ヨーロッパリーグ(EL)準決勝第1戦。ホームでチェルシーを相手に1-1で引き分け、長谷部誠(フランクフルト)の表情…

 ヨーロッパリーグ(EL)準決勝第1戦。ホームでチェルシーを相手に1-1で引き分け、長谷部誠(フランクフルト)の表情には充実感のようなものが浮かんでいた。いつものリーグ戦後に見せる顔とはちょっと違い、高揚感が伝わってくる。よほど試合が楽しかったのだろう。



チェルシー戦にフル出場した長谷部誠(フランクフルト)

「1-1という結果は悪くないのではないか?」との質問に、長谷部は冷静にスコアを振り返った。

「まあ悪くない結果だとは思うんですけど、ただやはり、(第2戦は)0-0ではダメだし、アウェーで最低でも1点を取らなきゃいけない」

 たしかに、アウェーゴールを奪われての引き分けは、厳しい結果だと言うこともできる。とはいえ相手は、フランクフルトから見れば、あらゆる意味で格上のクラブだ。

「チェルシーは、ここまでの対戦相手よりやはりひとつランクが上のチームだなと、(試合を)やっていても思いました。来週の木曜日は難しいゲームになると思います。ただここまで、厳しいと言われてきた戦いを、全部勝ち上がってきているので、ロンドンで何かを起こせるんじゃないかという、そういう変な何かがあります」

 最後に少しはにかんだのは、妙な自信を曖昧な形で口にしてしまったことへの照れにも見えた。

 実際、フランクフルトがELで歩んできた道のりは決して簡単なものではなかった。1次リーグは昨季決勝に進出したマルセイユや、イタリアの強豪ラツィオと同組だった。決勝トーナメントに入ってからもラッキーな組み合わせはひとつもなく、シャフタール・ドネツク、インテル、ベンフィカと、チャンピオンズリーグ(CL)に出場していてもおかしくないクラブを次々と倒してきた。そのプロセスで自信をつけ、たとえチェルシーが相手でも自信を持って臨むことができたのだろう。

 試合自体はフランクフルトがペースを握っていたとは言い難かった。

 長谷部によれば、この日のフランクフルトは相手のセンターフォワード、オリビエ・ジルーへの対応を考えた布陣だった。センターバックに入ったマルティン・ヒンターエッガーが、長身のジルーに対応していた。

 長谷部はボランチで先発。これについては「自分が中盤に入ることで、もう少しゲームを落ち着かせたり、自分のところでセーフティーにゲーム組み立てるという意図があったと思う」と言う。

 序盤、それが功を奏したことは、チェルシーのマウリツィオ・サッリ監督も「最初の20分の戦い方は間違っていた。まるで0-0を目指しているようだった。メンタリティの難しさもあった」と、認めている。

 23分にはフランクフルトが先制する。ウィリアンからのパスをジルーが落としたボールを奪い、カウンターを発動。最後はルカ・ヨビッチが決めた。

 だがこの1点で、チェルシーは目を覚ましてしまう。サッリが「25分から85分くらいまではいいサッカーができていた。チャンスもあり、勝利にも近づいた。その60分間は試合をコントロールできていた」と言うように、前半終了間際にペドロのゴールで追いつくと、後半もチェルシーがペースを握った。 

 長谷部は言う。

「ヒンターエッガーはジルーをよく抑えていたと思う。逆に僕の中盤のところでは、何度か危ない場面でボールを失ったこともあったので、そのへんはまだまだ修正しなきゃいけないと思います。40分ぐらいまでは、自分たちの狙いというのははっきりしていたし、1-0といういい形でやれていた。前半の最後に失点してしまって、後半もちょっと、引きすぎたかなという感覚もある。(後半は)チーム全体として前に出るというところで、少しクラフト(力)が足りなかったかなという感覚はあります」

 自分のプレーを反省しながら、追いつかれたあとの難しさを語った。

 来週のチェルシーホームの第2戦を前に、週末にはブンデスリーガのレバークーゼン戦が控えている。現在フランクフルトは勝ち点54で4位。レバークーゼンは同51で6位につけている。来季のCL出場権を争う重要な一戦となる。

「アウェーでは、より守備の時間が長くなると思いますけど、そのなかでも間違いなく1点は取らなければいけないので、そういう戦い方をしっかり自分たちの中でクリアにしていく。たとえばアンテ(・レビッチ)が戻ってくるから、引いた形から彼のカウンターを生かせると思う。

“分”でいったらうちの方が悪いと思うんですけど、戦い方次第で、非常に面白い試合になると思う。まずは日曜日に大事なレバークーゼン戦があるので、それが終わってから、戦い方(の練習)はやっていくと思います」

 次戦を展望しながら、ちょっとした勘違いをしたことも明かした。

「本当にここは総力戦だなと思うんです。僕も今日、イエローカードをもらって、次は出場停止かと思ったら、違うんですね」

 準々決勝までで警告の累積が精算され、準決勝から新たにカウントされることを、試合が終わるまで知らなかったというのだ。思わぬところで”天然”な一面を覗かせた。

「試合中、次は出られないと思っていたんですけど、もう一回出られるので、よかったなと思っています。今シーズンの残りは最大でもブンデスとELと5試合なので、最後までやり切りたいという気持ちが強いです」

 ロシアW杯を終えて日本代表からの引退を表明した長谷部は、今季を「1プレーヤーとしての、欧州での評価が問われるシーズン」と定義していた。もしEL決勝進出を果たしたら、これ以上ないすばらしい成果と言っていいだろう。