写真提供:共同通信■高卒2年目最速38試合目で2ケタ本塁打到達 初夏の日本プロ野球で最も話題を集め、存在感を見せている若武者が、ヤクルトの高卒2年目、19歳の村上宗隆である。 「6番・サード」で開幕スタメンを果たすと、シーズン初安打までは1…

写真提供:共同通信

■高卒2年目最速38試合目で2ケタ本塁打到達

 初夏の日本プロ野球で最も話題を集め、存在感を見せている若武者が、ヤクルトの高卒2年目、19歳の村上宗隆である。

 「6番・サード」で開幕スタメンを果たすと、シーズン初安打までは12打席、シーズン初本塁打までは21打席を要したが、守備位置をファーストに代えた4月9日の広島戦で1本塁打3安打と爆発すると、4月12日の巨人戦から6試合連続ヒットで計3本塁打。5月に入ると3試合1本ペースでアーチを放ち、5月11日の巨人戦で2ケタ到達の今季10号本塁打を放った。

 2リーグ制以降、高卒2年目以内に2ケタ本塁打を放ったのは史上18人目(表1)。それだけでも優れたものだが、チーム38試合目での10号弾は1953年の中西太を抜いて高卒2年目では史上最速。村上は2000年の2月生まれのため、史上初となる10代での本塁打王誕生も現実感を持って期待が高まっている。

■将来の「日本の4番」として期待も、まだまだ課題はある

 5月14日の時点で39試合に出場して129打数31安打の打率.240、10本塁打、27打点。村上のバッティングにおいて秀でた部分は、すでに自分のスタイルを確立させている点だろうか。

 左打席からの鋭いスイングで、内角球を苦にせず、逆方向へ本塁打を打て、その飛距離は天性のものがある。そして体の軸がブレないそのバッティングフォームは、筒香嘉智(DeNA)に瓜二つ。「筒香2世」との別名も持っている村上には、燕ファンだけでなく、多くのプロ野球ファンが「将来、日本の4番になれるのか」と注目し、期待を寄せている。

 しかし、そう考えた時、まだまだ改善すべき点は多くある。一つ目が「得点圏打率」。村上の今季のランナー状況別打撃成績(表2)を見ると、得点圏打率.235(34打数8安打)に留まっている。

 通算打率が.240ということを考えると、決してチャンスに弱いという訳ではないが、4番になるためには全体的な打率アップを目指す中で、得点圏での勝負強さをより強く意識し、改善させなければならないだろう。

 加えて、弱点をなくすことも重要になる。具体的には「球種」だ。今季の村上の球種別打撃成績(表3)を見ると、シュート、カットボールには強さを見せているが、スライダーは打率.188(16打数3安打)で、フォークが打率.067(15打数1安打)。チェンジアップにも打率.100(10打数1安打)と、特に“落ちるボール”に対応できていない。

 ちなみに“本家”である筒香の今季の球種別打撃成績(表4)を見ると、スライダーは打率.368(19打数7安打)で、フォークが打率.500(8打数4安打)、チェンジアップは打率1.000(4打数4安打)と、村上とは対照的だ。

 得意とする球種が異なること自体は仕方なく、村上の方がメジャーで主流のムービング系のボールを得意としている点は、対世界とした時により期待が持てる点もある。だが、そうは言っても打率1割台および1割を切るような球種があっては、打者としてまだまだ未完成と言えるだろう。


■2016年の「2冠」筒香と2004年の「3冠」松中との比較

 さらに詳しく比べてみたい。比較対象は、今季の筒香と、本塁打&打点の2冠に輝いた2016年の筒香、そして平成唯一の三冠王が誕生した2004年の松中信彦にしたい。村上、筒香、松中、3人とも左のスラッガー。

 公称サイズは、村上が188センチ、97キロで、筒香は185センチ、97キロ。そして松中信彦も183センチ、97キロ。村上にとっては、筒香の成績に並んだ後に目指すは、松中以来の三冠王であるべきだ。
 

 成績的に今季の村上が2016年の筒香、2014年の松中よりも劣るのは当然だが、気になるのは打ち取られ方。各年の凡打内訳(表5)を見ると、三振数が多いのは一目瞭然だが、それと同時にゴロの割合が多いことも分かる。

 村上にとっては「フライボール革命」を目指すことが、今後の打率アップと本塁打増につながることになるはずだ。

 さらに加えると、4番として試合を決める一打をどれだけ打てるかどうか。打席別成績(表6)を見ると、今季の村上の第3打席、第4打席の打率の低さが気になる。反対に今季の筒香は第3打席、第4打席で打率4割以上をマークしている。

 さらに2016年の筒香は第3打席に打率.415、15本塁打、40打点という驚異的な数字を残し、2004年の松中も第3打席に4割を超える打率を残している。先発投手の立ち上がりを攻めることも重要だが、4番としては中盤から終盤にかけて、試合の勝負所でどれだけ仕事をできるか。そこで働ける者こそ、真の4番と言えるのかも知れない。

 いずれにせよ、まだ高卒2年目なのだ。改善すべき点は多く、まだ未完成の部分はあるが、それでも周囲に大きな期待を抱かせる“モノ”を、熊本生まれの19歳は持っている。このスター性を、どう磨き、どう輝かせるか。村上宗隆のプロ野球人生は、まだ始まったばかりだ。

※データは2019年5月14日時点

データ協力:データスタジアム
文=三和直樹