早大が最後に東京六大学リーグ戦(リーグ戦)で優勝を飾ったのは、2015年秋のこと。そこから4年が経過した今、チーム内に東京六大学の頂点から見える景色を知る者はいない。しかし、だからこそ、誰よりも勝利に飢えている男。それが今季の早大を率いる加藤雅樹主将(社4=東京・早実)だ。求めるものは7季ぶりの賜杯、ただ一つ。4番として、主将として、胸に秘める熱い思いを語っていただいた。

※この取材は4月5日に行われたものです。

「自分の背中がチームの姿」


取材に応じる加藤

――春季リーグ戦が開幕直前となった、現在の心境はいかがですか

 もうすぐ始まるので、もっともっと詰められるところを詰めなくてはいけないと思っていますし、優勝のためにやれることをやり切れたらいいと思います。

――加藤選手にとっての大学ラストイヤーの幕開けともなります

 まだ優勝していないので、優勝しないと卒業できないという気持ちでいます。何としても優勝するという気持ちです。

――これまでの大学3年間を振り返って、どのように感じますか

 1年生の時は下積みだったので試合に出るイメージもあまり湧かなくて、苦しい時間だったなと思います。それが2年生になって生きて、でも2年生では試合に出て苦しんで。3年生になっても、良い時も悪い時もあったので、この一年で『今までの3年間が間違いじゃなかった』ということを証明したいと思っています。

――苦しいことの方が多かった3年間だったのでしょうか

 そうですね。良い時もありましたけど、苦しいことが多かったです。でも、前に進んできたとは思っているので、その経験を今年に生かしたいと思っています。

――昨年の秋季リーグ戦も苦しいシーズンとなったと思います。そこで得た収穫はありましたか

 (主力となってから)初めてスタメンを外されたんですけれども、ベンチから見える景色というのが(収穫でした)。今まで自分はいろいろなものを勝手に背負って苦しんでいましたけど、試合に出られる喜びや野球ができる楽しさをかみしめなくてはいけないなと感じました。

――秋季リーグ戦が終わってからのオフシーズンは、どのようなことに取り組まれていましたか

 自分はチームのキャプテンなので、言葉もそうですが、やっぱり背中で引っ張れるように。自分が下を向いていたらいけないので、自分がうまくいかなくても明るく(振る舞う)ということは、このオフにやってきたつもりです。

――明るくチームを活気付けるような主将像が理想ということでしょうか

 そうですね。明るいだけでは駄目だと思うんですけれども、自分の背中がチームの姿になると思っています。自分が下を向いていたらチームも下を向いてしまうので、前向きな発言や前向きな行動を、自分なりに意識しながらやっています。

――その主将像の形成には、早実高時代の経験も影響しているのでしょうか

 そうですね。早実時代は下級生の時、自分は下を向いていることが多かったんですけれども、上級生になった時に「自分はこのままでは駄目だ」と気付いた時がありました。そこからチームが強くなった経験があるので、それをやってみようという気持ちです。

――個人のことよりもチームのために時間を使ったオフだったということなのでしょうか

 個人のことはもちろん、自分で考えながらいろいろなことをやっていますが、全体練習の中では自分のことだけで手いっぱいにならないように。自分がやるべきことをちゃんとしたうえで、自分がどう見られているのかということを、すごく意識して練習していました。

――オフを過ごす中で、チームの変化を実感できた点があれば教えてください

 シートノックでは詰めるべきところを詰められていますし、守備や走塁でそういう練習ができているので。今までは『一球の重み』をどう出せばいいか分からない部分があったんですけれども、一球に対してみんなが集中するというのがどういうことかというのを、チーム全体が分かってきたような気がします。

――個人としてオフに取り組んできたことは、主にどんなことですか

 バッティングでは無駄をなくして安定感を出すということ。これは永遠の課題だと思っているので、その意識をしながらいろいろな練習をしていました。

――過去にはリーグ戦期間中にフォームをガラッと変えることもありました。『フォームの安定感』という課題に対し、手応えはいかがですか

 ほとんど完成している感じはありますし、自分の中では少しずつできてきている気がします。

「求めているところはこんなものじゃない」


4番として、その打棒でもチームを引っ張る

――現在のご自身の調整段階をパーセンテージで表すと、どのくらいまで仕上がっていると考えますか

 30パーセントくらいですかね。自分としては、求めているところはこんなものじゃないので。もっともっと良くなりたいという気持ちを込めて、30パーセントです。

――春季オープン戦では安打も増え、調子は上向きに見えるのですが

 自分が理想とする打球は右中間、左中間をライナーもしくは、もう少し角度が付いて抜けていく打球なんですが、そういう打球がまだ出ていないので。ヒットはそれなりに出ていて、それは良いことだと思うんですけれども、結果ではなく内容をもっともっと良くしていきたいという気持ちがあります。後退しないように、前進していけるようにやっていきたいです。

――筑波大戦(〇13-0)では待望の本塁打が生まれました。その打席を振り返っていかがですか

 ああいう打球がたくさん出たら良いなと思っています。もっとあの当たりを増やしていくのが目標です。

――加藤選手にとって本塁打とは、安打の延長線上にあるものなのでしょうか。狙って打つものなのでしょうか

 何て言ったらいいんですかね。少し頭にはあって、でも意識しないようにしているみたいな。「すごく打ちたいけど、意識しないようにしている」くらいがちょうどいいですね。そのあたりはバランスなんですけど、狙わないと角度が付かないので。そこは難しくて、気持ちの面でもホームランというのは打つのが難しいものだと思います。

――打球に角度を付けるというのは意識して行うことなのでしょうか

 勝手に付くと言えば付くんですが、しっかり振らないと角度は付かないので。自分も完全には分からないですけれども、少し頭にホームランがないと、ホームランは打てないかなとは思っています。

――4番打者として打点の数が重要になると思いますが、加藤選手にとっての『打点観』を教えてください

 打ってほしいところで打つのが4番だと思うので、打点は多くないといけないと思います。1年くらい前は考え方が今と違って、自分がヒットを打てば打点も必然的に増えると思っていたんですけれども、そうでもないかなと思い始めました。(最近は)打点を(増やそうと)意識するということはできるんじゃないかと考えていて、例えば『ここで点が欲しい』というところで、もし(安打が)打てなくても点を取ることはできるので。そういうバッティングができたら良いとは思っています。

――チームとしての春季オープン戦の戦いぶりを振り返っていかがですか

 良いところも悪いところも出ていると思っています。最近に関して言えば悪いところばかりなので、ベンチの雰囲気をはじめ、まだまだ詰められるところがあると思います。ただ、沖縄キャンプから社会人対抗戦までは、うまくいき過ぎていた部分もあったと思うので。そういう意味では、今はいろいろなボロが出だした頃だと考えていて、プラスに捉えるべきなのかなと思います。

――特に投手陣への印象はいかがですか

 みんなが良い球を投げていますし、すごく信頼しています。気負ってほしくはないですけれども、やってくれるんじゃないかと思っています。

――打線として、「何点取れば大丈夫」のようなイメージはしていますか

 5点取るということをチームとして掲げています。そういう打線を目指さなくてはいけないと思いますし、それができれば(投手陣も)楽になると思うので、まずは5点取れたらと考えています。

――現在のチームの完成度をパーセンテージで表すと、どのくらいの仕上がりですか

 40パーセントですね。

――どのような部分が未完成だと考えているのですか

 技術はもちろん大事なんですけれども、自分が3年間戦ってきてやはり大事だと思ったのは、気力や執念、根性です。技術的に優れていないと勝てないですけれども、それ以上に気力で(相手を)上回っていないと勝つことはできないので。気力の充実はここからの2週間でもできると思うので、そこを詰めていきたいと考えています。

――今年のチームの特徴があれば教えてください

 個性豊かなところですかね。去年はしっかりされている方が多くて、それに比べると今年の代は、自分を持っている人間が多いので。そういう意味では、うまくいけばプラスアルファで働く力も大きいのかなと思います。

「必ず優勝する。それだけです」


昨秋不振にあえぐ中、明大1回戦で先制打を放った。他の誰にも負けない勝利への執念を持つ

――『主将で4番』という立場で迎える春季リーグ戦となりますが、これまで経験した開幕との心境の違いはありますか

 自分はキャプテンなので、絶対に下を向かないということは決めています。どんな逆境に立たされようと、自分は下を向かないと決めているので、本当に命懸けで戦っていきたいと思います。

――昨秋経験した不調の原因は特定できているのでしょうか

 一番はやはり準備不足だと思います。準備を怠らなければもう少し「こうできたんじゃないか」という後悔があるので、そういうことを後から思わないように、今は「本当にやり切った」と言えるまでやるべきことをやってリーグ戦を迎えたいと思います。

――準備というのは打席での準備という意味でしょうか、それとも開幕までの準備という意味でしょうか

 東伏見での準備が一番です。そこが試合に出るので。

――技術面やメンタル面など、さまざまな準備が必要になりそうですね

 技術…。技術よりもやはりメンタル的な面が一番大きいと思います。技術がないと打てないのは間違いないんですけれども、(今から開幕までの)2週間で詰められるものではないので。技術的なことはこのオフでたくさんやってきたので、あとは気力やコンディションですね。

――以前のインタビューで「打席の中で迷ってしまうことがある」と発言していました。今でもそのような打席はあるのでしょうか

 そうですね。迷うことは今でもたくさんあります。でも迷っている間は打てないので、割り切りも必要になると思います。

――春季リーグ戦は開幕カードが東大、次カードが明大となっています。両校の印象はいかがですか

 東大はピッチャーも良いですし、野手にもパンチ力のあるバッターが多いので、そういう意味で初戦の入りはすごく大事になると思います。明治は森下(暢仁主将、4年)を筆頭にピッチャー陣がすごく充実しているので、そこを打ち崩せるかが重要になると思います。

――プロ志望を明言している加藤選手にとって、森下投手はこれからも競い合っていく相手になると思いますが

 先のことは何も考えられないですけれども、この大学生活では、自分は一番「森下には負けたくない」と思って打席に入っているので。良い対決をして、六大学が盛り上がればいいなと思います。

――個人としてのリーグ戦での目標は何ですか

 勝負どころで打ちたいので、勝利打点や勝ち越し打のような、名前の付く打点をたくさん挙げられたらいいと思います。とにかく打点。チームのために1点でも多く取りたいと思います。

――数字としての目標はありますか

 13が自分の最高なので、そこは越えたいです。15くらい取れるようにやっていきたいです。

――今季も他校からの徹底的なマークが予想されます

 オープン戦で順調だからリーグ戦でも打てるかと言ったら、そんなことはないです。オープン戦とリーグ戦は全く違います。気を引き締めて、出来る準備を全てしてリーグ戦に臨みたいと思います。

――チームにおいてご自身が担いたい役割はどのようなものですか

 やっぱり自分はキャプテンということを強く意識しています。下を向かず、チームを引っ張り続けるということだけは絶対にぶれずに、強い気持ちを持ってやっていきたいです。

――春季リーグ戦での抱負をお願いします

 必ず優勝する。それだけです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 望月優樹)


7季ぶりの優勝へ、準備は最終段階です!

◆加藤雅樹(かとう・まさき)
1997(平9)年5月19日生まれ。185センチ、85キロ。東京・早実高出身。社会科学部4年。外野手。右投左打。色紙への一筆をお願いした際、すぐさま『優勝』と筆を入れた加藤選手。個人としての目標は打点でのキャリアハイですが、それもチームの勝利につながるからこそ掲げたもの。誰よりも勝利にこだわる主将が、必ずチームを優勝へと導きます!