世界最高の選手が集うスペインのリーガエスパニョーラで、今シーズンは「O-30」(30歳以上)のベテランたちが熱い。…

 世界最高の選手が集うスペインのリーガエスパニョーラで、今シーズンは「O-30」(30歳以上)のベテランたちが熱い。「老いてはますます壮なるべし」の格言にあるように、老いてなお意気盛んであるということか。

 ヘスス・ナバス(セビージャ)は33歳にして再び脚光を浴び、スペイン代表に再招集されている。31歳のイアゴ・アスパス(セルタ)は、今季ここまでリーグ戦16ゴールと、サーラ賞(スペイン人得点王)を争っており、左足FKなどにより「セルタのメッシ」と”崇拝”される。

 さらにハイメ・マタ(ヘタフェ)は、30歳で1部リーグにデビューし、得点を量産すると、今年3月には華々しく代表デビューも飾った。これまでマタは、地域リーグ、4部リーグ、3部リーグ、2部リーグでこつこつとゴールを積み上げてきた。

「爺さん呼ばわりされているのは知ってるよ。でも、悪くは受け取らない。それだけの経験と見識を持っているという証だから」

 かつて1部時代のデポルティボ・ラ・コルーニャで40歳までプレーしたブラジル人”アブエロ”(おじいさん)ドナトは、淡々と語っていた。ドナトはリーガエスパニョーラ最年長得点記録も更新。年齢のボーダーを超えた鉄人は、どこか達観したところがあった。

 年齢を重ねるたび、輝きを放つ。現代のリーガが誇るまた別の2人の熟練者、それぞれのケースを見てみよう。



ベティスで抜群の人気を誇るホアキン・サンチェス

「どこで終わりを迎えるか? そんなの考えていないよ。今は日々、サッカーボールを蹴られることを楽しんでいる。こういう日々がずっと続けばいいね」

 今シーズン、プレミアリーグのアーセナルから故郷のクラブ、ビジャレアルに戻ってきた34歳のMFサンティ・カソルラは、その心境を語っている。

 カソルラはいま、ピッチに立つ喜びを誰よりも噛みしめている。約1年半、実戦経験から遠ざかっていた。それは十字架を背負うような苦しみだったはずだ。

 2015年12月に左膝靱帯断裂。約半年の戦線離脱を余儀なくされた後、どうにか復帰するが、2016年12月から右足首の原因不明の痛みに悩まされる。8度に及ぶ手術でも、一向に改善しなかった。そして2017年5月、足首内にバクテリアが侵入し、アキレス腱を8cmも食べていたことが発覚。手術が成功した後も、足を引きずるように歩くので精一杯だったが、懸命のリハビリでピッチに戻ってきた。

 今シーズン、カソルラはビジャレアルの攻撃を牽引。ヨーロッパリーグではスーパーサブとして存在感を示し、準々決勝進出に貢献している。かつてシャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、ダビド・シルバと中盤を構成し、2度のEURO優勝(2008,2012年)を遂げたボール技術は錆びついていない。

「今も痛みはあるけど、それは生活の一部。プレーできる喜びの方が大きい」

 カソルラは笑顔で言う。サッカーへの熱情が、彼を若々しく突き動かす。ひと蹴りに、魂が込められるのだ。

 サッカーとの向き合い方では、この男にも独特なものがある。

「僕は面白おかしく生きていたい。ただ、それだけだよ」

 37歳になるホアキン・サンチェス(ベティス)はそう語っている。リーガ出場はすでに510試合を超え、歴代6位。それも欧州カップ出場を争うチームの、主力のひとりとして、である。

 ホアキンの名前が世界中に打電されたのは、19歳で挑んだ2002年日韓W杯だろう。準々決勝の韓国戦で、そのプレーは際立っていた。判定に泣かされることになったものの、そのドリブルは相手を手玉に取った。

 ただしその後、ホアキンはスペイン代表に縁が薄くなる。2006年ドイツW杯後の、「代表チームは混乱している」という発言が、批判と受け取られたためだとも言われている。それだけに、韓国戦で英雄になり損ねたことを悔いていても不思議はないが、気にする様子は微塵もなかった。

「韓国人選手はよく走るだけじゃなくて、テクニックも優れていたよ。まあ、ピッチの中では、説明のつかないことはいくらでも起きるさ。たとえワールドカップのピッチでもね」

 ホアキンは寛容に言って、こう続けた。

「まずは自分がサッカーを楽しまなければ、いいプレーなんかできるわけがない。あれこれ気にしていたら、自分の中から”あれをしてみたい、これをしたい”というイマジネーションが湧いてこないよ。サッカーボールを持ったときにゾクゾクするような気分、僕はただそれを求めているんだ」

 その楽観的な悟りが、彼にサッカー選手としての力を与えたのだろうか。ホアキンはベティス、バレンシア、マラガ、フィオレンティーナでプレーを続け、生まれ故郷のベティスに戻ってきた。そして「欧州最高」と言われたボールテクニックを、卓越した戦術眼でアップデートし、披露している。

「(ベティスの)キケ・セティエン監督のプレースタイルのおかげで、自分のプレー時間は延びたと思っているよ。もし以前と同じようにプレーすることを要求されていたら、きっと引退していただろうね。とにかくボールを多く触り、走る距離は少なくなった。よりプレーに関与し、それで勝つこともできている。楽しくないはずがないよ!」

 ホアキンは明るく言って、第二の春を謳歌している。

 老いてはますます壮なるべし。人はあきらめたときに、年を取るのだろう。面白がれなくなったときも、老いる。彼らは”若さ”を失っていないのだ。