文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

「場数を踏んでいる自分がリーダーシップを」の思い

バスケットボール女子日本代表は、開催国として出場の決まった東京オリンピックを見据えつつ、まずは今年最初の試合となる5月31日と6月2日の三井不動産カップ、ベルギーを迎える国際強化試合に向けたチーム作りを進めている。

オリンピックという目標を1年後に控えているだけに、どの選手も気合に満ちている。中でもリオ五輪経験者は、強い気持ちが前面に出ているように感じられる。長岡萌映子もその一人。まだ選手選考の過程にあるが、実力も実績も十分。代表に選ばれ続けるのは最低限のノルマで、リーダーシップを取ってチームを良い方向に導くのが今年の代表活動における長岡の目標だ。ヘッドコーチのトム・ホーバスも「経験のある選手が若手にアドバイスする形で、選手の間で経験を伝えてほしい」と期待している。

「昨年は年齢が上の選手が少なかったので、自分やアース(宮澤夕貴)が初めてその立場になりました。それでも自分にとっては初めてで、若手に伝えられていない反省がありました。それがある分、今年はやらなきゃいけないと思っています。私は高校の頃から日本代表に入ってそれなりに経験も積んでいます。場数を踏んでいる自分がリーダーシップを取らなきゃいけない、それができる立場だという気持ちが自分の中ではあります」

もともと、長岡はチームを引っ張る役割に慣れている。「代表だからと意識するんじゃなく、普段のチームのままやればいいと思っています。結構言える性格だし、自然体でやります」

「シックスマンとして出てバスケットを変えるイメージ」

リオ五輪が終わってトム・ホーバスがヘッドコーチになり、トランジションに加えてパッシングと、日本代表のバスケはこの3年間ブレることなく同じスタイルを突き詰めている。そのスタイルの中でオールラウンダーの長岡は、自分のどんな特長を生かしていくのか。何でもできる選手だけに、そのイメージを持っておくことは大切だ。

「トムといろんな話をしていますが、私には何番という役割がなくて、3番もやるし4番もやります。今はセンター陣が少なくて経験のある選手はリツさん(髙田真希)しかおらず、自分も4番に入っていますが、3番と4番の両方でイメージしています。どちらのポジションで、どんな状況で出るのかを頭の中でイメージして、試合で表現するのが自分のアピールポイント。そこを理解して表現できるプレーヤーでありたいと思っています」

ただ、インサイドでゴリゴリと力で押すプレーヤーになるつもりはない。自分のプレーの引き出しの多さ、器用で多彩な面を生かすのが長岡の考えだ。「アースが3番、4番と5番はリツさんとタクさん(渡嘉敷来夢)。40分出るのは絶対に無理だから、私は3番でも4番でも使われるだろうし。自分がどう使われるかは分からないですよ(笑)、スタートとして出るかもしれないですけど、イメージしているのはシックスマンとして出てバスケットを変えることです」

リオ五輪での日本代表のインサイドでは、渡嘉敷と大﨑(間宮)佑圭が4番と5番の先発を、髙田がシックスマンを務めた。そのイメージとともに長岡が考えるのは、先日に現役引退を表明した吉田亜沙美のシックスマンとしての存在感だ。「最近で言うとJX-ENEOSでシックスマンをやったリュウさん(吉田)ですね。実力もそうだし今までの実績もあり、リュウさんが出てきた時に対戦相手の自分たちが凍り付く感じ。それを自分がどこまでやれるかは分からないし、世界を相手に通用するとも思っていませんが、リュウさんが出てくると流れが変わる、JX-ENEOSの選手たちの目の色が変わる、みたいな感じがありました。それができるように頑張りたいです」

ベルギー戦に向けて「自分のプレーをまずは忠実に」

Wリーグのシーズンが終わってから、今回は長いオフがあった。十分にリフレッシュして、今は心身両面でコンディションを作っているところ。オリンピックの開催国枠での出場がいち早く決まり、気は緩みがちだが、オリンピックまで時間がないことに変わりはない。

「オリンピックに行けることが決まり、そこに向けて頑張るという目標はできましたけど、予選で力を試される、上がっていくことでチームの力を証明して自信をつけていくことがないので、そこは難しいと思います。気持ちとしては確かに楽で、どこにモチベーションを作るのか、そこは自分たちで気持ちを強く持っていかないといけないです」

そのためにも、まずは今月末のベルギー戦をどんな状態で迎えるかが大事。「勝つためにピークを持っていきたいですけど、全部を求めすぎても空回りすると思うので、自分のプレーをまずは忠実に。自分のストロングポイントは何かを考えてやることが頭にあります。最終的にオリンピックに向けてこのメンバーでチームを作っていくので、その中で自分がどうプレーするのか」

そしてもう一つ、立場が上がって周囲を見る余裕ができた今の長岡は、日本代表のバスケットボールをファンの目の前で見せる機会がどれだけ大事かを感じている。「今年の代表活動は始まったばかりですけど、ここでしっかり良いバスケができるように、みんなで頑張っていきます。会場に足を運んだり、テレビで見ていただいたり、少しでも多くの方に日本のバスケットを見ていただきたいので頑張ります!」

現在25歳の長岡は、選手キャリアで最も充実した時期にオリンピックを迎える。金メダルを狙うとトム・ホーバスが公言する以上、チーム全員に最高の仕事が求められるが、長岡には時にはエースとして、時にはシックスマンとして、そしてリーダーとして、大きな期待が寄せられる。