赤城玲央選手(中央大学)とレスリングの出会いは、中学生の時だった。もともと野球部に所属していたが、怪我により競技を断念。顧問に誘われてレスリング部の門を叩いたことで、彼の運命は大きく変わった。最初から優秀な選手だったわけではない。高校時代は…

赤城玲央選手(中央大学)とレスリングの出会いは、中学生の時だった。もともと野球部に所属していたが、怪我により競技を断念。顧問に誘われてレスリング部の門を叩いたことで、彼の運命は大きく変わった。最初から優秀な選手だったわけではない。高校時代は一度もインターハイに出場できなかった。県大会では毎回同じ相手に負け、悔し涙を飲んだ。それでも、仲間の支えがあったから競技を続けられた。そんな赤城に声をかけたのは中央大学。「自分がやってきたことを評価してもらえたと感じた」。

入学後はフリースタイルにも挑戦している。男子レスリングには、フリースタイルとグレコローマンという2種類のスタイルがある。上半身の攻防のみが許されたグレコローマンとは違い、フリースタイルは全身を使った攻防が可能だ。有効面が広がることで、相手の足元へのタックルもできる。競技は階級制で行われ、規定の体重以内の選手によって争われる。彼が出場する125kg級は最重量階級となるため、特に体重の増減管理が欠かせない。ひとたび試合が始まれば、普段は温和な赤城が“獅子”に豹変する。獲物を狙うように相手の隙を伺い、大きな身体でマットに沈めてしまう。率先してタックルを仕掛けにいくタイプではないが、チャンスを逃さず一撃で仕留めるのが彼の戦略だ。

※天井から吊るされた約4mのロープを、腕の力だけで登り切るトレーニングに臨む赤城

中央大学レスリング部の特徴は、道場に響く韓国語の指示。卒業生でもある山本美仁監督が韓国国立大学に進学したことがきっかけで、大学で初めて韓国・白石大学とスポーツ交流協定を結んだ。現在は元五輪メダリスト・李正根コーチが、山本監督とともに指導を行っている。この2人から、赤城は身体の強化だけでなく礼儀作法も教わった。社会人ながらも練習に協力してくれる先輩たち、サポートしてくれる仲間への感謝の気持ちを忘れたことはない。

将来は「競技を続けることは考えていない」という。1人の卒業生として、自分がしてもらったように後輩たちを支えたい。「自分はレスリングをやることで大学に行けたけれど、こんなに長くできると思っていなかった。これから始める子どもたちにも、少しでも競技を続けることを考えてもらいたい」。そう言って、中央の獅子は照れたように微笑んだ。

※大学アスリート1日密着動画「THE STARS」にて、赤城選手を特集しています。
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赤城玲央(あかぎ・れおな)
茨城県出身。1997年9月13日生まれ。188センチ。鹿島学園高校を経て、現在は中央大学商学部4年。恵まれた体格を活かして相手を押さえ込み、前に出ることを意識したプレースタイルが持ち味だ。2018年11月には東日本秋季選手権大会フリースタイル125kg級を制した。