文=丸山素行 写真=日本バスケットボール協会、バスケット・カウント編集部

銅メダル獲得「最低限のところはクリア」

3人制バスケットボール『3x3』のアジアカップに臨んだ女子日本代表は、3位決定戦でモンゴルを破り、銅メダルを獲得。32得点を挙げた伊集南は大会ベスト3に選ばれた。

5月26日の決勝トーナメントでは、1日に3試合が組まれるハードスケジュールをこなした。「もともと3x3がすごくハードなゲームで、タイトなスケジュールな中でやっていかなきゃいけないのは聞いていました」と、ある程度の覚悟は持っていたと伊集は言う。

だが、準決勝のカザフスタン戦で宮下希保が準決勝で足を痛めたことで、3位決定戦のモンゴル戦は、交代要員なしでの戦いを強いられた。それでも、「最初から思い切りいこう」とエンジン全開で試合に臨み、見事銅メダルを獲得した。

それでも、帰国した伊集の表情は複雑なものだった。「自分の目標は決勝に行って勝つことだったので。準決勝で日本らしいバスケができなくて負けたのが残念でした。最後の試合は勝ち切って銅メダル。最低限のところはクリアできたと思っています」

伊集が悔やんだカザフスタン戦は、序盤にリードするも中盤に離されて、そのままタイムアップを迎えた。「最初の入りが甘く、ハッスルや日本のタフさを強く出させなかったです。それで、相手が行けるかもしれないって勢いづかせてしまって、差を縮められませんでした」

カザフスタンはうまさと高さを兼ね備えたチームで、特に高さには苦労した。だが「日本の良さは機動力だと思っていて、スピーディーかつタフなバスケットが10分間できるのは日本だけ」と伊集が言うように、高さの不利を俊敏性でかき消した。

それでもわずかに届かず、「短い時間の中でずっとハードにやらなければ日本の勝ちは見えてこないと思いました」と、継続することの難しさを実感した。

「この大会に呼ばれた4人がこれからの3x3を作っていく」

伊集が言うように、機動力は日本の大きな武器である。また緻密さやシュートの正確性も持ち味と言えるが、一度流れを失うとその長所も目立たなくなってしまう。伊集はそれを「3x3の面白みの一つ」であり、「リズムとか流れが繊細な競技」ととらえている。

「流れが悪いと、3人の動きが全く合わなくなって、疲れも倍になってきちゃいます。良い時は何をしても良いので、やっぱり悪い時にどうするか。10分しかない時にどうするのか。それはハードなディフェンスからプレッシャーをかけて良いオフェンスに繋げることを日本はやっていくしかないと思っています。監督の指示がないので、4人がゲーム状況、ゲームプランを見ながらどれだけできるかだと感じています」

時には、高さのミスマッチを承知で伊集と篠崎澪を同時起用し、スピードのミスマッチで攻めた。「篠崎と自分の機動力はアジアで絶対一番上だと思っています。特にニュージーランドは去年のアジアNo.1のチームで、そこを突いて実際に勝てたのは自信になりました」

わずかな間に様々な経験をしてステップアップした伊集は、大会ベスト3に選出された。伊集は「この大会に呼ばれた4人がこれからの3x3を作っていく」と、今大会に並々ならぬ思いで臨んでいたという。

「3月から合宿で素晴らしい選手たちと競い合ってきました。私たちが良いスタートを切れるように、日本の機動力やタフさが通用するというのを証明するためにも、私たち4人の働きは大事だったと思います。本当は金メダルを持ってきて、自信を持って証明できたと言いたかったですが、自信には繋がる大会になりました」

初の3x3にして銅メダル獲得し、ベスト3にも選出された伊集。主戦場はWリーグだが、3x3でも通用することを証明した、有意義な大会となった。