文・写真=鈴木栄一A東京、僅差でリードするロースコアの流れで勝ちきる5月4日、アルバルク東京がアウェー沖縄に乗り込み琉球ゴールデンキングスとチャンピオンシップのセミファイナルで対戦。ロースコアのまま試合終盤までもつれる激闘となったが、第4ク…

文・写真=鈴木栄一

A東京、僅差でリードするロースコアの流れで勝ちきる

5月4日、アルバルク東京がアウェー沖縄に乗り込み琉球ゴールデンキングスとチャンピオンシップのセミファイナルで対戦。ロースコアのまま試合終盤までもつれる激闘となったが、第4クォーターにリバウンド争いで優位に立ったA東京が、67-57で粘る琉球を振り切った。

ともにフィジカルで激しい守備を持ち味とする両チームであり、第1クォーターの出だしから戦前の予想通りのロースコアの流れとなる。しかし、その中でもA東京はミルコ・ビエリツァが3ポイントシュートに加え、ゴール下に切れ込んでのフックショットも沈めて前半だけで12得点をマーク。この活躍に支えられたA東京は、前半を37-29とリードする。

それでも第3クォーターに入ると、琉球はジェフ・エアーズのバスケット・カウントをきっかけに、アイラ・ブラウンが3ポイントシュート成功、相手の速攻に追いついてのブロックと攻守に活躍。怒涛の13連続得点で42-39と一気に試合をひっくり返す。

守備のギアを一段と高めた琉球がこのクォーターを16−6と圧倒したことで、45-43と試合は降り出しに戻る。それでも第4クォーターに入ると、A東京はオフェンスリバウンドからのセカンドチャンスで安藤誓哉、馬場雄大が得点することで逆転に成功。ここから再び我慢比べとなりA東京が僅差でリードする流れとなる。

ここで勝敗を決めるポイントとなったのは再びオフェンスリバウンドだった。残り1分、A東京はオフェンスリバウンド奪取からのパスを回し、フリーになった竹内譲次が値千金の3ポイントシュートを沈め、リードを9点へと広げて熱戦に終止符を打った。この試合、A東京が奪ったオフェンスリバウンドは12本だったが、その6本が第4クォーターに記録されたもの。勝負どころで流石のボールへの執着心だった。

信頼に応えた竹内譲次の一発で激戦に終止符

A東京の指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチは、「最後まで粘り強く戦って勝つことができた」と勝因を語る。実際、劣勢の場面になっても慌てずに自分たちのやるべきことを継続し、得点わずか6と失速した第3クォーターの失点を16に抑えたことで傷口を最小限に留めたことが大きかった。また、ファストレブイクで許した失点はわずか1、ターンオーバーからの失点は7と、イージーバスケットを許さなかったことも光った。

まさにいつも通りのバスケットを大一番と的確に遂行したA東京だが、それは選手起用についても同じ。最後の場面、トドメの一撃を決めた竹内は、あの3ポイントシュートがこの試合初のシュートであり、この試合に関しては16得点を挙げたビエリツァの方がシュートタッチは良かった。それでも終盤に竹内を起用した理由を、指揮官は「エネルギーレベルが一番高い状態でプレーさせたいので、ローテーションを守った」と語る。どんな状況でもブレない王者の強さがもたらした決勝弾だった。

また、A東京にとってこの試合、数字には出ない大きなプラス効果があった。それはシーズン終盤に右足アキレス腱断裂の重傷を負い、手術とリハビリのため帰国していたジャワッド・ウィリアムズが合流したことだ。

指揮官は「ジャワッドは2年前からいる重要な選手。チームにすべてを捧げ、私たちにとって家族のような存在だ。彼はタフな状況だけど、医師が15時間のフライトを許可したら必ず戻ってきてチームメートをサポートしたいと言っていた」と、今回の合流の経緯を語る。「わざわざ手術をした後、戦っているチームメイトの元に国外からやって来ることはなかなかない。我々とジャワッドはそれだけ深い絆で繋がっている」とウィリアムズのもたらすポシティブ効果を語る。

ターンオーバー連発の並里成「僕自身が崩れた」

敗れた琉球の佐々宜央ヘッドコーチは、「オフェンスはそんなに悪くないですが、15ターンオーバーすると強いチームには勝てない。リバウンドも第4クォーターで立て続けに取られてしまった。ああいうところでリバウンドを勝ちきらないとチャンスは来ない」と敗因を挙げる。

この15ターンオーバーのうち、8つは司令塔の並里成が喫したもの。だが、指揮官は今日のミスを受けての明日の並里の巻き返しに期待を寄せる。「明日、彼がどういうに来るのか、今までと同じなのか、スーパーな成になるのか楽しみです。だからこそファイトしてほしい。そう期待しています」

そして並里本人は次のようにリベンジへの意欲を語る。「相手がどうこうと言うより、僕自身が崩れた。的確な判断ができなかったので、明日はそれをするだけです。崖っぷちなので、必ず自分を取り戻してチームを勝ちに導きたい」

琉球はこれでもう負けが許されなくなったが、佐々は「ここまで来て、こんなに良い環境でプレーできる。やるしかない。まだ、倒れてないです」と闘志は衰えていない。また、パヴィチェヴィッチも「まだシリーズは終わってはいない。特に琉球は、名古屋戦でGAME1を落とした後に勝ち上がっている」と、先勝したことへの安堵感はゼロだ。今日あらためて明らかになったが両者の力に大きな違いはない。明日も激しい削り合いとなることは間違いない。