昨春は、新人戦の主力として活躍。秋には、満を持して東京六大学リーグ戦(リーグ戦)でのスタメンデビューを果たした金子銀佑(教3=東京・早実)。今季は新ポジション、二塁手に定着した。心機一転さらなる成長を遂げる金子に、春季リーグ戦を直前にした…

 昨春は、新人戦の主力として活躍。秋には、満を持して東京六大学リーグ戦(リーグ戦)でのスタメンデビューを果たした金子銀佑(教3=東京・早実)。今季は新ポジション、二塁手に定着した。心機一転さらなる成長を遂げる金子に、春季リーグ戦を直前にした現在の心境を伺った。

※この取材は4月4日に行われたものです。

『忠実な野球』を目指す


取材に応じる金子

――現在の打撃の調子はどうですか

 打撃の方は沖縄(キャンプ)で結構実戦を積むことができました。冬にやってきたことが実戦にどうつながるか不安な感じで沖縄を迎えたんですけど、意外と良いかたちで結果が出せたので良かったです。沖縄遠征に関しては思っていた以上にいけるっていう気持ちにはなれたんですけど、今リーグ戦前にまた考える時期になってきて。でもバッティングは水物だと自分でもずっと思っているので、良い時があればまた絶対下がるということは分かっているし、良い時でもそれは常に考えてやってきたので、ここであとリーグ戦までちょっとなので、バッティングに関しては焦らないで、しっかりもう1回やってきたことを見つめ直して、やけにならないように冷静にできればなと思います。

――守備面はどうですか

 守備の方はずっとセカンドを任されてやってきて、慣れてきたなというのはあります。でも慣れた時が一番怖いというか、バッティングと同じで、リーグ戦前にもう1回基本の動きから確認して、監督(小宮山悟監督、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)が目指す忠実な野球をできるように、動きから何から見直していかなければと思います。

――今季から本格的に二塁手に転向されました

 やっぱりセカンドはやったことなかったですし、ショートとかは華というイメージで、セカンドは色々考えて、色々な動きがあって、という影の華というイメージです。今檜村さん(篤史副将、スポ3=千葉・木更津総合)がショートをやっていますし、そこで自分が影の司令塔というか、まだそこまでにはなれていないんですけど、リーグ戦を重ねていくにつれて、そういう存在になれればいいかなと思います。

――やはり三塁手などに比べて頭は使いますか

 そうですね。常にどんなプレーでも絡んでくるので、サードと比べると動きは多いです。

――二塁手になって特別に取り組んでいることはありますか

 ダブルプレーを取るときに逆の動きをするので、それは今までサードやショートばかりでずっとこっちの動き(体を開かずに打球を処理してそのまま送球する動作)だったので、それを捕ってセカンドに投げる(二塁ベースに球を転送するために、一度体を開いて送球する動作)っていう動きはすごく難しいです。今でも特に「緩いボールをしっかり捕って、しっかりステップをして投げる」っていうのは、田中浩康コーチ(平17社卒=香川・尽誠学園)に教わっていて、それはセカンドになってからやり始めた練習です。

――他に田中コーチに個人的にアドバイスされていることは

 自分は捕ってから速くということを意識して、ついこの前までやってたんですけど、沖縄とかでも社会人選手と試合をする機会が多くて、その時にやっぱり自分の守備と、上(のレベル)でやっている選手たちの守備と、それと田中コーチが言ってくれることを比べると、全然自分がやっているような守備では上の上にはいけないなということに気が付きました。速さっていうよりは、いかに捕れるものをしっかりアウトにするかってことが大事だと気付いて。そういう意味で田中コーチに言われたのは「しっかり両手で捕って、(グラブに球を)納めてから足を使ってしっかり投げる」という基本的なことです。自分はここまで小・中・高・大学1年、2年とやってきて速く投げた方がかっこいいんだと思っていたんですけど、本当につい最近ここにきて、これじゃ上に行けないな、チームには必要ないなという考えに変わりました。このタイミングで知れたのはすごく良かったと思うので、まだ自分の中では違和感はあるんですけど、さっきも言った忠実な野球、忠実な守備で、地道にやるしかないなという感じです。

――これまでは三塁手だったから早く投げようとしていたのですか

 サードの時は特別な動きもなかったので、見せてやろうみたいな子供な考えがありました。早めに知れてよかったなと感じています。

――打順は2番ですが、試合中意識していることは

 中学の時も2番を打っていて、2番って大事だなぐらいの感じではいたんですけど、小宮山監督になってから2番打者の難しさを知りました。色々レベルの高いことを要求されるんですが、それを今の自分はまだこなせていないというか、要求に応え切れていないので。打撃に関しては色々要求されるということを分かった上で打撃練習やシート打撃、練習試合をやって、今まで以上に頭を使ってから打席に入っているような感じです。難しいです。

――やはり右打ちへのこだわりはありますか

 新体制になってから今までより監督さんにも「右にしっかり強い打球を打ってくれ」と個人的に言われていて、そういうことを言われると自分ももっと磨こうという気になります。まあ右が得意というか、今までやってきたバッティングの結果、その方向が1番自分に合っているということだと思うので、右打ちは意識的というか、自分のバッティングを磨くイコール右打ちの技術が上がると捉えています。ランナーも進みますし、そう言った意味では、それを評価してくれている分結果に出さないといけないので、そこは慎重にやっていきたいと思います。

――打撃面でも現役時代の田中コーチとイメージが重なる部分があると思いますが、何かアドバイスは

 もちろんバントの基礎から、状況に応じたスイングだったり、後はバスターの基本動作だったりを教わってそれを自分なりにバッティング練習で生かすっていう感じです。バスターの練習とかは、今までは自分の感覚だけでしかやってこなかったので、プロの第一線でやっていた方の意見というのは本当にありがたいです。

――今年は上級生となりましたが、昨年と意識の変化はありますか

 一番変わったのは背番号です。36番から、去年西岡さん(寿祥、平31教卒=現パナソニック)がつけていた2番をつけることになって、やっぱりレギュラーで出なきゃいけないんだという上のスタッフの方からの信頼というかメッセージというか、そういうことを考えたら、下手なプレーとか下手なバッティングとか簡単にできないなということはすごく感じるので、まずはその背番号が変わったところから自分は身が引き締まりました。

――プレッシャーはありますか

 優勝はまだしてないので、プレッシャーとかは感じても仕方ないと思うんですけど、もう挑戦者という気持ちで。どこの大学であろうが、自分たちは下から絶対勝つんだというような気持ちでいかないと、どのチームにも負けてしまうと思っています。

「チームが勝ってナンボ」


今春は、2番・二塁手として戦う金子

――昨年の秋季リーグ戦を振り返ってみていかがですか

 自分は初戦の法政戦は(ベンチに)入ってなくて、2カード目の立教戦から入らせてもらって、そこから確か全部勝ち点取れたんですよね。やっぱり感じたのは4年生が試合ごとに一つになっていくということで、自分はそこに混ぜてもらったという感じでした。初戦がやっぱり大事というのは毎リーグ言ってることで、案の定、去年の秋は初戦を落としちゃって結局優勝できなかったので、今年も最初がカギになると思います。

――個人成績については

 確か3割乗らなかったんですよね(2割9分4厘)。自分は個人の成績を気にすると駄目で。特に最近の自分がそうなので、やっぱりチームが勝ってナンボなので、あんまり(個人成績は)意識はしたくないですね。チームが勝てばそれでいいと思いながら、この春は戦えたらと思います。

――印象的なご自身のプレーは

 やっぱり最後早慶戦でサードゴロが飛んできた時ですね(慶大3回戦、金子が三ゴロを処理し試合終了。慶大から勝ち点を奪った)。でもその前にエラーをしていて7、8回くらいまでは飛んできたらどうしようというプレッシャーがあったんですけど、最後あの場面になってなんか吹っ切れたというか。2アウトになったら涙がにじんできて、それで飛んできた打球は何も怖くなかったです。もう飛んでこいという感じで。そこで気持ちの面がプレーに影響するな、良い方にも悪い方にも転がるなというのが分かって、終わってみたらそのプレーはすごく大きかったかなって。今後につながるかなと思いました。エラーして引きずってもしょうがないってことですね。

――その時の気持ちは現在でも生かされていますか

 この対談で、今そういえばって思い出させてくれた感じです。いいタイミングでした(笑)。

――対戦してみて印象深かった選手はいますか

 相手を気にしたくない派なんですけど、やっぱり早慶戦で、中学校の1つ上の先輩の髙橋投手(佑樹、4年)と対決したのが多分初めてで。東京神宮シニアっていうチームだったんですよ。それで神宮球場でやるっていうのは楽しめたかなと思います。でもどこのピッチャーもすごくいい選手ばかりなので、食らい付いていくしかできないので、誰ってよりかは全投手相手に絶対打つっていう気持ちでいけたらなと思います。

――冬の間重点的にやっていた練習はありますか

 バッティングですかね。自分はどうしても右に右にという意識があるが故に、(バットを球に)押し付けるバッティングだったんですけど、それを新しく来てくださった徳武コーチ(定祐、昭36商卒=東京・早実)から「バッティングは手首をしっかり返さないといけないんだ」と言われて、そこの練習はもうひたすらマンツーマンで教えていただいたり、自主練でもそういうのは意識していました。守備と同じで、自分が今までやってきたこととは全く違うことだったので、正直モヤモヤしたりこれで合ってるのかなとか思ったんですけど、やっぱり熱い思いが徳武さんにもあって、「絶対それのがいいんだからそれで固めろ、すごくかたちがきれいだから」と言われて、信じるしかないので。そういったことがやっぱり春先の沖縄とかにもつながったのかなと思ってます。

――今もまだ感覚として気持ち悪さは残っていますか

 いや、今はそんなに。その徳武さんからの教えをうまく自分のバッティングにつなぎ合わせるというか、取り入れたという感じなので。リーグ戦に向けてはそこをもう1回見直して、いろんなことを見直して、冷静にバッティングをしたいですね。

――沖縄キャンプを振り返ってみていかがでしたか

 野球に関しては、代打で出るという機会がこれまでなかったんですけど、代打で最終回とか出させてもらった時に、ポンって出されてもしっかりその前に準備をして、ヒットを打てたっていうのは今までになかったので印象に残っています。

――小宮山監督からアドバイスはありましたか

 特にはないですけど、当てにいくバッティングが多いので、しっかり振っていけっていうことは日頃から言われていますね。

――春季オープン戦で得られたものはありましたか

 やっぱりこの前の社会人対抗戦でJX-ENEOS(●2-12)とやった時に何もできなくて。あの日の自分はいない方が良かったんじゃないかってくらい試合後に気持ちが落ちてしまったんですけど、リーグ戦前にああいう経験が神宮でできたっていうのは良かったのかなとは思いますね。エラーもして、バントも失敗して、ヒットも出ないで、もう何もできない。じゃあその時に自分はチームのために何かベンチでやったのかって考えたら、なんかシュンとなっていただけで。チームの雰囲気にも絶対良くないことだし、何もできなくてむしろチームに対してマイナスなことをしてしまったと思っています。さっき言ったように勝つことを最初から考えていれば、自分の結果で一喜一憂しないと思うのでそんなことにはならないです。だからこそチームが勝つことを考えないと、1人しょぼんとなり、また1人しょぼんとなりってチームの中で連鎖していってしまうので、そういうことはこの前の社会人対抗戦で学ぶことができました。

――やはり普段のオープン戦とは違いましたか

 やっぱり神宮球場でやるってことがどれだけのことなのかっていうことだと思います。

「優勝するための2番打者になる」

――チームの今の雰囲気はどうですか

 このままいったら多分駄目ですね、雰囲気的には。もっとリーグ戦に向けて、全員が絶対勝つというような気持ちにならないといけないと思うんですけど、その中心になるのはやっぱりメンバーに入った人であり、その中でも試合に出る人が、「今年は絶対優勝を取るんだ」っていうのを全面的に練習から出していかないと、周りも乗ってこないと思うので。みんないこうぜじゃなくて、まずは試合に出る人がもっとそういう気持ちを自分たちから出していかないと。出していけば、良い雰囲気で初戦に入れると思います。

――雰囲気づくりのために何かやっていることはありますか

 やっぱりノックから元気出していくしかないので、ばかみたいに声出して、駄目なら駄目で叱る声っていうのが今少なくなってきてるので。まあ自分もなかなか3年生という立場で、叱るというのはあれかと思うんですけど、自分がしっかりやっていないと言えないことなので。自分でちゃんとやっていない人が多いからみんなに言えないので、自分でしっかりやる人が増えていけば、そういう声も自然に増えていくんじゃないかなと思います。

――一塁手には1年生の中川卓也選手(スポ1=大阪桐蔭)が入っていますが、声掛けなどは

 やっぱりすごい選手なので向こうからもアプローチというか声が飛んでくるので、そこは本来の野球選手とはこういう姿だなと思います。グラウンドに入ったら先輩・後輩関係なしに言えるようにならないと風通しが悪いし、絶対強いチームになれないので、その辺はさすがだなと思いましたね。

――春季リーグ戦の対戦カードについてはどう思いましたか

 自分からしたらどこの相手も同じというか、今どこが強いとかないと思うので。まあ決まってしまったことなので、一戦一戦って感じだと思います。

――優勝を目指す上でカギとなる試合は

 やっぱり東大戦だと思いますね。最初のカードをどう入るかだと思います。第1戦からそこを取り切る。2勝1敗でもいいから取り切るっていうことが一番大事だと思います。きれいなかたちで勝つんじゃなくても、結果汚いかたちでも勝てれば。勝たなきゃいけないので。

――最後に、リーグ戦に懸ける意気込みをお願いします

 監督さんも常日頃から言ってるように、また違った早稲田を見せないといけないということで、そういう姿を神宮でこの前の社会人対抗戦ではチームとしても自分としても本当に何も見せられなかったので。違うんだというのを見せるためには勝つこと、全力疾走すること、基本に忠実なプレーをすること、そういったことで初めて評価してくれると思うので、自分の意気込みとしては、優勝するための2番打者になることです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 島形桜)


今春の抱負は『つなぐ』。好機を演出する、いぶし銀の活躍に期待しています!

◆金子銀佑(かねこ・ぎんすけ)
1999(平11)年1月4日生まれ。169センチ、72キロ。東京・早実高出身。教育学部3年。内野手。右投右打。沖縄遠征中に原因不明の腹痛に襲われた金子選手。約1週間、一人で一時帰京することとなりました。「おなかはすくのに、食べると気持ち悪い」という状態を繰り返していたそう。回復して本当に良かったです!