4月17日に行なわれたチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝・第2戦のマンチェスター・シティ対トッテナム・ホットスパーは…

 4月17日に行なわれたチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝・第2戦のマンチェスター・シティ対トッテナム・ホットスパーは、4-3の壮絶な打ち合いになった。この結果、第1戦を合わせたトータルスコアは4-4の同点に。アウェーゴール数の差で、トッテナムがクラブ史上初となるCLベスト4進出を決めた。



クラブ史上初のCLベスト4進出を決めて喜ぶトッテナムの面々

 キックオフ直後から、息もつかせないスリリングな展開となった。

 開始から7分までに両軍が得点。さらに11分までにそれぞれが加点し、スコアは2-2となった。この試合のテレビ解説を務めた元イングランド代表DFリオ・ファーディナンド氏が「CLの舞台でこんな立ち上がりは見たことがない」と驚いたほど、序盤から試合は混沌とした。

 21分にマンチェスター・Cがゴールを決めて試合を折り返し、さらに59分にも加点して4-2と引き離すも、73分にはCKをフェルナンド・ジョレンテが押し込んでトッテナムも3点目(この時点でトッテナムが勝ち抜け)。ハンドの可能性があったため「ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)」に判定が持ち込まれたが、得点は認められた。

 しかし、主審が確認した映像とは別の角度で捉えたリプレーでは、ボールがジョレンテのひじに触れてから腰に当たり、ネットに吸い込まれていた。

 大接戦の試合は、これだけでは終わらない。

 後半ロスタイムの90+3分にはラヒーム・スターリングがネットを揺らしたが、ラストパスを出したセルヒオ・アグエロにオフサイドの可能性があり、再びVAR判定に(得点が認められれば5-3でマンチェスター・Cが勝ち抜け)。わずかにオフサイドラインに飛び出しているアグエロをリプレーが捉え、ゴールは認められなかった。

 結局、試合はこのまま4-3でホイッスル。終了直前にボールをロストし、マンチェスター・Cに決定機を許したクリスティアン・エリクセンは、「今夜、僕は世界で最も幸運な男。最後にスターリングが決めた瞬間、すべてが終わったかと思った。オフサイドの判定が下ると神に感謝した」と安堵した。一方、マンチェスター・Cのイルカイ・ギュンドアンは地面に伏して涙を流した。

 そんな目のまわるような展開に、英紙『デーリー・テレグラフ』が「信じられない!」と見出しを打てば、英紙『ガーディアン』も「劇的な展開になった。どこから語ればいいのかわからない」と世紀の大接戦を報じた。後半ロスタイムに入り、ヒートアップしたペップ・グアルディオラ監督とマウリシオ・ポチェッティーノ監督の両指揮官が思わずコートを脱ぎ捨てた光景からも、いかに白熱した試合だったかが伝わってきた。

 さて、この一戦の勝負の分かれ目はどこにあったのか。ポイントはいくつかあったように思う。ひとつは、トッテナムのハイプレスだろう。

 試合前、英紙『タイムズ』がポイントに上げていたのが、このハイプレスだった。ホームで行なわれた第1戦でも、トッテナムが自陣に引きこもることなく真っ向勝負を挑んだことが、1-0の勝利を呼び込んだ要因だった。

 同紙は「トッテナムは勇気を持って前線からプレスをかけたい。とくにマンチェスター・CのDFアイメリク・ラポルテのような攻撃の起点となるDFを自由にしてならない。自陣深くに引いてしまえば、マンチェスター・Cに攻め込まれる。ビルドアップを寸断する必要がある」と、トッテナムが勝ち抜けるための条件としてハイプレスを挙げていた。

 実際、トッテナムは立ち上がりから相手を囲い込むようにしてハイプレスを仕掛け、マンチェスター・CのDFに圧力をかけていった。こうした積極策が得点につながったのが、トッテナムの2点目だ。

 プレミアリーグのDFとしてはトップとなる92.33%のパス成功率を誇るラポルテのトラップが大きくなったところを見逃さず、すばやくボールを奪取しゴールにつなげた。試合を通してトッテナムのプレスは、実に効果的だった。

 もうひとつ、勝負を分けたポイントとして挙げなくてはならないのが、2ゴールを決めたソン・フンミンだ。

 試合後、ファーディナンド氏が「試合前の状況を思い出してほしい。ケインが負傷離脱し、エースを欠くことになったトッテナムファンは非常に心配していた。ところが、ソン・フンミンはこの重責を背負い、見事に結果を残した。美しいゴールだった」と絶賛した。決定力の高さはもちろん、エース不在というプレッシャーのかかる試合で2ゴールを決めたメンタルの強さを褒めていた。

 それでも、勝負の差は紙一重で、試合の分岐点も複数あった。どちらに転んでもおかしくない大接戦であったのは間違いない。

 トッテナムのベスト4進出を決めたジョレンテのゴールについて、グアルディオラ監督は「VARを支持するが、別の角度から見ればハンドで、主審の見ていた角度ではハンドでなかった」と、VAR判定に注文をつけた。「優勝候補」と言われていたマンチェスター・Cとしては、第1戦でアグエロがPKを失敗したことも大いに悔やまれる。

 とはいえ、総合力ではわずかにトッテナムが上回っていたのも事実だ。今シーズンは選手補強がひとりもなく、シーズン前の下馬評は必ずしも高くなかった。加えて、第1戦でエースのハリー・ケインが足首のケガで離脱。第2戦は苦戦が予想されていた。

 しかし、トビー・アルデルヴァイレルトとヤン・フェルトンゲンのベルギー代表DFで編成するセンターバックの安定感や、相手プレスにも屈しない彼らのボールさばきのうまさを含めた「チーム全体の総合力」で言えば、今回はトッテナムに軍配が上がった。複数のフォーメーションを自在に使い分け、攻撃も抜群のコンビネーションで崩す「組織力の高さ」も、間違いなく勝因のひとつだ。

 エリクセンが「ジェットコースターのような試合だった」と形容し、マンチェスター・Cのフェルナンジーニョが「VAR、くそったれ」と指摘した今回の一戦。見どころ、物議を醸すシーン、ドラマが、この試合に凝縮されていた。