今年1月に行なわれたアジアカップは、清水エスパルスのストライカー、北川航也にとってまたとないチャンスだった。初戦の…

 今年1月に行なわれたアジアカップは、清水エスパルスのストライカー、北川航也にとってまたとないチャンスだった。初戦のトルクメニスタン戦で2ゴールを決めたエース大迫勇也(ブレーメン)が、その直後の練習で故障。大迫は大事を取ってそこから4試合欠場することになった。

 北川はそのうち3試合をスタメンで、1試合は武藤嘉紀(ニューカッスル)に代わり途中出場した。チームは4連勝したが北川はノーゴール。プレーの出来もすべてサッパリだった。準決勝(イラン戦)、決勝(カタール戦)で大迫が復帰すると、北川は交代出場さえ叶わなくなった。 

 森保ジャパンには、2戦目のパナマ戦から招集されてきた北川だったが、アジアカップのこの不出来で、監督の信頼を失うだろうなとの読みは的中した。続くコロンビア戦、ボリビア戦で招集外になることは当然の帰結だった。

 このまま下降線を辿るのか。あるいは再浮上を果たすのか。



ジュビロ磐田戦で今季3ゴール目を決めた北川航也(清水エスパルス)

 身長180cm。大型の部類に入るFWだが、大型選手が持つネガティブな面はない。175、176cmぐらいの動きができる。技術力も同様。見切ることができない捨てがたい魅力がある。

 イメージが重なるのは柳沢敦だ。なにより、DFラインの背後を突く動きが似ている。動き出しが抜け目なくスムーズなのだ。ネコ科の動物を連想させる素早さ、滑らかさがある。

 柳沢が177cmだったので、北川はそれより3cm高いことになるが、その差を感じさせない動きのよさが魅力だ。それでいて、ヘディングもそれなりに強い。

 清水がFC東京と対戦した第6節の試合では、ヘナト・アウグストが右サイドからふわりと揚げたロブ気味のクロスに鋭く反応。高い打点から身体を捻り、ゴール左隅へ先制ゴールを叩き出した。

 悪い意味で柳沢的だったのが、同じくFC東京戦で、GKと1対1になりながらシュートをサイドネットに外してしまった後半27分のシーンになる。周囲の期待感を裏切る中途半端な外し方が、時に柳沢が見せた煮え切らないプレーにそっくりなのである。”いっぱいいっぱい”ではないゆとりをどこかに感じさせながら、外してしまう。岡崎慎司(レスター)のようなひたむきさ、泥臭さはない。

 結局この試合、清水はFC東京に逆転負けし、今季初勝利を逃した。かえすがえすも北川の煮え切らないシュートが悔やまれるのだった。

 チームに片目が開いたのは第7節。静岡ダービーのジュビロ磐田戦だった。先制点を挙げる展開は前節と同様だった。前半36分の鄭大世の先制ヘッドを、北川はアシストで貢献。ゴール前で粘りのプレーを見せた。

 金子翔太のクロスに反応し、磐田GKカミンスキーを泳がす枠内シュートをダイビングヘッドで放ったり、ゴール前の混戦からトリッキーなシュートを放ったり、さらには深い切り返しからミドルシュートを放ったり、この日の北川はいつになく乗っていた。

 だがスコアは、後半13分まで0-1で推移していた。逆転負けを食らった前節のFC東京戦と同じ展開で、片目の開かない清水にとって重苦しいムードになりかけていた。北川に待望のゴールが生まれたのは、まさにそのタイミングだった。相手の横パスを中村慶太がカットするや、北川はDFの背後に、例によって素早い動きで飛び出した。

 その鼻先にパスが出ると、北川はGKカミンスキーと1対1になった。そして狙いをその股の下に定めるや、冷静に流し込んだ。それは北川らしい滑らかな動きでもあった。出会いがしらではない、もう一度同じプレーをしてもゴールが決まりそうな、完成度の高いプレーに見えた。

 清水は磐田の新外国人選手ロドリゲスに1点を返されたものの、そのまま逃げ切り、待望の今季初勝利を挙げた。マン・オブ・ザ・マッチは北川か鄭大世か、微妙なところだ。22歳の北川もよかったが、35歳の鄭も負けず劣らずの出来だった。

 両者はライバル関係にある。というのも、清水には終盤、北川に代わって投入されたドウグラスというもうひとりのFWがおり、2トップをまずドウグラスありきで回そうとしているからだ。

 昨季の後半、トルコのアランヤスポルからやってきたこのブラジル人選手は、加入するや13試合で10ゴールをマーク。チームを8位に押し上げる原動力として活躍した。だが、この頼れる外国人選手に、今季開幕前に不整脈が発覚。ここにきてようやく回復してきたところだ。ドウグラスがベストコンディションに戻ったとき、はじかれるのは北川か鄭大世か。北川の代表復帰はこのチーム内の争いに勝利することが前提になる。

 代表チームは、カタールW杯が開かれる2022年11月には32歳になっている大迫勇也の後釜を欲している。コロンビア戦、ボリビア戦では、25歳の鈴木武蔵と22歳の鎌田大地が試された。北川のライバルと言っていいだろう。似ているのは鎌田だ。年齢のみならず、体格及びDFラインの裏を狙うプレースタイルに共通点がある。

 いずれにしても大迫とはタイプが異なる。アジアカップでは北川にも問題はあったが、周囲にも同じくらい問題があった。北川が周囲に合わせるのではなく、周囲が北川に合わせる。ストライカーとその他の選手との関係はこれが筋だ。偉いのはストライカー。中盤ではない。

 北川やかつての柳沢が、煮え切らない選手に見えてしまう理由も、主役として胸が張れていないからである。周囲が主役としてリスペクトしていないからでもある。大迫が不動のストライカーとして認められたのも、ロシアW杯のせいぜい1年前だった。それまでは、彼もまた煮え切らないストライカーだった。

 自分をどう演出するか。問われているのは、ストライカーらしい雰囲気づくりだ。北川とライバル関係にある鄭大世にはそれがある。13歳年上のベテランストライカーと北川は、いい感じで切磋琢磨してほしいものである。