アジアチャンピオンズリーグ(ACL)グループリーグ第4節。鹿島アントラーズは、退場者を出し、10人になりながら、0…

 アジアチャンピオンズリーグ(ACL)グループリーグ第4節。鹿島アントラーズは、退場者を出し、10人になりながら、0-2を土壇場で3-2にひっくり返した第3節・慶南(韓国)とのアウェー戦で、16強入りに大きく前進したかに見えた。折り返しとなる第4節の慶南とのホーム戦に勝利すれば、それは早々に確定する可能性があった。



ACLで鹿島アントラーズを相手に決勝ゴールを決めた邦本宜裕(慶南)

 ところが鹿島は立ち上がりから後手を踏んだ。試合は慶南ペースで推移した。アウェーチームの中で目を惹いたのは、21歳の日本人選手だった。

 一昨年にアビスパ福岡を退団。昨年からこのチームでプレーしている邦本宜裕である。ポジションは守備的MF。端役ではなく、心臓部にあたる主力としてチームを支えていた。

 逆転勝利を収めた前戦の余勢を駆って一気にいきたかった鹿島だが、発表されたスタメンは、見るからに頼りない構成だった。

 Jリーグのターンオーバーで、レオ・シルバなど何人かの主力をスタメンから外したことは既定路線のように見えたが、累積警告と前戦の退場処分で出場停止となったDF、町田浩樹、犬飼智也の代役には腐心の跡がうかがえた。その結果、守備的MFが本職の三竿健斗と公式戦初出場の高卒ルーキー関川郁万の急造コンビが、センターバックを務める姿には、痛々しささえ漂わせた。

 とはいえ、試合後の大岩剛監督は内容に関してはおおむね満足している様子だった。「90分をとおしてリスクマネジメントの面、ビルドアップの面、組織的に守る面、そういったところはよくできていたと評価している」と述べた。その一方で、「悔しくて、悔しくて、いまは冷静に振り返ることができない」とも語った。

 結果は0-1。失点は後半18分。慶南の右からのクロスボールを、後半守備的MFから左サイドハーフにポジションを変えていた邦本に、裏から合わされたシュートだった。

 ひと言でいえば名GKクォン・スンテの飛び出しミスだ。万歳しながら後ろに逃したボールを邦本に叩き込まれた、まさに「上手の手から水が漏れた」失点だ。邦本も試合後「後半ゴールを決め、試合に勝つことができましたが、個人個人の能力ではやはり鹿島の方が上でした」と述べている。大岩監督が悔しがる気持ちはわかる。

 鹿島がメンバー落ちのスタメンで臨んでも、邦本の目には格上に見えた。言い換えれば、鹿島は能力で上回るにもかかわらず、敗れた。勝てる試合を落としてしまったのだ。

 大岩監督が、失点シーンを悔やみながらも、内容に満足している様子だったのは、メンバー落ち、とりわけCBが急増だったことで、期待より心配が先にきたのではないかと思われるが、それでも実際は鹿島の方が格上だった。

 ここに誤算があったのではないか。先述のとおり、前半は慶南ペースだった。鹿島は専守防衛に徹していた。相手陣内深くに侵入できずにいた。きわめて慎重に戦った。これは鹿島というチームに染みついた伝統というか、癖のように見える。慎重に滑り出し、徐々にペースを上げていく後半勝負のチームだ。大崩れが少ない反面、勝ち味は遅い。

 悪く言えば心配性。格上のチーム、あるいはアウェー戦には効果的かもしれない。後半勝負に持っていき、相手を焦らすことができれば番狂わせの期待は高まる。

 一方、その慎重さは格下に対しては災いする。必要以上に苦戦をする傾向がある。試合開始直後から相手をガンガン攻め立てる鹿島を過去にほとんど見たためしがない。安定している理由でもあるのだが……。

 格下にやられる。それは失点シーンにも垣間見ることができた。名手クォン・スンテのミスを邦本が突くという図だ。

 韓国人選手はJリーグにゴロゴロいる。キャリアをステップアップさせる場にしている。それに対して、日本人選手は中国Cリーグ、韓国Kリーグをそのような場にできていない。邦本は珍しいタイプの選手だ。

 欧州の選手には、上りの階段もあれば下りの階段もある。行き先は自国のクラブ以外にも用意されている。韓国人選手にとってのJリーグのような場所が普通に存在する。それに対して、日本人選手にはそうした場所が見当たらない。そうしたなか、邦本は福岡を解雇され、韓国に渡った。ともすると都落ちに見えるが、そこをしっかりステップアップの場にした。

 この試合のマン・オブ・ザ・マッチに輝いたことで、Jリーグのどこかのクラブに舞い戻ることができるかもしれない。この日、視察に訪れていた森保一監督の目にも止まった可能性がある。

 Jクラブを解雇された邦本の”意地のひと刺し”にやられた格好の鹿島は、グループ首位の座から陥落。この日、タクジム(マレーシア)にアウェー戦で勝利した山東魯能(中国)が勝ち点1差をつけて首位に立った。

 ACLグループリーグで鹿島に残された試合は、タクジムとのアウェー戦と山東魯能とのホーム戦だ。鹿島が従来どおりのスタイルを貫くなら、強者である山東魯能戦より、格下であるタクジム戦の方が心配になる。その用心深すぎる戦いぶりが仇にならないことを祈りたい。