チャンピオンズリーグ(CL)準決勝第2戦。リバプール対バルセロナ、アヤックス対トッテナム・ホットスパー(スパーズ)…

 チャンピオンズリーグ(CL)準決勝第2戦。リバプール対バルセロナ、アヤックス対トッテナム・ホットスパー(スパーズ)の2試合を見ての感想をひと言でまとめるならば、どちらの試合もメチャクチャおもしろかった――となる。

 サッカーの試合を見終えた後、つい口をついて出やすいのは、不満や批判だ。筆のほうも、何かひと言、言わずにはいられない時ほど走る。しかし、ほぼ100%満足させられた状態にあるいま、言葉はなかなか出てこない。

 映画館で名作に出会ったときなど、ひとりで余韻に浸っていたいことがあるが、いまはまさにそんな気分だ。しかも、これらは映画でもなければ、小説でもない。「事実は小説よりも奇なり」を地でいく、エンターテイメントの粋が凝縮された2試合。言い換えれば、サッカーの魅力の最大値を大幅に更新した2試合となる。サッカーという競技が世界で断トツのナンバーワンに君臨する理由は、この2試合に、濃密なまでに集約されていた。

 CLはもちろん、W杯を含めて、ここまで神がかり的というか、奇跡的な逆転劇が連続して発生したのは、サッカー史上初だと断言できる。喜怒哀楽の渦中にある当事者を除けば、世界はいま限りなく不思議な空気に包まれた状態にある。



アディショナルタイムのゴールでアヤックスを破り、初のCL決勝進出を決めたトッテナム・ホットスパー

 サッカーの魅力について、世界中のファンが再認識していることだろう。巷には、サッカーファンをやめられなくなった人が溢れているに違いない。偶然この試合を見た、サッカーファンではない人まで虜にしたはずのリバプール対バルサ戦であり、アヤックス対スパーズ戦だった。サッカーの普及、発展に大貢献した4チームすべてに拍手を送りたい。

 リバプールとスパーズ。決勝は、2007-08シーズンのマンチェスター・ユナイテッド対チェルシーに続く、イングランド勢同士の対決になった。

 しかし、スタンドのムードはともかく、それぞれのサッカーを見る限り、イングランド的な匂いはもはやない。2007-08シーズンのマンU、チェルシーにも同じことを感じたが、今回の2チームはそれ以上だ。チームがますます多国籍化し、CLの舞台で他国のクラブと相まみえている間に、境界を示すエッジが落ち、スタイルが無国籍化しているという印象だ。

 サッカーの傾向を国単位で語ることが難しくなっていることを、リバプールとスパーズ、さらに言えば、スパーズに準々決勝で、これまたドラマ仕立て展開で惜しくも敗れたマンチェスター・シティは物語っている。各国サッカーのいいとこ取り。リバプールの監督(ユルゲン・クロップ)はドイツ人で、スパーズの監督(マウリシオ・ポチェッティーノ)はアルゼンチン人だ。

 イングランド勢同士の対決ではあるが、欧州的だ。島国の匂いはしない。EU離脱に揺れる英国だが、サッカーは、それとはまるで異なる方向を指している。そこに皮肉を見る気がする。離脱後のプレミアリーグはどうなるのか、11シーズンぶりの同国対決が実現したいま、逆に心配になる。

 しかし、それ以上に臭さが消えたチームといえば、バルセロナだ。リバプール、スパーズがいい意味での変化だとすれば、こちらは悪い意味で、となる。

 かつてそのサッカーは特別だった。欧州をぐるりと回り、バルサに辿り着けば、違いは歴然。他とは異なる良質で特別感のある匂いを嗅ぐことができた。だが、それが維持されたのは、ジョゼップ・グアルディオラが監督をしていた頃までだ。ルイス・エンリケ監督のもとでCLを制した2014-15シーズンあたりから、危うさが漂い始めた。

 エルネスト・バルベルデ監督率いる現在のバルサのサッカーは平凡そのものだ。他からいい要素を加えたというより、俗化した印象だ。チーム力も、リバプール、スパーズ、アヤックスの3チームが右肩上がりできているのに対し、バルサは右肩下がり。リオネル・メッシの年齢は上がっているにもかかわらず、逆にメッシ頼みの傾向が年々、増している。

 象徴的だったのは準決勝第2戦だ。試合開始早々、バルサはチャンスをつかんだ。左サイドバック、ジョルディ・アルバがリバプールのGKと1対1になった。誰もがシュートと思った瞬間、彼はけっしてフリーではなかったメッシにパスを送った。

 アルバは30歳のベテランだ。チームでは、メッシ、ルイス・スアレスを除けば、ジェラール・ピケ、セルヒオ・ブスケッツと並ぶ中心選手だ。その彼が、決定的なシーンでメッシを頼る弱気を見せた。バルサというチームの構造を見る気がしたプレーだった。

 そこで先制点を奪い、通算スコアを3-0から4-0にしておけば、リバプールに大逆転負けを食らうことはなかったのだ。メッシという”偉人”に頼るサッカーから脱却し、かつてのような集団としての魅力を発揮しない限り、右肩下がりは止まらないと見る。

 そのバルサが首位を独走したスペインリーグ。CL4連覇を逃したレアル・マドリードも、もたついている様子だ。ディエゴ・シメオネ率いるアトレティコ・マドリードも頭打ちの状態にある。

 UEFAリーグランキングは過去5年の成績の集計に基づくので、スペインが首位の座から今すぐ陥落することはないが、この状態が続けば、2013年にイングランドから奪還した首位の座を、再び明け渡すのは時間の問題になる。来季はイングランドとスペインのUEFAランキングを巡る攻防も見ものになる。

「勝つときは少々汚くても構わないが、敗れるときは美しく」と、生前こちらに語ってくれたのは、バルサの元監督で、アヤックスのCL3連覇に貢献したヨハン・クライフだった。アヤックスとバルサ。今回、「負けっぷり」という点で勝ったのはアヤックスだった。

 リバプールとの第2戦、バルサの選手たちが相手CKでボールから目を離し、ディボック・オリギに奪われた決勝ゴールは、明らかなボーンヘッドだった。美しいとは言えない終わり方だった。

 それに対して、アヤックスはまさに「惜しい」と言いたくなる負け方をした。ルーカス・モウラに逆転弾を奪われたのは、アディショナルタイムが時計上では終了した瞬間だった。その時、表示はプラス5分1秒を指していた。まさにワンプレーの差であった。

 アヤックスにとって痛手となったのは、試合直前に、左ウイングのダヴィド・ネレスが負傷でメンバーから外れたことだ。デンマーク代表のカスパー・ドルベリが急遽出場したが、ゲームに入り切れないまま、途中交代でピッチを去ることになった。

 交代で出場した選手も、スパーズに比べ、インパクトに欠けた。スタメンの11人では互角以上だったかもしれないアヤックスだが、交代枠3人を含む14人での戦いで劣ったという印象だ。そこまで選手を揃えることができない、”金満”ではないクラブの悲しさを見た気がした。

 リバプール対スパーズ。この決勝対決に期待することは何かといえば、好勝負だ。サッカーの魅力の最大値をさらに更新するような接戦だ。

 負けられない立場にあるのはリバプールだ。ブックメーカー、ウィリアムヒル社の下馬評(90分間)では、リバプールの勝利が1.95倍で、スパーズは3.90倍と、およそ倍の差がついている。受けて立つ側のリバプールのスタイルが、前から行くプレッシングであるのに比べれば、スパーズは守備的だ。重心が後ろに下がるサッカーだ。

 それがそのままピッチに反映されると、「攻めるリバプール、守るスパーズ」という構図が鮮明になる。それでは試合の噛み合わせは悪くなる。エンタメ性は上がらない。ポチェッティーノ監督には、アヤックスとの準決勝第1戦で見せたような5バックになりやすい3バックではなく、第2戦で採用した4-2-3-1系の前向きなスタイルで臨んでほしいものだ。

 名勝負、2度あることは3度ある――に期待したい。