昨季限りで32年間の現役生活に別れを告げた元中日の山本昌氏。NPB最年長勝利記録(49歳25日)や、NPB史上初となる50歳(57日)での公式戦出場など数々の記録を打ち立てた“レジェンド左腕”には、現在も大きな目標がある。■弟・秀明さんが監…

昨季限りで32年間の現役生活に別れを告げた元中日の山本昌氏。NPB最年長勝利記録(49歳25日)や、NPB史上初となる50歳(57日)での公式戦出場など数々の記録を打ち立てた“レジェンド左腕”には、現在も大きな目標がある。

■弟・秀明さんが監督を務める母校の選手の指導にあたることも将来の目標

 昨季限りで32年間の現役生活に別れを告げた元中日の山本昌氏。NPB最年長勝利記録(49歳25日)や、NPB史上初となる50歳(57日)での公式戦出場など数々の記録を打ち立てた“レジェンド左腕”には、現在も大きな目標がある。

「昔から思っていましたけど、サッカーは下部組織が随分下の年代、本当に小学校くらいからチームがあって、それにちゃんとしたクラブの名前が付いていて、一貫して育成のシステムが出来ています。(野球も)もっともっと日本のトップでやっているプロ野球とアマチュアの交流が盛んになってほしいとずっと現役時代から言ってきました。早くプロと(アマチュア)の交流、行き来が出来るようになれば」

 日本球界の現状について、山本昌氏はこう持論を述べる。1961年のプロ・アマ断絶から今年で56年目。「雪解けといいますか、ずいぶん昔の話なので。プロ・アマの断絶は50年以上前でしょ。そろそろいいんじゃないかなと。今の世代に罪はないですよと、僕は思いたいんですけどね」。こう胸中を明かした。

 山本昌氏は50歳まで投げ続けながら、肩や肘にメスを入れることなく現役生活を終えた。特に肩については「怪我をしづらい投げ方はある」と言う。「大きく使うことですね。大きく使うこと――。これしか言いようがないですね。その場に行けば指導できますけど、言葉で説明するには……」。誰よりも豊富な経験を誇るからこそ、他にも育成年代の選手に伝えたいことはたくさんある。

■山本氏が感じる侍ジャパンの意義

「プロ野球という日本の最高レベルが集まっている人たちとアマチュアの人たちの交流がない。サッカー界のように普通にトップのチームの人が教えに行けたり、高校生にアドバイスしたりできるような環境があればいいですよね。僕らが普通にどこにでもアドバイスできるような環境が早く整ってくれれば」

 現在、「侍ジャパン」はU-12、U-15、U-18、大学、U-23/U-21、社会人、女子、そしてトップと各年代・カテゴリーで日本代表を選出している。これについて、山本昌氏は「素晴らしいことだと思っています」と言う。

「(プロ・アマ雪解けへの)第一歩、第二歩として、この日本代表の侍ジャパンがあるというのはいいことだなと。プロ経験者が指導するチャンスが早く来るんじゃないかと期待してますけどね」

 育成年代の選手に対して、レジェンド左腕は「まずは基本を大事にしてほしい」と訴える。

「先ほど言った私の怪我をしづらい投げ方にしても、大きくしっかり肩を使って投げるということだけですから。そういうことを教える人が増えてほしい。そういう面で我々プロOBも、アマチュアの指導者の方々にどういうことを教えていけるかというのもやっていきたいなと思いますね」

 プロ野球選手として現役生活32年間で培ってきた知識をアマチュアの指導者に共有することにも力を注ぎたいという。

■資格回復研修会は「必ず参加する」、「きちんとしたことを教えてあげたい」

 現在、プロ野球経験者が学生野球指導者になるには、プロ、アマ両方の資格回復研修会を受講する必要があり、適性検査を経てから資格回復となる。山本氏は今年の研修会に「できれば参加したい」と明かす。そして、まずは弟の秀明さんが監督を務める母校・日大藤沢(神奈川)の選手の指導にあたることを目標としている。

「まず母校からになりますけど、定期的に行って、見てあげたいなと。そういう資格を取って。そう思ってます。それも恩返しと思っているので。弟が(監督を)やっている学校が私の母校ですけど、そこが強くなってということよりも、きちんとしたことを教えてあげたいなと。

 あとは野球指導にも積極的に参加して、と思ってますけどね。まずは母校からだけど、呼んでくれれば他の学校で指導してもいいんだから。広めたいという意味では、他の全国の強豪校に行ってもいいわけだから。早く講演でもいいので『こういう形で投げたほうがいい。僕はこうやってきた』と自由に伝えられれば」

 これから日本球界を背負っていく選手たちのために――。“レジェンド左腕”は育成年代の指導に携わりたいという熱い想いを抱いている。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count