海外女子メジャーの第2弾、全米女子オープン(5月30日~6月2日)がアメリカ・サウスカロライナ州のチャールストンCCで開催される。今春、高校を卒業したばかりの山口すず夏 今年は、13人の日本人選手が出場(成田美寿々、比嘉真美子、鈴木愛、岡…

 海外女子メジャーの第2弾、全米女子オープン(5月30日~6月2日)がアメリカ・サウスカロライナ州のチャールストンCCで開催される。



今春、高校を卒業したばかりの山口すず夏

 今年は、13人の日本人選手が出場(成田美寿々、比嘉真美子、鈴木愛、岡山絵里、天本遥香、勝みなみ、新垣比菜、上原彩子、横峯さくら、畑岡奈紗、山口すず夏、アマチュアの吉田優利、上野菜々子)。なかでも、注目は山口だ。

 山口の全米女子出場は、今回で2回目。前回は、2015年に日本地区予選会で2位に入って、日本人史上最年少の14歳での本戦出場を果たして話題となった。そして4年後の今回は、開催地アメリカで出場権を獲得した。

 山口は昨年末、今季の米女子ツアーの予選会に出場。厳しい条件を戦い抜いて36位となり、今季ツアー出場権を獲得し(出場試合は限定的)、今年2月7日には高校在学中のまま、米女子ツアーでプロデビューを果たした。その後、ツアーメンバーとして臨んだ今春の全米女子オープン予選会(4月24日/カリフォルニア州)を1位で突破(最後は3人によるプレーオフを勝ち抜いた)。2度目の本戦出場を決めた。

 2回目の全米女子オープンへ、山口のモチベーションも上がっている。

「前回は、中学3年生での出場。アマチュアで体格も小さかったので、飛距離も『もうちょっとほしいな』と感じました。あと、グリーン周りの芝生が難しく、『もっと小技を磨かないといけないな』と思いました。今回はプロとして出るので、前回できなかった予選通過はもちろん、しっかり上位で優勝争いをしたいと思っています」

 課題として挙げた”飛距離”と”小技”に関しては、プロになってから長足の進歩を遂げている。

 実際、米女子ツアーのドライビングディスタンス部分では一時期、ヤニ・ツェン(台湾)やレキシー・トンプソン(アメリカ)といった世界的なロングヒッターを抑えて、平均飛距離276.969ヤードで9位にランクイン(現在は同272.750ヤードで21位)。”小技”に関しても、現在世界トップの女子ツアーで平均パット数2位と、目に見える成果をきちんと出している。

「飛距離に関しては、高校3年間続けた週3回の朝6時からの自主トレで、メディシンボールなどを使った体幹トレーニングや、昨年5月から取り入れた『初動負荷トレーニング』などの成果かなと思います。

 平均パット数に関しては、グリーンを外す確率とも関係するので簡単には喜べませんが、パッティングの調子は決して悪くありません。今後、パーオン率を上げ、もっとバーディーチャンスにつけていければ、スコアも(それに伴って)ついてくるのかなと思っています。

 そのためには、ドライバーとアイアンのショットの精度をよくすることが、今後の課題になるのかなと思います」

 山口は直近の目標として「全米女子オープンでの予選通過と、上位で優勝争いに加わること」を挙げ、その後は「賞金ランキング50位以内に入り、来シーズンのシード権の獲得(賞金シード80位以内)」と公言する。

 そして、その次の目標は「来年の東京オリンピック出場」だ。

「高校を卒業して、いきなりアメリカのツアーでやろうと思ったのは、東京オリンピックが(来年)開催されるからです。今の私のロレックスランキング(女子世界ランキング)では、それ(ポイントの高いアメリカでやる)しかないので。

 まだまだランキングは下のほうですけれど、(ずっと)そこを目標にやってきています。状況は厳しいんですけど、そういうなかで結果を出すのが、本当に実力がある選手だと思うので、その目標に向けて、一試合、一試合”死に物狂い”でがんばっていきたいと思っています」

 その山口の可能性について、彼女がジュニア時代に在籍していた『ヒルズゴルフ トミーアカデミー』の主宰者である中嶋常幸プロはこう評している。

「すず夏は、体が強い子で、特に体幹がしっかりしている。女子の場合、体を右から左へと揺らせて振っていくスイングが多いが、彼女は体幹がしっかりしているので、その場で軸を中心にしてタテ振りでパーン! と打てるので、飛距離が出る。アカデミーの女子では、一番の”アスリート娘”だね。

 肉体的なポテンシャルは(畑岡)奈紗も高いけど、すず夏はさらにいいね。何でもこなすし、あといいのは、負けず嫌いなところ。今後が楽しみだね」

 今春、高校を卒業した時には、山口は「これからは『女子高生プロ』じゃなく、プロとしてまさにゴルフが仕事になる。アメリカは移動費もかかるので、しっかり稼がないといけないと思っています」と決意を語った。その決意を、すぐさま結果として出したのが、全米女子オープンの予選会だった。

「予選会のプレーオフが始まって、ティーショットを打ち終わって歩いている途中で、『相手の2人はアマチュアだけど、私はプロなのだから、ここで”プロの意地”を見せてやろう』と思ってプレーしたんです」

 これからの数カ月、東京五輪の出場権獲得をかけた壮絶な戦いが始まる。それに向けて、山口は「死に物狂いで挑む」と言う。

 全米女子オープンでは、そこに希望をつなぐ結果を残せるか、注目である。