。今季はまだ完封完投ができていないので、そこがエースになるための条件かなと思います。

――今季、最も納得できた試合は

 負けた明治(1回戦)ですね。(6、7回に)打たれるまでは、ほぼ想定内のピッチングができていましたし、あそこで間の使い方を工夫していれば勝てた試合だったので。悔いの残る試合ではありましたけど。

――先日お渡ししたアンケートでも、明大1回戦で『打者との間合い』が課題に挙がったと書いていただきました。具体的に『間合い』とは

 バッターに考えさせたりだとか、自分の気持ちを整理するための間合いを考えながら投球するための、時間の使い方というか。対バッターとか野手の準備もそうですし、その時間の間合いをもっと意識できるようになればなと思います。

――『投げ急ぎ』とはまた別の話ですか

 あーでも、それもありますね。明治戦では5回までポンポン抑えていて、その流れでいけば抑えられると思っていました。その安易な考えで投げてしまった結果、あのように打たれてしまったので、ピンチの時こそ時間をかけて投げられれば良かったなと思いますね。

――明大1回戦の試合後には「カットボールを狙われていたことを察知できなかった」とおっしゃっていました。時間を使って投げることができれば、これも察知できたのでしょうか

 そうですね、ちゃんと間を使って自分の気持ちを整理できていれば、気が付いていたのかなと思いますね。試合が終わった後に気付くのではなくて、試合中に気付けていたのかなと思いますね。

――昨秋リリーフを務めた経験が、今季に生きたことはありますか

 中継ぎのときは、前のピッチャーがピンチになればなるほど自分の出番がやってきます。そこの準備が難しいので、今季の自分は結構ピンチの場面も多いんですけど、中継ぎに負担をかけないような投球を意識してきました。中継ぎ陣にも分かりやすく、自分がしんどかったら投手コーチ(嵯峨悠希、商4=東京・早大学院)を通じて「きょうはしんどいから早めに準備お願いね」と言っておくと、中継ぎの人たちも準備がしやすいと思うので。去年の小島さん(和哉、平31スポ卒=現千葉ロッテマリーンズ)もそういう感じで言ってくれて、自分も準備がしやすかったので、そうしましたね。

――今季、早川選手がそのようにした場面はありましたか

 法政3回戦ですね。結構疲労がたまっていて、「きついかな」と感じながら投げていたので。「早め早めによろしくね」というのは試合前に伝えて、試合中にも「ぼちぼちかな」と伝えていました。

――5回でマウンドを降りたのはプラン通りだったのでしょうか

 (前週の)立教戦も1、3回戦で投げて、中4日で土曜日(法大1回戦)投げて、1日空いて(法大3回戦)というなかなかハードスケジュールで(笑)。肩が全然上がらないような状態だったので、あそこはもう投手コーチに伝えていましたね。

――開幕前には「野手とのコミュニケーションを図っていきたい」とおっしゃっていました。こちらはできていますか

 そうですね割と。特に内野手は声を掛けてくれて、自分の気持ちも整理できますし、自分も声を掛けてという感じで、ミスをつぶしていくというか。ミスが起きる前に、ミスが起きそうなことをつぶしていこうとやっていたので、割と声掛けはできていると思いますね。

――開幕前からこだわっていた球数に関してはいかがでしょう

 今年めちゃくちゃ多くて。7回で100球くらいがベストかなと思うんですけど、そこからプラス20くらい多いとなると、完封完投するには150球くらいになるので。リーグ戦をしっかり戦い抜くとなると、もう2、30球減らさないといけないと思います。あとは決め球をファウルにされて球数が多くなっている感じがするので、決め球をしっかり決め切らないといけないのかなと思います。

――決め球をファウルにされているのは、相手がその球をマークしているからなのでしょうか。それとも曲がりや落ち幅が足りていないのでしょうか

 両方あることはあると思うんですけれども、自分のコントロールミスが割と多めで。低めに要求されているのが若干高めに浮いて、ファウルになっているのが多いのかなと思います。

エースの条件

――今季ここまでの投球に点数を付けるとするならば

 …60くらいですかね。法政3回戦も点を取ってもらって、自分が取られてみたいな感じで。あとは打たれてはいけないピッチャーの三浦銀二(2年)に打たれてしまったりしたので。そういう無駄な失点が多いなと感じるので、そういう面で60点ぐらいかなと思います。

――40点は詰められそうですか

 本当に上を目指すのであれば、全試合完封するのが100点ですし。そういうところでは、まだまだですね。

――防御率は2.29でリーグ3位です。この数字はいかがですか

 もうちょっと詰められるかなと感じますし、防御率のタイトル獲るには、1点台じゃないといけないので。とくに明治1回戦とかはもっと抑えられたなと思います。

――対左打者の被打率が1割台なのに対し、右打者には2割後半を許しています。右打者に打たれている印象です

 やっぱり左バッターに対しては変化球の球種も多いですし、それくらいの数字が出てもおかしくないなと思うんですけれども、実は右バッターの方が自分的には得意だという意識があって。その中で打たれているということは、何だかんだ甘いコースに入ってしまっているのかなと思います。この間データを出してもらったんですけど、そのくらい打たれていたので、そこを詰めていきたいと思いますね。

――左打者にもチェンジアップを投げているのですか

 そうですね。たまにチェンジを使って。本当にバッターの頭にないところで使うというのを心掛けているので。1試合で1球投げるか投げないかくらいですね。

――慶大は右打者が活発ですが、右対策は考えていますか

 右を抑えるには、やっぱり左ピッチャーの持ち味であるクロスファイア(右打者内角への直球)を投げていかないと、踏み込まれてしまうので。右のクロスファイアを使ったり、高めに散らしたりしていかないと打たれるのかなと思っています。

――外一辺倒にはならないようにしたいと

 そうですね、それだと厳しいので。イン(コース)を見せつつ、外で勝負とか。その逆とか。やっていかないといけませんね。

――その中で、今季の投球を支えている球種はありますか

 カットボールとカーブですね。カーブはやっぱり真っすぐを生かすための(緩急をつける)球になっています。カットボールは、3ー1とかバッティングカウントのときに投げると、バッターは嫌な感じがすると思うので。カットボールの使い方はすごく生きていますね。

――今季、バッティングカウントではほとんど真っすぐを投げていないですよね

 そうですね。(春季)オープン戦の時からそれはずっと意識しています。真っすぐを待っているカウントで真っすぐを投げたらやっぱり打たれるので。そこは(捕手の)小藤さん(翼副将、スポ4=東京・日大三)と話して、フォアボールになってもいいから、カットボール投げて打ち損じてもらうか、見逃してもらおうと。それは成果として出ているので、だいぶいいかなと。右のインコースなら詰まらせてとか、左の外に投げるのならば引っ掛けさせて内野ゴロゲッツーとか。(途中まで)真っすぐと同じ軌道なので、真っすぐだと思ってそれを打ち損じてくれたらなと思います。

――チェンジアップは今季あまり投げていないのでしょうか

 そうですね。チェンジは割と対戦するみんなの印象が強いかなと思います。バット止まっている選手も多いですし、ヒットにする選手も多いので。藤野さん(隼大主将、立大4年)も低めのチェンジを全く振りませんでしたし。チェンジを捨てて、ストレートとかスライダーを狙ってくる感じがしました。その点カットボールはこれまであまり投げていなかったので、バッターの頭の中になかったのかなと思います。

――代わりに、ツーシームも投げているという話も以前伺いました。ツーシームはどういった目的で投げているのですか

 ツーシームもカットボールと同じで、途中まで真っすぐと同じ軌道でちょっと動いて沈む。これを打ち損じてくれれば、球数も減りますし、だいぶ楽になります。右バッターの外とかに投げると、真っすぐと同じ軌道で最後にすっと落ちるので、だいぶ楽になるかなと思います。

――今季は立大戦からツーシームを投げているとのことでした。法大戦でも使いましたか

 安本さん(竜二、4年)の時に使いました。やっぱり安本さんも何投げているのか分からない感じで、首をかしげていたので、そういう面では右バッターにだいぶ効果はあるのかなと思います。

――右打者に有効な球だと

 そうですね。たぶん右にしか使っていないと思います。

――今季は打撃も好調ですが、要因は

 最初はふざけて大谷さん(翔平、ロサンゼルス・エンゼルス)のモノマネをしていたんですよ(笑)。そしたら立教戦あたりから打ち始めて(笑)。ベンチの中でも「いいぞ!大谷!」みたいな感じでいじられているんですけど、ふざけてやったのがいい結果に結び付きましたね(笑)。

――軟式野球のような、球を引き付けて高いゴロの打球を打ち、内野安打にしている場面が多いと思います。これは意図的に行っているのですか

 そうですね。自分は割と足が速い方だと思うので、とりあえず転がせば暴投であったりとか何かしら起きると思うので。とりあえず(打球の勢いを)殺そうという意識で、たたきつけています。逆に強い打球になると、野手の正面とかにいってアウトにもなりやすいと思うので、あまり強く振らずに当てるだけのバッティングというのを意識していますね。

――チーム防御率(2.20)はリーグトップです。この数字に関してはいかがですか

 投手陣の粘り強さが出ています。その粘り強さには、監督(小宮山悟監督、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)に言われてきた『2球で追い込む』というのが生きているのかなと思います。監督はコントロールのいいピッチャーだったので、「フォアボール出すくらいなら、ヒット打たれる方がまだいいよ」というような感じなので、簡単に追い込めているのかなと思います。

――『2球で追い込む』という意識が、良い数字に結び付いていると

 そうですね。追い込むことができれば、バッターの打率もガーンと下がりますし。

――投手陣に限らず、チーム全体の現状をどのようにご覧になっていますか

 バッター陣もそんなに打てていないわけではないですし、ピッチャー陣もガンガンに打たれているイメージはないので、かみ合えば勝てると思います。かみ合うまでに時間はかかりますけれども、そこは継続していければいいかなと思います。

――今のチームにおいて、早川選手の役割はどこにあると思いますか

 やっぱり投手陣の中心でもあるので、発言とか行動というのをすごい気にしていて。バッターが援護してくれない時でも、頑張って辛抱強く投げたりだとか。バッターとか守備のせいにはしないように意識していますし、そういう言動がチームに影響しても困るので。そういう姿勢というのは、すごく大事にしています。他のピッチャーに対しては、みんなに声掛けて。審判のストライクゾーンはどうだとか、バッターの特徴はこうだとか、伝えています。

――新チーム始まってから初めての野球部のブログで、ランメニューの際に早川選手一人だけかなり前方を走っている姿が印象的でした。練習でも常に意識を高く持つようにしているのですか

 あれは新体制一発目の練習で。自分に監督が求めているのは、率先して背中で語るというか、そういう投手リーダーのような姿を期待していただいていると思うので、姿勢から自分で見せていかないといけないなと思います。言葉で言っても、右から左に流れてしまうタイプの選手もいるので、姿勢から見せていかないとなっていうのはありますね。


今季から左のエースナンバー『18』を背負う

――背番号『18』は板に付いてきましたか

 いや、まだ全然ですね…(苦笑)。勝てたりもしていますけど、守備のお陰という部分もありますし。やっぱりさっき言ったように完封完投がまだないので。18番は、まだあってないようなものだなと感じますね。

――開幕前は「プレッシャーはあるが、自覚は芽生えつつある」という話でした。そこから意識の変化はありましたか

 自覚は変わらずありますし、恥のないようなピッチングをしないとって思うと身が引き締まる思いがします。試合前もロッカールームにユニホームが掛かっているんですけど、背番号を見ると「よし、きょうもやってやるぞ」という気持ちになるので、『18』という背番号の偉大さを感じます。

――『早稲田のエース』になる条件は何でしょう

 圧倒するようなピッチャーである印象があります。そこを目指していかないとなと思いますし、有原さん(航平、平27スポ卒=現北海道日本ハムファイターズ)とかも大学で圧倒的な力を見せてから、上(プロ)で活躍しているので。そういう圧倒的な力を身に付けないとな、と思います。

――数々の偉大な投手を輩出してきた早大野球部ですが、その中で自分の理想に近い投手はどなたでしょう

 入学当初は同じ左ピッチャーの和田さん(毅、平15人卒=現福岡ソフトバンクホークス)みたいになりたいなという思いがすごくありました。けど、大竹さん(耕太郎、平30スポ卒=現福岡ソフトバンクホークス)が間近にいて。球数を少なくあれだけ抑えられていて、大竹さんみたいになりたいなと思いました。やっぱりいろいろな理想とするエース像が大竹さんにあったので。

――大竹選手のようになるべく、今のご自身の達成度はどのくらいですか

 30パーセントくらいですかね。やっぱり打たせて取るにはまだまだ球数が多いですし、大竹さんは8回を90球くらいで投げられるので、そう考えるとまだまだだなと感じます。大竹さんはリズム良く投げるので、打者も点取ってくれますし。大竹さんのリズミカルなテンポと球数の少なさは、まだまだ自分にはないかなと思います。

防御率1点台

――うれしい思い出も苦い思い出もある早慶戦だと思います。早川選手にとっての早慶戦とは

 やっぱり特別なものだということはすごく感じますし、リーグ戦じゃないような感じがあって。感覚的には甲子園決勝のような。本当に学校対抗という感じがあるので、緊張もものすごくしますし、特別な試合だと思います。

――今季の慶大打線の印象はいかがですか

 やっぱり2、3年生がチャンスメークして、4年生がしっかりと打っている印象があります。4年生の意地をすごく見せつけられているなと思いますね。郡司さん(裕也主将)にしろ、中村さん(健人)にしろ、柳町さん(達副将)にしろ。

――アンケートでは小原和樹選手(4年)も警戒していると書かれていました。この理由は

 小原さんが打つと慶応自体が乗ってきますし、元気印みたいな役目があるので。ムードメーカーの小原さんとか中村さんを打たせるとチームが乗ってくるので、厄介かなと思います。

――以前は「今の自分なら慶大を抑えられる」とおっしゃっていました。これは変わらずでしょうか

 そうですね。自分の力量ならば抑えられると信じているので、そこで一歩引いてしまうと付け込まれるくらいの勢いがあるので、自分も引かずにどんどん攻めていくことができればなと思います。

――早慶戦での個人目標はありますか

 やっぱり防御率は1点台まで持っていきたいですし、絶対に勝たないといけない試合なので、勝ちにつながるようなピッチングをしたいので、テンポのいいピッチングをしたいなと思います。

――最後に早慶戦に向けて、意気込みをお願いします

 やっぱり特別な試合なので、みんな緊張すると思うんですけど、その中でもいい緊張感を保ちながら、伝統の一戦を戦えるといううれしさも感じて、自分らしい、早稲田らしい野球ができればなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 石﨑開)


宿敵に投げ勝ち、真のエースとなります!

◆早川隆久(はやかわ・たかひさ)
1998(平10)年7月6日生まれ。180センチ、77キロ。千葉・木更津総合高出身。スポーツ科学部3年。投手。左投左打。球種や配球についても詳しく教えてくださった早川選手。掲載しても問題ないか伺ったところ、「載せてください。逆に対戦相手がこの記事を読んでくれたら」とのことでした。手の内を明かしても問題ないと語るその目には、確かな自信を感じられました!