アサヒビールの「すみれ」さんは最高291杯の実績を誇る人気売り子 プロ野球の醍醐味がスタジアムでの観戦、そのお供として欠かせないのが、冷えたビールだ。そして、スタジアムの“華”として日々、汗を流して働いているのが、各ビールメーカーの売り子た…
アサヒビールの「すみれ」さんは最高291杯の実績を誇る人気売り子
プロ野球の醍醐味がスタジアムでの観戦、そのお供として欠かせないのが、冷えたビールだ。そして、スタジアムの“華”として日々、汗を流して働いているのが、各ビールメーカーの売り子たちだ。10キロを超えるビールのタンクを背負い、階段ばかりの球場内を歩き回るのはかなりの重労働だが、日本独特の文化で、スタジアムを訪れる外国人観光客からの注目度、人気も高い。
福岡ソフトバンクホークスの本拠地ヤフオクドームで働く売り子たちもまた、それぞれに人間模様がある。“美女どころ”と言われる福岡の売り子を紹介する人気企画「福岡発 売り子名鑑2019」。“お気に入り”の売り子を見つけ、球場での観戦の楽しみの1つとしてもらえたら幸いだ。
第5回はアサヒビールの「すみれ」さんだ。
柔らかな笑顔が可愛らしい「すみれ」さんは、今季で売り子歴4年目となるアサヒビールのトップ売り子の1人。一塁側の内野から外野を持ち場にする彼女は、ファンや周囲から女優の筧美和子さんや比嘉愛未さんに「似ている」とよく言われるという美女だ。
「ドームで可愛い制服を着て働きたい、という憧れがありました。キラキラしていて、アルバイト紹介とかで見ていて、ああいいな、してみたいな、と思っていました」。大学入学を機に始めた売り子。「すみれ」さん1人ではなかなか踏み出せずにいたが、友人からの誘いがあったことでこの世界に飛び込んだ。
10キロ超のタンクを背負う重労働に、入っては辞めていく売り子も多い。「すみれ」さんも「私も辞めそうでした。キツくて、しかも、月に3回くらいとあんまり出勤していなかったので」というが、ギリギリのところで辞めずにいた。「2年目の後半くらいからちゃんと入り出すと、お客さんが覚えてくれるようになったんです。3年目で覚えてくれるお客様が多くなって、嬉しいなと思ったし、頑張らないといけないなと思うようになりました」。売り子の楽しさ、やり甲斐を感じ、この仕事の虜になったという。
「4年経った今でもキツイのはキツイです。慣れはありますけど、今でも結構キツイです」と今でも肉体的な厳しさは変わらないという。それでも、辞めない売り子の魅力を「部活じゃないけど、部活みたい。同期も先輩も後輩も学生が集まって、みんな目標を決めて出来る。そういうのが楽しくて、やりがいがあって。杯数は目に見えて分かるので目標も立てやすいです」と語る。
自己最高で291杯の売り上げ記録を持つ「すみれ」さん。4年目のベテランとあって、売り子の奥深さ、売り子として結果を残す秘訣が「絶対にある」という。
売れるための秘訣は「状況把握、視野を広く持つこと」
「まずは出勤率ですね。出勤することで常連さんもできると思います。それが第一で、出勤して最初から最後までキツくても頑張ることも基本です。あとは状況を見ること。お客様の入り状況を見たり、ですね。平日だとお仕事終わりのお客様が多い。まずは外野席から入り、その後からは内野が入る。そういったお客さんの流れをちゃんと見ること。状況把握、視野を広く持つことが必要です」
ドーム内の観客の状況を把握し、今どこにビールを求めている観客が多くいるかを判断する。この判断力がトップ売り子になるためには欠かせないのだという。例えば、試合中、ソフトバンクの攻撃が長くなると「すみれ」さんは外野席近くの内野席まで移動するという。
「外野のファンの方々は、ずっと立って応援しているので、喉も渇きます。攻撃が長かった分、買ってくれるお客さんが多くなります。逆にすぐ終わった攻撃のあとは、外野にいってもあまり売れないんです」という理由からだ。さらに「内野は座っているので、ある程度いつでも買ってくださるんですが、外野の方が短時間でバッと売れるんです。行くタイミングを考えないといけないんです」と明かす。
基本的にはグラウンドに背を向けている売り子たち。ただ、全く試合を見ていないわけでなく、合間合間で試合状況を瞬時に把握し、行動に繋げている。「見てないように見えて、試合展開とか早さは見ていますね。このイニング、ホークスの攻撃が長いなと思えば、内野の外野近くで売って、攻撃が終わったらバッと外野に移動して待機するみたい、な。そのタイミングを逃しただけで、10杯20杯の差がすぐに出ます」。
海外旅行が大好きで、その中でもタイがイチオシだという「すみれ」さん。現在は就職活動の真っ只中。「自分で経営をしてみたいというのが最終的な目標なので、会社に入ってスキルアップができる企業で働きたいです」と将来を思い描いている。多忙の中でも、売り子として汗を流す姿にも注目だ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)