坂口佳穂インタビュー(前編) 坂口佳穂(23歳/マイナビ/KBSC)にとって、昨年は大きな転機となった。鈴木悠佳子(31歳)とペアを組んで、悲願の国内ツアー初優勝を成し遂げ、ワールドツアーでも表彰台に上がった。技術だけでなく、精神的な成長も…

坂口佳穂インタビュー(前編)

 坂口佳穂(23歳/マイナビ/KBSC)にとって、昨年は大きな転機となった。鈴木悠佳子(31歳)とペアを組んで、悲願の国内ツアー初優勝を成し遂げ、ワールドツアーでも表彰台に上がった。技術だけでなく、精神的な成長も経て、4年目にしてようやく実を結んだシーズンとなった。

 結果と自信をつかんだ彼女は今シーズン、新たなパートナーとペアを組んで、カウントダウンが始まった東京オリンピックに向けて挑むこととなった。昨シーズンの勢いを来夏までつなげることができるか。成長を続ける坂口佳穂を直撃した--。

--昨シーズンは国内ツアー第2戦、マイナビジャパンビーチバレーボールツアー東京大会で優勝。ツアーポイントランキングを1位でシーズンを終えました。大きく飛躍した年だったと思いますが、振り返っていかがですか。

「昨シーズンは目に見えた形で結果を残せたことが、自分の中ではとても大きかったです。年々、少しずつでも成長できているのかなと思っています。目標だった優勝もすることができて、やってきたことが間違いではなかったとわかりましたし、自分以上に家族や周りの人が喜んでくれる姿を見て、プレーに対するモチベーションがより一段、上がった感じでした。

 それに、自分自身の考え方が一番大きく変化した1年だったと思います。パートナーだった(鈴木)悠佳子さんやコーチの指示、指導の、本当の意味がわかるようになってきました。大学を卒業したこともありますが、選手としてだけでなく、人として大事なことがどういうことなのかわかってきました。まだまだですけどね(苦笑)」

--昨シーズンはワールドツアーにも積極的に参加して(9大会)、ベトナム・トゥアン・チャウ・アイランド大会、韓国ウルサン大会(ともに1-Star※)では表彰台にも上がりました。海外でのプレーはいかがでしたか。
※Star=大会のグレード。5段階に分けられており、最も高い大会が5-Starで、最も低い大会が1-Star

「海外の選手は体が大きくて高さもあって、軟打よりも強打が攻撃の中心なので、国内とは戦い方が違っていい経験になりました。私たちも同じように強打で攻めていったので、やりやすさはありましたね。でも、表彰台に上がれたことは素直にうれしかったのですが、フルセットのいいところまでいきながら、勝ち切れないゲームもあったので、(その点が)課題にはなりました。

 海外の大会はどこへ行っても観客の盛り上がりがスゴいので、プレーしていても気持ちよくって楽しかったです。私は観客がたくさんいたほうが好きですから(笑)」

--プレーの技術的な手応えは、どういったところに感じていますか。

「スパイクは、悠佳子さんのトスのおかげ。うまく打たせてくれていたので(上達したかどうかは)何とも言えませんが、ディフェンスでのボールの拾い方はよくなったと思います。ブロックを跳んだあとの重心位置や体の使い方で、拾える範囲が広がって、ボールが上がるようになっていると感じています。それが、試合でも出せるようになってきたと思っています。体も年々、大きくなっていますし、トレーニングで挙げるウエイトも増えています」

--昨シーズンは特にサーブがよかった印象があります。東京大会の決勝戦では、勝負どころでいいサーブを2本続けて決めて、優勝を引き寄せましたね。

「そうですね、サーブは自信がつきました。あの(決勝戦の)サーブは、精神的にとても集中していて、ボールに『おまえ、あそこに絶対、落ちるんだぞ!』と言い聞かせて、めちゃくちゃ念じたサーブでした。サーブは”念”ですね(笑)」



社会人になって、大きく成長したという坂口佳穂

--このオフは、どこにポイントを置いてトレーニングをしてきましたか。

「先ほども話したように、去年はディフェンスの形を重点的に学んだので、それを試合のプレーでも安定して出せるように、(自らの動きに)落とし込む作業をしてきました。それは、ここまで少しずつですが、進歩してきているのかなとは思っています。スパイクはコースの打ち分けの精度をもっと上げるように練習してきました」

--今シーズンは、村上礼華選手(22歳)とチームを組むことになりました。村上選手は各年代の日本代表としてプレーしてきた期待の選手ですし、昨年出場した世界大学選手権でも一緒にプレーをしました。

「バレーボールはうまいですし、スピードもあって、器用で体の使い方もうまい魅力的な選手です。攻撃では彼女の持ち味であるスピードを生かして、(自分は)いいトスを上げたいと考えています。

 ただ、ふたりともこれまで年上の選手と組んで、引っ張ってもらうことが多かったので、今シーズンはお互いに引っ張り合って、(互いに)いいところを引き出し合えるか、新しい挑戦だと感じています。私のほうが1つだけですが年上なので、教えられることは伝えて、ちょっとは”お姉さん”にならなきゃいけないと思っています(笑)」

--来年には東京オリンピックがあり、開催国枠の日本代表男女各1チームはランキング上位による選考大会で決まります。そのランキング対象のワールドツアーはすでに始まっていますが、今シーズン、新チームの目標を聞かせてください。

「もちろん目指しているのは、オリンピックの日本代表予選会に出場して、出場権を獲って東京オリンピックに出ることです。それに若いチームですので、その次の2024年パリ・オリンピックも視野に入っています。でも今は、目の前の目標に突き進んでいきます。

 今シーズンはオリンピックランキングがとても重要なので、ワールドツアーをメインにプレーして、海外チームを相手に結果を出していきたいと思っています。でも、最終的な代表決定には国内のチームを倒さなくてはいけないので、日本のチームにも勝つことが大切です。たぶんオリンピックを狙う一番若いチームなので、若さと勢いで勝っていければと思っています」

(つづく)