文=丸山素行 写真=野口岳彦

「ムービングでのシュート」を武器に生き残りへ

女子日本代表は4月下旬に始動し、まずは5月31日と6月3日に行われるベルギーとの国際強化試合、三井不動産カップに向けて合宿を行っている。

ユニバーシアードやジョーンズカップ(U-24)など世代別での代表経験が豊富な林咲希は、今年度の代表候補26名に選ばれ、この三井不動産カップへ向けて18名に絞り込まれた中にも残った。昨年のアジア競技大会に日本代表として参加した林だが、昨年はAチームがワールドカップに参加し、Bチームがアジア競技大会に回る形だっただけに、「Aに漏れた人がBになるという感じだったので。その落ちた感じは覚えています」と、代表サバイバルに闘志を燃やしている。

第3次強化合宿に参加する18名のうち、林を含む6名がシューティングガードと競争は激しい。この激戦区の争いを生き抜くには、個性を最大限にアピールする必要がある。世代別代表ではスコアラーとして活躍していた林は、自身の強みをこのように話す。

「ここではムービングでのシュート(オフボールからのキャッチ&シュート)です。あと、カッティングのタイミングはすごく分かります。トム(ホーバス)さんの言っていることも分かるし、タイミングも分かるので、それは自分にとっては強みかなと思います」

いくらシュートタッチが良くても、相手のマークを外せなければ、シュートを打つ機会は得られない。そのため、林が強みに挙げたボールをもらう動きやタイミングは、どんな場面でも貴重な武器となる。だが、「今まで一緒にやっていないグループの人もいるので、そこでシュートセレクトが噛み合っていない部分が多いと思います。合わないのが正直なところ」と、現在はオフェンスでの連携に苦労しているという。

だがそれは、「オフェンスがディフェンスに負けている」とトムヘッドコーチが話すように、ディフェンスの強度が高いことにも起因する。「お互いにやることが分かってるというのもありますし、それはあるかもしれないです(笑)」と林が同調するように、日本のディフェンスの強度や精度は非常に高い。この中で結果を残すことができれば、自ずとそのスキルは世界へ通用するレベルになっていくはずだ。

ベンチメンバーながら選出された稀有な存在

日本代表メンバーの多くは、それぞれのチームで主力を務める選手ばかり。それでも林は「去年そんなにJXで出てないんですけどね」と自身が語るように、所属するJX-ENEOSサンフラワーズではベンチメンバーであり、1試合平均のプレータイムも約10分にとどまるなど、リーグで目立った活躍をしているわけではない。それでも林が招集されるのは、ホーバスヘッドコーチの目指すバスケにフィットするからに他ならない。

「代表でのプレーや自分のスタイルに合うというのを、トムさんが見ててくれて呼んでくださったんです。セレクションがあってそこでアピールできたのが大きかったですね」と、林は言う。そして、「トムさんは3ポイントの確率だったり、パスワークだったり、きれいなバスケットが好きなので、そこに合わせられるような動きをしないといけないです。得点力も大事になると思うから、得点に繋がるシュートセレクト、シュートなのかドライブなのか、パスしたほうがいいのかっていう判断を大事にしていきたい」と、生き残りへ気合十分だ。

今でこそレベルの高い環境に身を置き、充実した表情を見せる林だが、プレータイムをなかなか得られなかったJX-ENEOSでは「メンタル的に落ちそうな時期はありました」と、正直な思いを語る。

「選手なら試合に出たいですし、出れないから練習するんですが、それでも出れず。どうせ出れないならやらなくてもいいかって考えになってしまうこともあるじゃないですか。でもそういうのをなしにして、自分がやるべきことを毎日考えながら、自分の持ち味を消さないように自主練をやっていました」

腐ってもおかしくはない状況でも、林の心は折れなかった。「メンタルが強いですね」と振ると、「そうかもしれないですね。今ここにいて、ここでできていることを楽しんでやろうかなっていうのが一番です」と、林は笑った。

持ち味であるシュート力やドライブ力に加え、ホーバスヘッドコーチが目指すバスケットへの高い理解力。これらの強みに加え、強靭なメンタルを武器に、林は代表サバイバルに挑む。