ジュビロ磐田戦で決勝ゴール決めた久保建英(FC東京) 5月12日、味の素スタジアム。0-0のじりじりした展開が続き、…

ジュビロ磐田戦で決勝ゴール決めた久保建英(FC東京)
5月12日、味の素スタジアム。0-0のじりじりした展開が続き、終わりも見えてきた84分だった。FC東京の久保建英は、劇的な決勝点を決めている。CKからのこぼれ球に、バウンドに合わせて左足ボレーでインパクト。ペナルティエリア内で待っていた久保は、上体をかぶせながら、逆サイドのネットへ、鮮やかな軌道でボールを飛ばした。懸命に守っていたジュビロ磐田を、奈落の底に突き落とす一撃だった。
「(シュートの場面は)あまり覚えていません。直感で」
久保はそう振り返ったが、ゴールした後は、ゲストで来場していた人気芸人のギャグを披露している。それだけの余裕があった。無邪気、奔放というより、計り知れない器の大きさというのだろうか。
南米選手権での日本代表招集も噂され、バルサ復帰も秒読みと言われる17歳の現在と未来とは――。
「久保くんから久保になった」
今シーズン、何人かのJリーガーがそう洩らしている。昨シーズンと比べて、久保は劇的な変化を遂げた。まさに、子供から大人になったと言えるほどの変化だった。
昨シーズン、久保は横浜F・マリノスへ期限付き移籍直後、そのデビュー戦となったヴィッセル神戸戦で、いきなりゴールを決めている。天運の持ち主であることは、間違いなかった。
しかしながら、得点以外はほぼ流れから消え、出てきたときはひ弱さばかりが目立っていた。以来、ユース年代の活動が主となり、昨シーズンのJ1出場時間は(FC東京での試合も含め)、わずか218分だった。
ところが、その姿はたった数カ月で見違えている。
「キャンプから肉体を改造していた」「横浜FMに移籍し、苦難も経て、精神的に強くなった」「もともと持っていた才能が自然に開花した」……チーム関係者からは、いくつもの変化の理由が聞こえてくる。どれも正しいのだろうが、その変身ぶりは想像を超えている。
今シーズン、開幕戦の川崎フロンターレ戦後のことだ。
「オランダに移籍する前の堂安律には匹敵する」
FC東京の長谷川健太監督はそう洩らしていたが、今やプレークオリティは当時を遙かに上回っている。守備では強度の高いプレスを見せ、リトリートでは完璧にフタをし、カウンターでは力強く持ち運ぶ。進化の度合いが激しい。
「建英だからこそ、つけられる縦パスというのがあって……」
日本代表MFでもある橋本拳人はそう説明する。
「たとえば鹿島(アントラーズ)戦は、レオ・シルバにマークされていましたが、建英は関係なかった。いいタイミングで、コントロールできるパスさえ出せれば、あいつは(マークを)はがせる。もしくは、体の使い方がうまいから、キープし、そこから展開だってできる。ボールを運んで決定的なプレーができるし、あの存在感は、なかなか代わりがいないですよ」
久保は優勝争いをする今季のFC東京において、定位置を奪っただけではない。エース的存在になりつつあるのだ。
「今日は建英に助けられましたね」
磐田戦後も、FC東京の選手たちはそう感慨を洩らしていた。
この日、久保は右サイドをスタートポジションにしながら、積極的にインサイドでボールを受け、決定的なパスをいくつも通している。コントロールだけでなく、タイミングの取り方も絶妙だった。ボールを失わないキープ力があることで、十分な視野が取れて、斬新なコースにボールを通せる。技術的に高度な「ラインを破るパス」を得意とし、ディフェンスの裏を取り、一気に守備陣を崩してしまうのだ。
その点、80分のプレーは痛快だった。右サイドでドリブルをしながら、相手を引き連れて中へ切り込み、バックラインの前を横切るようにドリブル。敵を引きつけ、人を動かし、ズレを生み出す。そして左奥にできたスペースを見つけ、絶好のパスを配球。一瞬下がった味方と逆動作になって、パスは流れた。しかし、久保の次元の高さに味方もついていけなかっただけで、その技量の高さは目を見張るものがあった。
そして、決勝点となる芸術的な左足ボレーが生まれたのだ。
「誰かが何とかしないといけない展開で、その誰かが自分だったのがうれしい」
お立ち台に立った久保は語っている。その姿は、日本サッカーの未来を照らすような明るさがあった。
「自分としては、そこまでいい出来ではなかったですけど、結果に貢献できてよかったと思っています。今日はみんなに褒めてもらってうれしいですね。いつもは褒めてる方の側なので」
そのコメントは、初々しさも感じさせた。しかし、彼はもはや少年ではない。味方が勝利を託す、英傑の匂いがした。