「プレミアリーグも、カップ戦も、マンチェスター・シティが今後10年、タイトルを獲得してもおかしくない」 そう話したの…

「プレミアリーグも、カップ戦も、マンチェスター・シティが今後10年、タイトルを獲得してもおかしくない」

 そう話したのは、元イングランド代表で解説者を務めるクリス・ワドルだ。5月18日に行なわれたFAカップ決勝で、マンチェスター・Cはワトフォードに6-0と圧勝。プレミアリーグとリーグカップに続き、FAカップでも頂点に立って「国内3冠」を成し遂げた。



史上初の国内3冠を達成したマンチェスター・シティ

 1998-1999シーズンにマンチェスター・ユナイテッドがチャンピオンズリーグ、プレミアリーグ、FAカップのタイトルを獲得して「トレブル」を達成しているが、イングランド国内での3冠は史上初。しかも、プレミアリーグとリーグカップは、昨シーズンに続いて2連覇となった。

 つまり、直近2シーズンにおける計6つの国内大会のうち、5つのタイトルを獲得したわけだ。イングランドは世界最高峰リーグと謳われ、各クラブ間の競争も激しいだけに、ジョゼップ・グアルディオラ監督が成し遂げた偉業は最大級の称賛に値する。

 もちろん、プレミアリーグでマンチェスター・Cの背中を追いかけたリバプールの存在も、今季を語るうえで忘れてはならない。獲得ポイントは、マンチェスター・Cの98に対し、リバプールは97。合計195ポイントは、1位と2位の合計ポイントとしてはプレミア史上最多となった。

 元イングランド代表のアラン・シアラーは、「今シーズンは信じられない1年だった。マンチェスター・Cとリバプールの争いは、1992年のプレミアリーグ開始以来、最高の戦いで見ごたえがあった」と述べ、マンチェスター・Cとリバプールの2強時代に突入したと語った。

 一方、マンチェスター・Cの強さを目の当たりにしたワドルは、「私が見てきたなかで最高のクラブ。ただただ、すばらしい」と譲らず、元イングランド代表FWの解説者のイアン・ライトも、「これから10年はシティが主役」と口を揃えた。リバプールも着実に力を伸ばしているだけに、来シーズン以降のタイトルの行方はわからないが、少なくともマンチェスター・Cが優勝争いの本命であることは間違いない。

 また、マンチェスター・Cが見せたプレースタイルにも、賛辞の言葉が寄せられた。

 元イングランド代表FWで現在テレビプレゼンターのガリー・リネカーが「タイトルを獲得しただけでなく、美しさを伴った戴冠だった」と表現したように、マンチェスター・Cは流麗な攻撃サッカーで観る者すべてを魅了した。ゴールまでの道筋があらかじめデザインされていて、そのイメージをフィールドプレーヤー全員が共有しているかのような一体感は、他の追随を許さなかったように思う。

 そのなかで、最大の功労者を選手からひとり挙げるならば、ポルトガル代表MFのベルナルド・シウバになるだろう。

 フィールドプレーヤーとしてはチーム最多となる「国内リーグ36試合」に出場。本職の両翼に加え、今シーズンはインサイドMFとして新境地を切り開き、リーグ連覇に大きく貢献した。

 とくに、昨季リーグ優勝の立役者だったベルギー代表MFのケビン・デ・ブライネの穴を埋めた功績は大きい。

 昨シーズンのデ・ブライネは、インサイドMFとしてチーム最多となる37試合に出場。リーグ・アシスト王やPFA(プロサッカー選手協会)選出のベストイレブン、チーム最優秀選手賞などを獲得した。目を見張るようなロングレンジのスルーパスや鮮やかなミドルシュートで、昨シーズンはマンチェスター・Cを引っ張った。

 ところが今季は、W杯ロシア大会で蓄積した疲労の影響は大きく、開幕早々にひざのじん帯を痛めてシーズン前半戦をほぼ棒に振った。後半戦に入っても、くるぶし、大腿部、ハムストリングの順に痛め、今季の出場数はわずか19試合に激減したのだ。

 本来なら、エース不在の影響を真正面から受け、チームにブレーキがかかってもおかしくない。だが、インサイドMFとして存在感を放ったB・シウバの活躍で、中盤の不足感はまったくなかった。

 試合後の取材エリアでも、必ずといっていいほど立ち止まり、記者の質問に真摯に対応するB・シウバの姿があった。真面目でひたむきな性格は、常に勝利と最高のパフォーマンスを選手に求めるペップの理想像とも重なる。「昨シーズンと同じレベルを維持できた」とグアルディオラ監督が語った背景には、キャリアベストと言えるパフォーマンスを披露したB・シウバの活躍があった。

 もちろん、国内3冠の理由はそれだけではない。プレミアリーグにおいて5シーズン連続で得点を20点台の大台に乗せたセルヒオ・アグエロ、17ゴール&10アシストでアタッカーとしてひと皮むけたラヒーム・スターリングの貢献度も大きかった。

 それでも、指揮官のグアルディオラ監督は手綱を緩めようとはしない。彼の視線は、すでに来シーズンに向けられている。

「監督として対戦してきた相手のなかで、こちらが『ワォ』と唸り、声をあげたチームがふたつある。ひとつは、ルイス・エンリケ監督が率いたバルセロナ。当時はネイマール、リオネル・メッシ、ルイス・スアレスの3人がいた。

 そしてもうひとつが、今シーズンのリバプールだ。今季の我々は、昨シーズンと同じレベルを維持していた。つまり、昨シーズンとの大きな違いは、リバプールが成長したことにある。彼らと競い合うことで、こちらも成長できた。

 そして、来シーズンの我々は、もっとよくなる。もっと強くなると、確信している」

 シーズン中、「マンチェスター・Cの弱点」と指摘されたのが、34歳のアンカー、フェルナンジーニョのバックアッパーの不在。高齢によりフル稼働は難しく、ケガで度々離脱したように、彼を支える守備的MFが手薄だった。

 ただ、来季に向けてマンチェスター・C首脳陣はすでに動いており、アトレティコ・マドリードに所属するスペイン代表MFロドリを補強することで、内定を取りつけているとの報道もある。

 来シーズン、リバプールの追走をかわしてリーグ3連覇を達成できるか。そして、今季はベスト8で敗退した悲願のチャンピオンズリーグ制覇を実現できるか。約3カ月後に始まる新シーズンが、今から待ちきれない。