開幕して2カ月が経ったが、ヤクルトの高卒2年目・村上宗隆の”成長力”には驚かされるばかりだ…

 開幕して2カ月が経ったが、ヤクルトの高卒2年目・村上宗隆の”成長力”には驚かされるばかりだ。なにより、チーム早出練習でほかの選手たちと一緒にバットを振り込み、そこから個別での守備練習。さらに、ここまで全試合に出場し、ゲームが終わればベンチ裏で素振り、その”頑丈な肉体”と”強靭な精神力”を見せつけられると、思わず「すごい!」と言わざるを得ない。



ここまで開幕から全試合に出場しているヤクルト・村上宗隆

 あらためて村上に感想を伝えると、「僕は全然すごいと思ってないです」と淡々と答えた。

「プロに入れば年齢は関係ないですし、やっている以上はレギュラーとして試合に出続けたいですし、弱音というか、練習が厳しいから(試合で)集中できないとかはまったくないです」

 今年2月の沖縄・浦添キャンプの終盤、村上は「まずは開幕一軍、次にレギュラーを目標としています」と話していた。その時、今の自分の姿をどの程度、思い描いていたのだろうか。

「僕はいつもで『できる』と信じてやっているので。最初からダメだという気持ちはまったくないですし、そのなかで今の姿を思い描いていたというよりは、とにかく今の僕は1日1日が大事ですので……。1試合1試合、目の前の1打席をしっかり集中してやっていこうと。そういう意味で、先を見ることなく、しっかりやってこられていると思います」

 たくさん練習量をこなし、一軍の試合に出るなかで、新たに自分に求めるものもできてきたのではないだろうか。

「技術的なところでは、『ずっと高みを目指して……』じゃないですけど、そこに向けての目標はあるのですが、今は試合を経験することで、気持ち的な部分で求めていることはあります。チャンスで打てなかった、ヒットが打てなかった……そういう悔しさ、気持ちの部分というか、次はこういう気持ちで挑んでいこうというように、そういうことを試合で求めていることはあります」

 5月27日現在、村上の成績は以下のとおりである。

50試合/打率.238/本塁打12/打点36/三振51/出塁率.340/失策11

 本塁打はリーグ4位タイ、打点はリーグ2位と堂々の成績ではあるが、打率は規定打席到達者のなかで2番目に低く、失策数はリーグワースト。まだまだ課題も多い。

 石井琢朗打撃コーチに、ここまでの村上について聞いてみた。

「19歳にして、早くもシーズン2ケタのホームランを打っていますが、現状で満足してほしくないですよね。これは本人にも話しています。覚えることはまだまだありますし、それだけの伸びシロがあるわけですから。『いい4番打者』になるために、脇を固める選手の気持ちがわかるようになってほしい。ここまではそういうことを踏まえて、野球選手としての”幹”を太くしていこうと取り組んでいるところです。

 2年後、3年後、5年後、10年後に生きてくれたらいいとやっています。そういう意味で、僕のなかではまだ評価する段階ではありません。みなさんが高い評価をしてくれていますが、シーズンが終わって、それなりの数字が残っていたら評価をすればいいのであって、僕らとしては、今はそっとしておいてあげてほしいところです」

 今の村上を見ていると、理想的な”育成”としてのシーズンを過ごしていると思う。失敗もたくさんあるが、実戦のなかで着実に経験値を増やしているからだ。宮本慎也ヘッドコーチにそのことについて聞くと、静かな口調でこう話してくれた。

「もちろん、チームの中心選手として一本立ちさせないといけないのですが、バッティングはよくなっているところもありますが、うーん、全体的に見れば……そこの答えというのは非常に難しいですね。はっきり言ってしまえば、(村上の失策が多いため)ピッチャーがかわいそうですよね。ファインプレーしろとは言ってないですし、まずひとつのアウトを確実にとっていこうと。僕らもそう指導していますし、彼自身もそこを感じてほしいですよね」

 宮本ヘッドは「甘やかすつもりはないですし、本人にも直接話しています」と言って、こう続けた。

「みなさんが村上のことを”大物”と言ってくれていますけど、一番怖いのはそこで調子に乗ってしまうことなんです。まだ19歳なので仕方ない部分はありますが、もっと謙虚に、もっと素直に……ということですよね。それができるようになれば、技術はどんどん伸びていくと思いますよ」

 村上は4月23日からチーム早出練習でほかの選手と一緒にバッティングをこなし、個別で守備練習にも取り組み始め、それは今も継続されている。5月25日にはバッティングに加わることなく、宮本ヘッド、土橋勝征守備・走塁コーチとひたすらスローイング練習を繰り返した。村上はその前日の試合で2つの送球エラーをおかしていた。コーチたちも一緒に、ひとつひとつの動きを丁寧に説明しながらの50分だった。

 守備に関して「練習を続けることで成長している手応えはあるか」と村上に聞くと、きっぱりこう言い切った。

「いえ、エラーも多いですし、守備の面ではまったく成長していないと思います。でも、できると信じて、これからも練習するしかないと思っています」

 冒頭でも触れたが、村上はここまで大きなケガもなく、チームの早出練習に参加し、全試合に出場。ゲームが終わればベンチ裏で素振りを続けている。前田真吾トレーナーは、村上の丈夫さについて、こう説明してくれた。

「もちろん疲れはあると思います。これは時期的なこともあるので仕方のないことです。まだシーズンは長いですが、このチームは練習量が多く、去年の秋季キャンプ、今年の春季キャンプで相当の数を振ってきました。それが野球をするうえでの体力的な下地となり、練習の積み重ねが体の丈夫さになっているかと思います。村上はまだ19歳で、しかも早生まれですが、もう体ができている。プロとしての体の素材、資質はあると思います。瞬発力など、まだまだ発展途上なところもあり、この先、伸びていく要素は多いです」

 そして最後、村上にこんな質問をした。

―― 練習、試合とタフな日が続きますが、充実感はありますか。

「毎日、野球のことばかり考えてやっていますし、充実感はものすごくあると思います」

 そう語る村上の表情にはあどけなさが残り、「やはりまだ19歳なんだ」と安堵した。

2年後、3年後、5年後、そして10年後……どんな”成長曲線”を描いてくれるのだろうか。まずは今シーズン、どんな成績を残してくれるのか楽しみでならない。