あなたのスキル、社会の役に立ってますか?

自らのスキルを通じて、社会に貢献しようという人が増えている。プロボノプロジェクトを運営するNPO法人サービスグラントの登録者数はこの5年間で2.3倍に増加しているし、新卒でNPOに就職する大学生や、社会起業家として自らNPOを立ち上げる人も増えている。
 
 このような現象の背景には、2つの要因が考えられる。ひとつめは人々のモチベーションの変化だ。モノが溢れる日本においては、お金や地位よりも「心の充足感」のために活動する人が増えているのだ。ふたつ目は将来への危機感だ。今後、従来型の単純労働は、AIや機械にどんどん代替されていく。そのような時代においては、社会に役立つサステナブルな人や企業しか生き残れない、そんな「危機感」があるのではないか。
 
 読者の中にも、何か社会に役立つことをやりたいと思っている人もいるだろう。しかし、日々の仕事が忙しく、ボランティアやプロボノへの参加はもちろん、会社で何か新しいことを始めるのさえ難しいのが現状ではないだろうか。そして何より、自分一人がやっても社会は変わらない、という無力感もあるだろう。
 そこで、今回は障害児の支援を行っている一般社団法人日本車いすスポーツ協会の坂口剛代表に、社会に役立つ活動の始め方、その活動の広げ方を聞いてみた。
 
坂口氏の話から見えてきたポイントは
①身近な人の困りごとに目を向けよう
②自分自身も楽しむ
③見返りを求めない
の3点だ

坂口氏の活動

当コラムでは以前、障害を持った子供たちの社会参加に取り組む坂口氏の活動をご紹介した。そのコラムはこちら。
https://www.spportunity.com/column/102/column_detail/
 
 坂口氏は障害児が気軽に遊べる場作りを行っている。坂口氏が浦安市で立ち上げた車いすテニスクラブ「ウラテク」は、浦安だけでなく、関東近県からも生徒が通う人気クラブだ。
 
 また、大手企業とのパートナーシップも数多く手がけている。ロボットスーツHALで有名なサイバーダインと連携し、障害者のためのトレーニング施設を立ち上げたり、中外製薬と連携し車いすスポーツの合宿を開催したりしている。
 さらには、浦安市への働きかけや、鈴木大地スポーツ庁長官への要望書提出など、その活動は行政にも広がっている。
 
 そんな坂口氏も、活動を始めた当初は、社会貢献活動などやったこともなく、テニスにいたってはまったくの素人だったという。どうしてこのような活動を始めたのか、その後どうやって広がっていったのか、聞いてみた。

活動のきっかけ

スポチュニティ編集部>
 活動のきっかけを教えてください。なぜ自ら車いすテニスクラブを作ろうと思ったのか、不安はなかったのでしょうか。
 
坂口氏>
 最初はクラブを作ろうという感覚はありませんでした。私の息子は2歳の時の交通事故がきっかけで車いす生活になりました。ある時、息子に車いすに乗った友達ができました。そこで二人が時間を共有できるようにと思い、近所の公園で遊びでテニスを始めたのがきっかけです。
 
 その後、息子が「車いすテニスをもう少し本気でやりたい」と言い出した時に、近所のテニスクラブを回ってお願いしましたが断られ続けました。その時は正直どうしようか迷いました。当時、小学校低学年の車いすテニス教室を設けるのはTTC(Tennis Training Center:公益財団法人 吉田記念テニス研修センター)ですら難しかったからです。
 そこで近所の公園で素人の私がボール出しなどの練習を行うことになりました。不安はありませんでした、子供たちと遊ぶことが楽しかったです。
 
 

どうやって活動が広がったのか

スポチュニティ編集部>
当時は二人で始めたとのことですが、その後の活動の広がりについて教えてください
 
坂口氏>
 浦安市で始めた車いすテニスクラブですが、おかげさまで生徒数も20人以上まで増えて、浦安市だけでなく、関東近県からも通っていただけるようになりました。これはひとえに私の家族や、クラブの仲間や親御さん、コーチやサポートしてくださる多くの方々のお陰です。
 
 また、私の活動をお聞きになった方から、「車いすテニスクラブを立ち上げたい」というご相談も多くいただきました。これまでに仙台、名古屋、群馬、山梨で、車いすテニスクラブの立ち上げを支援させていただきました。私ひとりで出来ることは限られているのでこのように仲間が増えてくれることは非常に喜ばしいことです。
 
”坂口氏が立ち上げを支援した、仙台の車いすテニスクラブ「チームカラフルズ」代表 岩佐様の談”
 「坂口様からは、チーム立ち上げに際して、会費の徴収方法、コーチの確保方法、コートの確保方法など、ジュニアテニスチームに必要な情報をアドバイス頂きました。全国でも先駆的に障害児のジュニアテニスチームを立ち上げられた坂口様のお話は、設立にあたり大いに参考にさせて頂きました。」
 「また設立時だけでなく、テニス大会でお会いした際などにもお声がけ下さり、チームの様子を気にかけて頂き、アドバイスも頂いております。」
 「子供たちは、体を動かすことで体力や自信がつき、テニス以外のことにも積極的に参加するようになりました。例えばそれまで保護者に車いすを押してもらうことが多かった子が、自ら車いすを操り、仲間たちとおもいっきり鬼ごっこをする様子が見られるようになりました。」
 
 

行政への働きかけ

スポチュニティ編集部>
 浦安市の市議やスポーツ庁鈴木長官など、行政にも働きかけをしていらっしゃいます。どのようなことを要望されているのでしょうか。
 
坂口氏>
 行政からの支援はなかなか難しいのが現状です。車いすで動ける障害児は障害者全体の中ではマイノリティというのが理由です。
 
しかし、私たちは動ける障害児のためだけに活動しているわけではありません。
 
 私たちのクラブには脳性麻痺のお子さんや、精神疾患があってテニスはやらないけど玉拾いだけはやる子もいます。テニスの他にも様々なスポーツ活動を通じて、世間一般的には「動けない障害児」と一緒に遊びを楽しんでいます。
 
 「動けない障害児」は、本当は動けないのではなく、動くチャンスを貰ってないだけなのではないでしょうか。ですので、行政の方には、「動ける」「動けない」という基準で判断するのではなく、懇切丁寧に一人一人に寄り添った地域行政をお願いしております。
 
 話は聞いて貰えないことが多いですが、少数ですが手を携えて下さる方々もいらっしゃいます。そのお陰で貴重な機会を頂けているのは事実です。

社会を変えようと思ったきっかけ

スポチュニティ編集部>
 活動の最初のきっかけはご自身の息子さんのためだったとお聞きしています。しかし現在では、障害を持った子供たちのため、社会全体のために活動していらっしゃいます。どのようなきっかけでそのような活動にいたったのか、お聞かせください
 
坂口氏>
 その様に仰って頂くことは大変光栄であり恐縮してしまいますが、社会を変えようなどとは微塵も思っておりません。ただひたすら息子達にとって、どうすれば楽しい小学校中学校生活が送れるか、地域の友達と公園に行ったり食事に行ったりカラオケに行ったりするには、どんな地域であれば良いのかを常に考えています。それがたまたま他の方にとっても有益な情報だったり経験だったりするのだと思っています。今も息子達にとってどうすればスポーツを思う存分楽しめて、夢を持ち、勉学に励めるかを考えています。

社会貢献活動をしようという人へ

スポチュニティ編集部>
坂口様のような社会に役立つ活動をしたいと思っている人に、何かアドバイスがあればお願いします。
 
坂口氏>
 私の場合はほぼ半強制的に活動を行う羽目になりました。今でも思います、息子が交通事故に遭わなければ障害や地域課題、地域活動などとは無縁の人生を送っていたのではないかと…
 
 私の周りには自主的に立ち上がってくれる人たちが多くいます。その方達は「何かをなそう」と思って立ち上がってくれた訳ではなく、目の前に困っている人がいて、その人達の一助になりたいという思いが、その様な行動に繋がっていると感じます。
 
 世の中を見渡せば〇〇NGOが海外の貧困を救うとか、〇〇団体がテクノロジーを使って地球環境を改善とか大きなニュースばかりが目に入ってきます。もちろん海外の貧困や紛争、差別など明日の命の約束すらない方々のことも大切です。
 でも、困っている人や事は意外と自分たちの近くにもいるのではないでしょうか。家族や友達、学校や職場、地域などに目を向けても多くの課題が山積している様に感じます。
 
 私がやっていることは、ほんの一握りの活動でしかありません。そんな私が、もしお伝え出来ることがあるとすれば先ずは自分の身近な課題から取り組んでみてくださいということかと思います。

3つのポイント

 

どうだろう、社会に役立つ活動を始めるうえで、参考になっただろうか。
坂口氏の話を3つのポイントにまとめてみた
 
①身近な人の困りごとに目を向けよう
 いきなり大きな課題を見てしまうと「自分一人がやっても」と尻込みしてしまう。自分の身近な人の困りごとを解決するところから始めよう。世界には、きっと同じことで困っている人がたくさんいる。
 

②自分自身も楽しむ
 坂口氏は純粋に子供と遊ぶこと、テニスをすることを楽しんでいる。氏の活動を見ていると「してあげる」というよりは「一緒に楽しむ」というスタンスに見える。活動を長く続けるためには自分自身も楽しむことが重要だ

 

③見返りを求めない
坂口氏は見返りを求めることがない。自身の浦安のクラブはもちろんのこと、前述の仙台、名古屋、群馬、山梨へのサポートもすべて手弁当で行っているという。見返りを求めてしまうと、何もできなくなってしまうし、活動が広がらない。

あなたにできること

「心の充足感」を得るために、AI時代に生き残っていくために、小さくても良いから何かを始めてみてはどうだろうか。近所の一人暮らし高齢者に、毎朝あいさつをする、通勤途中の公園にあるゴミを拾う。どんなささいなことでも良いのだ。とはいえ、身近な人の困りごとが見当たらないというあなたに、とっておきのチャンスを紹介しよう。
 
 坂口氏は現在、車いすの購入費用を集めるクラウドファンディングを実施している。このプロジェクトでは、支援のリターンとして、プロボノやボランティアなどの活動支援の機会が用意されている。ホームページやチラシの作成、新しい車いすの開発、車いすテニス興行の企画検討など、あなたのスキルで子供たちを笑顔にできるかもしれない。興味を持った方はこちらへ
https://www.spportunity.com/chiba/team/281/detail/
 
 
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