世界フィギュアスケート国別対抗戦の最終日。最終種目の女子フリーでは、エリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)とブレイディ・テネル(アメリカ)が完璧な滑りを見せて、それぞれ153.89点と150.83点で1位と2位を獲得した。一方、日本…

 世界フィギュアスケート国別対抗戦の最終日。最終種目の女子フリーでは、エリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)とブレイディ・テネル(アメリカ)が完璧な滑りを見せて、それぞれ153.89点と150.83点で1位と2位を獲得した。一方、日本の紀平梨花と坂本花織はチームの銀メダル獲得に貢献したが、坂本が3位で紀平は5位、と悔しい結果に終わった。

 ショートプログラム(SP)3位で10番滑走だった坂本は、最初の3回転フリップで着氷を乱し、予定していた連続ジャンプにならない滑り出し。これは次のダブルアクセルに3回転トーループを付けて取り戻したが、続く3回転ルッツでは着氷を乱してGOE(出来ばえ点)で減点されてしまった。そこからリズムを取り戻し、後半のジャンプはミスなく終えて得点をシーズン自己ベストの146.70点にしたが、トゥクタミシェワとテネルを上回ることはできなかった。



自己ベストを記録したが悔しさの残る演技になった坂本

「今日も笑顔がなかったですね。けっこう緊張していました。ルッツがすごく危ない状態になって耐えた時、応援席から『ガンバ!!』という声が聞こえたので、それがすごく後押しをしてくれました」

 悔しかったのは、振り付けのブノワ・リショーにブラッシュアップしてもらった演技を最後の最後にできなかったことだった。

「最初のフリップを降りてからルッツまでと、その次のフライングシットスピンまでの振り付けをいっぱい練習してきたので……。ジャンプが決まれば本当に流れもよくできるんですけど、乱れてしまったので、つなぎをしっかりできなかったのが残念です。『練習でできていたから大丈夫』という気持ちだったんですけど……」

 それでも演技構成点では、次に滑ったトゥクタミシェワを0.16点上回る、全選手中トップの71.90点を獲得。これがシーズン自己ベストの得点につながった。

「この出来で自己ベストを更新できたのだから、もっとしっかり完璧にやればもうちょっと上がると思うので、来シーズンもまたがんばりたいと思います。世界選手権後は疲れもあったけど、最後の試合だからベストを尽くそうと思って臨みました。四大陸や世界選手権でやってしまったジャンプの抜けは、今回はなかったのでちょっとだけ成長したと思うけど、まだまだです」

 トゥクタミシェワが最高点を出したあとの最終滑走だった紀平は、なかなかトリプルアクセルを決められなかった6分間練習の不安がそのまま演技に出る格好になった。最初のトリプルアクセルは回転不足から転倒。そこで、次のアクセルをダブルにして、3回転トーループを付けた。これは「朝の練習から考えていたけど、6分間練習でダブルにすると決めた」という構成だった。

「ショートが終わった次の日は、体がガチガチで動かなくなっていました。でも、今日はその時よりだいぶましになって自信を取り戻してきたんですが、万全の状態に自分を合わせることができなかった。もっと早めに手を打ってケアをすればよかったと思います」

 そう反省する紀平は、後半の3回転ルッツ+3回転トーループでも、少し力みが出てセカンドのトーループの軸が傾いてしまい、転倒。今季の彼女からすれば、珍しいシーンだ。

 得点は138.37点。グランプリシリーズフランス大会よりも0.09点高いだけで、今季2番目に低い得点の5位と、想定外の結果に終わった。おそらく、気持ちが少し引き気味になっていたことも影響したのだろう。



紀平はトリプルアクセルで転倒。得点を伸ばせなかった

「あの3-3は、練習からあまりうまくいってなかったので思い切り跳んだけど、脚がちゃんと締まっていなかったのだと思います。練習でも一番ミスの多い難しいジャンプだけど、どんな状態になってもそれを決めなければいけないと思いました。トリプルアクセルで転倒したあとは落ち着いてできていたので、『体力的にけっこうキツいな……』という面でのミスだったのかもしれない。大きな試合でも、自分の体調と感覚をリンクにしっかり合わせていかなければいけないな、と思いました」

 シーズン最後のこの大会では、外国勢はあまりプレッシャーもなく臨んでいるように見えた。しかし、日本勢は地元開催でチーム戦ということもあって、緊張感も高かったのだろう。坂本と紀平はともに、SPでは納得の演技をしながらも、シーズン最後となるフリーではミスが出る悔しい滑りに終わった。

 だがそれは、グランプリファイナル制覇という勲章を得た紀平にとっても、全日本優勝という結果を残した坂本にとっても、来季へ向けて気持ちを引き締めるうえでよいきっかけになったはずで、進化のための糧になった、とも言えるだろう。