PROFILE 本川紗奈生(もとかわ・さなえ)1992年4月2日生まれ、北海道出身。ドライブを一番の武器として、速攻や3ポイントで得点を稼ぐシューティングガード。札幌山の手高時代は日本代表の町田瑠唯、長岡萌映子とともに高校3冠を獲得。2年連…

PROFILE 本川紗奈生(もとかわ・さなえ)1992年4月2日生まれ、北海道出身。ドライブを一番の武器として、速攻や3ポイントで得点を稼ぐシューティングガード。札幌山の手高時代は日本代表の町田瑠唯、長岡萌映子とともに高校3冠を獲得。2年連続Wリーグのベスト5を受賞している。愛称はイチ。

『女・比江島!?』からの進化

「ズバッ!」――まるで、音が聞こえてくるかのような鋭さである。

本川紗奈生のドライブは強くて速い。その特長は一歩目のストライド(歩幅)が大きいだけでなく、二歩目も速くて大きなストライドであるため、ディフェンスが追い付けないのだ。その鋭いドライブと速攻は、昨年「勢い」をスローガンに掲げた日本代表そのものを象徴し、アジア選手権2連覇の原動力となった。縦への突破でゴールに向かう姿は、まさしく日本の切り込み隊長。フィジカルコンタクトを厭わずにゴールに向かうことができる点も心強い。

ポイントガードの吉田亜沙美との高速ガードコンビはいまや日本の大きな武器になったが、本川がこのスタイルに自信を持ったのは、昨年のアジア選手権に向けての合宿中だった。本川は昨年が日本代表初選出であり、日本としてもこの戦い方がすぐに出来上がったわけではなかった。吉田のパスが前へ前へと飛ぶことで、それに合わせて走っていたところ「このチームだとガンガン走れるし、なんて楽しいんだろう」と、走り込むコツをつかんでいったのだ。

遡ること2年前の2014年――。本川はB代表として韓国・仁川で開催されたアジア競技大会に出場し、銅メダル獲得に貢献した。このときの本川の役割は、時おりボール運びやゲームメイクを行い、得意の1対1をする1番と2番を兼任するガードだった。そのプレースタイルは、まるで男子代表の比江島慎(シーホース三河)のようだった。

本人に「比江島選手に似ていると思うんだけど、見たことある?」と聞くと、即答で「自分で言うのも何ですけど、比江島選手を見た時、私のプレーにすっごく似ていると思いました。あのプレースタイル、好きです!」と返ってきた。アジア競技大会は男女が同時期に行われる大会なので、男子代表の試合を初めて見た本川は「日本の男子にもドライブをしてスカッとする選手がいるんだな」と思ったという。

しかし、それから1年もしないうちに、本川はさらにドライブに磨きをかけ、アジア選手権でチームハイとなる平均13.3点を叩きだすスコアラーに躍り出たのだから驚きである。今は完全に2番(シューティングガード)になったので、『女・比江島』というわけではないが、それでもドライブの強さは似ている。

年々進化する本川は、オールラウンドな能力を身に着けるとともに最大の武器であるドライブに磨きを掛け、ステップアップを遂げてきた。

年々、プレースタイルが進化する理由

本川は非常に意志の強い選手である。昨年、日本代表1年目でまだ12名を決定していない時でも、「絶対に12名に残ってオリンピックの切符を取る」、「オリンピック選手になります」と言い切っていたほどだ。年々進化するプレースタイルは、その意志の強さから自分のビジョンを明確に描き、「毎年、目標とするテーマを決めて実行してきたから」なのだと明かす。

そのテーマとは、シャンソンに入団した1年目は「怖い物知らずでチャレンジ」、2年目は「成長する」、3年目は「責任感」、4年目は「自覚」、5年目は「4年間で土台を作ったものをレベルアップさせる」というもの。毎年、掲げたテーマに合わせ、到達するためにはどんな練習をしたらいいのかを考えながら取り組むことで、ステップアップしてきた。

明確なテーマを掲げた練習の成果は、1年目はドライブができるようになり、2年目はドライブからのジャンプシュートを打ち、3年目はボール運びへの適応やアシストが増えてガードのプレーができるようになり、4年目と5年目は3ポイントシュートを含めてオールラウンドにこなせるようになった。高校3冠を達成した札幌山の手高時代は、ハイポストからのドライブやステップインを得意とする4番(パワーフォワード)的なプレーが多かったことを考えれば、この5年間での変貌と進化は目覚ましい。

そして昨シーズンは、シャンソンでもエース級の働きをしたといっていい。「全チームの中で一番の練習量をしてきた」と自負するように、新しく就任したチョン・ヘイルヘッドコーチのもとで、ドライブや3ポイント、スティールにと暴れまくるエース本川が誕生。チームをWリーグベスト4に導き、2年連続ベスト5を受賞した。

しかし――である。

もともと、シーズン前から足に痛みを抱えていたこともあり、その縦横無尽な活躍は知らず知らずのうちにオーバーワークとなってしまい、プレーオフ・セミファイナル3戦目の試合中に限界を迎える。足の腱を痛め、足底筋膜炎と診断されたのだ。

足底筋膜炎のケガを負ってからコンディションを取り戻すのに苦労し、弱気にもなったが、リオにはきっちり間に合わせた。

6年目のテーマを求め、リオで走り続ける

いつでも強気な姿勢を見せる本川だが、足のケガは彼女から笑顔を奪った。5月のオーストラリアとの強化試合やヨーロッパ遠征が続く中での本川は、リハビリと調整練習が多かったことから、「毎日が不安でたまらず、人生で一番の弱気になっています」と取材で漏らしたことがあった。

そんな彼女が前向きになれたのは、日々、足の状態と向き合いながらトレーニングをしていくことで、「調整の持って行き方ってあるんだな」と、コンディションを上げる調整法を発見している自分に出会えたからだ。ケガからのコンディション作りも、選手としてのチャレンジであると考えれば、前向きに切り替えられるようになっていた。

7月上旬のセネガルとの国際強化試合では、かなり前進した本川らしいプレーでファンの期待に応えた。

「足の痛みはまだ少しだけあるけれど、ようやく自分のプレーが出せるようになりました。オリンピックでも自分のプレーを出して、世界中の人に日本のバスケを見てもらいたい。私が走ることで日本のリズムを作っていきます」

Wリーグ6年目を迎える今年、毎年掲げているテーマは何かと5月に尋ねたとき、「今年は我慢……かなあ」と言った後に、すぐに撤回して「もう少し考えます」と笑顔を見せた。リオから帰国後、ぜひ聞いてみたい。ケガと向き合いながらリオの舞台に立ち、たくさんの発見のもとで戦うであろう、日本の切り込み隊長の6年目のテーマを。 

前向きに気持ちを切り替えた本川は「私が走ることで日本のリズムを作っていきます」という言葉でリオでの活躍を誓ってくれた。

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