新エースの誕生だ。3年目のシーズンを迎える早川隆久(スポ3=千葉・木更津総合)が今年背負う番号は、『18』。早大では、『エース左腕』を意味する数字だ。周囲からの期待値は高まる一方だが、本人は冷静に自己を分析する。チームの命運を託された左腕の胸中に迫った。

※この取材は4月5日に行われたものです。

今年は『カーブ』


取材に応じる早川

――昨日、小島和哉選手(平31スポ卒=現千葉ロッテマリーンズ)がプロ初登板をかなえました。ご覧になっていましたか

 見ていたんですけど、緊張していたのかなという感じはありました。でもまだシーズン始まったばかりですし、開幕ローテに入れたというだけでもすごいなと思いました。

――球場に行かれたのですか

 いや球場には…。あしたオープン戦も控えていますし、(東京六大学春季)リーグ戦も近いので風邪ひいたらまずいなと(笑)。こっち(安部寮)で見ていました。

――今でも連絡はよくとりますか

 そうですね。小島さんと大竹さん(耕太郎、平30スポ卒=現福岡ソフトバンクホークス)とはよく連絡をとっています。「プロはこうだよ、ああだよ」みたいな話は色々としてもらっています。

――さて、3年目のシーズンが始まろうとしていますが心境は

 後輩の方が多くなっているので、そういう面では自覚というか責任感はものすごく感じます。他の選手を引っ張っていかなければなと思っています。

――先輩でいるのと後輩でいるのはどちらがやりやすいですか

 自分は上級生になった方がやりやすいというか、自分の思ったプレーをしやすいというのはあります。下級生のころは気を使うというわけではないですが、新人らしいフレッシュなプレーがあまりできていなかったと感じているので、上級生でいる方が動きやすいのかなと思っています。

――早大に来て2年がたちましたが、ここまであっという間でしたか

 そうですね、あっという間でしたね。やっと生活のリズムとか色々なリズムをしっかりつくれているのかなと思います。

――生活の話題とは少しずれるのですが、2年春までは試合中に必ず長袖を着ているイメージでした。しかし昨秋からは高校時代と同じ七分袖になっています。これはこだわりですか

 (入学当初は)大学では長袖でトライしようと思っていたんですよ。でも七分の方が高校時代から着慣れていたので、そういう面では今の七分袖がしっくりきていますね。

――なぜ長袖にトライしようと

 汗が夏になると指先の方まで垂れてきちゃうんですよ。それが嫌だなと思っていたんですけど、よく考えたら大学は夏に試合がないので。強いて言うなら春の早慶戦がちょっと暑いかなというぐらいなので、そんなに支障はないと思って七分に戻しました。

――ここからはオフシーズンの話について。冬から春にかけて意識的に取り組んできたことはありますか

 キャッチャーとのコミュニケーションはすごく大事にしていて、トヨタ(自動車)の佐竹さん(功年、平18人卒)や他のOBの方々に質問を色々とした時に「キャッチャーとのコミュニケーションはものすごく大事だよ」と言われました。これはすごい大事にしています。正捕手の小藤さん(翼副将、スポ4=東京・日大三)に限らず、岩本(久重、スポ2=大阪桐蔭)や重田さん(慎太郎、文構4=佐賀西)など、色々なキャッチャーとの意思疎通はしっかりとしています。

――どういった話をされるのですか

 基本的にはバッターに対しての攻め方であったりですけど、あとはゲームの進め方というか。「序盤はこういう入りで、中盤はこう攻めて、最後はこういうふうな感じで」と具体的に色々考えてやっています。

――オフシーズンと現在では、どのような練習スケジュールで動いていますか

 (冬や沖縄キャンプ時と比べて)ランニングの量はそんなに減っていないのですが、トレーニングの量が若干減っています。体への負担は少なくなってきていますけど、その分より実戦的な練習が多くなってきているので、ボールを使った練習が増えています。ただボールがグラウンドを飛び交っていると、けがもしやすいのでそこは気を付けながらやっています。

――キャンプ中のトレーニングとは、ウエイトトレーニングですか

 ウエイトというよりかは、ファンクションというかピッチング動作につなげやすいトレーニングとかをよくやっていて。そういうトレーニングは東京に戻ってきて少なくなっているかなと思います。

――小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)から「(投球時に)体の開きを抑えながらリリースポイントを前に」という指導があったそうですが、詳しくお聞かせください。まず、今までは体が開いていたのですか

 神宮はスピードガンで球速が出やすいので、スピードガンを意識してしまうとどうしても体が開いてしまうので。そうするとバッターにボールが見やすくなってしまって、質の悪いボールをはじき返されるというケースがものすごく多くて。去年の秋とかはスピードよりもキレで勝負しようという意識があったので、質はどんどん上がってきているのかなと思います。

――バックスクリーンの球速表示は見ないようにしていたと

 そうですね。上(バックネット裏の内野二階席付近)にも表示されるんですけど、そんなのは全く考えないようにして。配球のことをとにかく考えていました。それがやっと身についてきたので、あまりスピードにはこだわりを持たずに投げています。

――リリースポイントを前にする狙いは

 やはりバッターとの距離が近付けば近付くほど、ピッチャーが投げたボールをバッターは捉えにくいですし、ボールの変化もバッターの手元に近くなるので、対応されにくくなるのかなと思います。

――基本的なことから小宮山監督に教わっていると

 そうですね。ポイントポイントでヒントを教えてもらって、自分で練習を改善して自分でメニューを組みながらというふうにやっています。

――今磨いている球種はありますか

 真っすぐに関しては色々な人から「スピードもキレもある」と言ってもらっているので、緩急をつけたいという狙いもあってカーブを磨いています。(真っすぐとの球速差が)40キロくらい離れているのでバッターも嫌ですし、カーブは徹底的に磨いています。

――春季オープン戦でもカーブを多く投げていますか

 (投球割合の)2割ぐらいは投げています。バッターの不意を突くようなカーブというのを意識してやっています。

――これまではスライダーのイメージがありました

 やはりカーブがちょっと増えてきているので、カーブを生かしつつスライダーで勝負していくという感じでやっています。

――先ほどトヨタ自動車・佐竹投手のお話がありました。トヨタ自動車の練習会に参加されたのはいつのことですか

 3月の上旬ですね。沖縄キャンプの時にトヨタさんもそこでキャンプをされていたので、自分も呼んでいただいて。そこで佐竹さんに「腕の振りなりのボールしか来ない」と言われて。腕を思い切り振って変化球だったらバッターは嫌ですけど、自分のはスライダーならスライダーだなって分かってしまう腕の振りみたいだったので、それを改善しようということです。

――変化球を投げる時に腕の緩みが出てしまっていたと

 そうですね。

――他に配球などは教わったりしましたか

 配球というよりかは、考え方を教わりました。「キャッチャーに配球を任せるのもいいけど、ピッチャーが配球を組み立てないと試合は成り立たないよ」と言われました。キャッチャーとも話しますけど「自分が投げたいボールを投げろ」と言われたので、考え方を教えてもらったという感じですね。

――投げたくない球種のサインだったら、しっかり首を振るようにしていると

 そうですね。結構振るようにしています。

「真っすぐを見逃してもらえるような配球」


真っすぐを生かす変化球に手応えを感じている早川

――ここからはオープン戦の話に移ります。結果を見る限り調子は良さそうですが、ご自身の感覚ではいかがですか

 合格点をあげてもいいかなと思っています。真っすぐのキレも確かに良くなっていて、真っすぐでも簡単にファウルを取ってカウントを稼ぐことができていますし、その中での変化球もものすごく生きています。ただ六大学全体が自分の真っすぐを張ってきたときは変化球を投げて、かわしながらやっていかなければならないので、オープン戦では色々と試しながらやっています。

――印象的だったのは、7回を11奪三振、無失点に抑えたHonda戦ですが、これは自信になっていますか

 そうですね。Hondaのマネジャーの米田さん(文彦、平17一文卒)にも自分たちが沖縄にいる時に「(沖縄キャンプ中の)ホンダ鈴鹿戦に勝てなかったうちにも勝てないよ」と言ってくれて。Honda戦で先発を告げられた時にはやってやろうという気持ちになりました。わりと調子が良かったというのもあって、真っすぐでガンガン押せましたし、Honda戦は合格点をあげられる一試合だったかなと思います。

――社会人相手でも追い込んでから真っすぐで空振り三振を奪っているシーンが多々ありました。やはり、真っすぐでガンガン押していきたいということですか

 それこそ真っすぐを見逃してもらえるような配球というのを意識してやっています。真っすぐを生かすための配球をして、そのような結果が出ているので今はすごい状態はいいのかなと思います。

――真っすぐにはかなり自信を持っているのですか

 真っすぐというよりかは、真っすぐを生かせている変化球の方を評価してもらいたいなと自分的には思っています(笑)。真っすぐは、どの良いピッチャーにとっても自分のベストボールだと思うので、それ以外の変化球を褒めてほしいなと(笑)。

――変化球があるからこそ、真っすぐを生かすことができているということですね

 そうですね。

――12月に行われた侍ジャパン大学代表候補強化合宿では、オフシーズンであるのにもかかわらず146キロを計測しました。今はもう少し出ていますか

 球速の話はあまり聞かないので分からないですけど、大幅には上がっていないと思います。でも147、8は多分出ていると思うので、マックスというよりかはなるべくコンスタントに140キロ台中盤を投げ込めるピッチャーが理想かなと思います。

――平均球速が安定しているのが理想だと

 そうですね、アベレージを1キロずつ上げていければなと思います。調子がいい悪いに限らず、平均球速を安定させたいなと。

――投手陣全体についての質問です。社会人対抗戦では大量失点してしまいました

 状態は良かったんですけど、監督が言ったように「肝が据わっていないと神宮では投げられない」ので。去年の自分もオープン戦は調子良くて、いざリーグ戦で神宮のマウンドに立ってみたら打たれてという感じだったので(監督の言葉は)よく分かりますし、逆に今回これを経験できたのが社会人対抗戦で良かったのかなと。またフォアボールで自滅というケースも多く見られて、この間の中大戦(●6―7)も徳山(壮磨、スポ2=大阪桐蔭)がフォアボールから崩れ(て逆転を許し)たというのがあったので、四死球を(減らさなければいけない)。あとはとりあえず、初回の先頭バッターを抑えなきゃなと思いますね。

――神宮のマウンドはそんなに他と違うのでしょうか

 そうですね。社会人対抗戦はわりとオープン戦の雰囲気に近いんですけど、(リーグ戦になると)応援があるので。そうすると全く違うものになってくるので、
普段の調子とは違うピッチャーになってしまうのかなという不安はありますけど、その雰囲気にのみ込まれても抑えられるような中継ぎ陣になってもらわないとなと思います。

――社会人対抗戦で大量失点を喫したのはいい経験になったと

 そうですね。いい経験になったと思いますし、あとは各自どこが悪かったというのは理解していると思うので、そこをしっかり改善できればリーグ戦ではいい結果につながってくると思います。

――社会人対抗戦以外の春季オープン戦では、全体的に好調を維持していたと思います。これをどう見ていますか

 監督の「バッターと勝負しろ」という言葉が自分たち投手陣に結構響いていて。攻めた結果のフォアボールはオッケーなんですけど、この前(社会人対抗戦)の長柄(昂、人2=石川・金沢桜丘)みたいに頭が真っ白になってフォアボール連発と言うのは駄目だよと話していたので。そういう意味ではメンタルですね。メンタル面のことを監督に教えてもらって、勝負できるようになったかなと思います。

『18』

――お次は背番号の話題について。そもそも新しい背番号はいつ告げられるのですか

 告げられたのは、沖縄キャンプに行く前の背番号発表があった時です。ポジション順、4年生からの50音順で呼ばれるのですが、(昨年まで早川が背負っていた)13番のところで上條さん(哲聖、商4=東京・早実)が呼ばれて、「あれっ?」ってなって(笑)。その後「早川、18番」と告げられた時は、正直戸惑いが大きくて。まだ(リーグ戦通算)2勝しかしていない自分が18播を背負っていいのか、という戸惑いがものすごくあったんですけど、色々な先輩方には「期待値も込められての背番号だよ」と言われて、そこは頑張ろうという気持ちになりましたね。

――今はもうやってやろうという気持ちになっていると

 やってやろうという気持ちにはものすごいなっていますけど、やっぱり責任感というか、チームの柱に与えられる背番号であると自負しているので、プレッシャーも感じますけど、頑張れよという監督の期待なのかなと思っています。

――『18』を背負う選手が現れるのは、2011年秋の大野健介選手(平24社卒=現ヤマハ)以来ですが、先輩方から連絡などはありましたか

 OBの方と食事に行くと「頑張れ~」「よっエース」とか言われるんですけど(笑)、まだエースの器じゃないのになと思いながら話しています(笑)。でも、そういうように『エース』と呼ばれることが多くなったので、そういう器にならないとなというように思っています。(自覚は)結構芽生えてきていると思います。

――「好きな背番号選んでいいよ」と言われたら、何番を選んでいましたか

 自分はずっと大竹さんと小島さんに憧れて、(大竹の)13か(小島の)19をつけたいなと思いながら入学してきたので。13か19を選んでいたと思います。

――それではいよいよ、春季リーグ戦について伺ってまいります。まずカード順(東明立法慶)をご覧になってどう思いましたか

 正直そのカードを聞いても、とりあえず一戦必勝でやらないと無理だなと感じているので、先のことを考えずにまずは東大だけを考えながらやっていきたいと思います。

――その中でもカギになりそうなカードはありますか

 立教戦がポイントかなと自分はすごい感じています。(3カード目の)立教戦の勝ち方によって、後半戦に生きてくるかどうかが決まってくると思います。立教はチームとして自分たちに一番似ていると思います。投手戦になるかなとも思いますし、一歩間違えれば乱打戦になるのかなというのがあるので。

――東京六大学の中で警戒している打者は

 そうですね…やっぱり慶応のバッター陣は全員もう(笑)。あとは明治だと、本当に森下さん(暢仁、4年)がピッチャーですけどすごいバッティングがいいので。立教だと藤野さん(隼大、4年)が相性良くないので警戒しています。あと法政だと船曳さん(海、4年)が復帰してすごい怖いなと思っています。

――その中でもやはり慶大ですか

 そうですね、慶応がやっぱり。去年4年生だった内田さん(蓮氏)以外全員残っているので、ほぼ(スタメンの)メンツが変わっていなくて。柳町さん(達、4年)がサードに入って、正木(智也、2年)が外野に入るとなると、いや(去年と)変わってないやんっていう(笑)。そういう感じなので、そこら辺は怖いですけど、今の自分ならいけるかなという自信もちょっとずつはついてきているので。怖いですけど、去年よりは怖くないなという感じです。

――早川選手は2回戦もブルペン待機するそうですが

 「3日間いつでも投げられるようにしておいて」と監督に冬のうちから言われているので、3連投の練習もしていますし、やっぱり3連投となるとさすがに2日目で頭(先発)はないと思うので、中継ぎで1イニング、2イニング出し切って抑えないと、3戦目への悪い流れになってしまうので、2日目の中継ぎも大事だと感じています。

――昨春はシーズン途中に左肩を痛めてしまいました。この辺りに対する怖さはありませんか

 去年の秋には毎日のイニング数は少ないですけど連投が重なっていたので、そこら辺は大丈夫かなと思いますし、この冬も多い球数を連日投げても痛みとかなかったので、そんなに怖さはないかなと思います。

――昨秋は数多く登板されていましたが、疲れはありませんでしたか

 精神的な疲れはありましたね。中継ぎ独特の、いつ出るんだろうと思いながら待機しているので、精神的な疲れはすごくありましたね。

――それでは締めの質問に入ります。今春、こだわりたい数字はありますか

 理想は監督に言われた通り6勝ですけど、自分は別に5勝でも全然構わないので、第3戦にもつれ込まないように5勝で終わらせることができればありがたいです。でも6勝というのは自分のモチベーションにしていたので、この数字を掲げていますね。勝ち星には今一番こだわりたいなと思います。

――昨秋の救援としての個人目標は『流れを引き寄せる投球』でした。先発の今季はいかがでしょう

 やっぱりゲームメークという点で、初回の立ち上がりは緊張すると思うんですけど、ここをしっかり三人で抑えることができれば自然とうちの流れになるのかなと感じています。そこの三人を意識して投げられればなと思っています。

――個人目標は6勝ということでよろしいでしょうか

 そうですね、6勝で。欲を言えば100球以内で1試合を終わらせたいなというのは掲げています。100球以内で完封完投するのが理想なので、そこを目標にやっていければなと思っています。

――最後に春季リーグ戦への意気込みをお願いします

 やっぱり一戦必勝を掲げてやっていかないと優勝は見えてこないので、常に全力で。試合前のノックから全て全力でやれば勝てると思うので、そういう細かいところでも隙を見せずに野球をやっていければなと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 石﨑開)


今春の目標は『6勝』。新エースとして大車輪の活躍を期待しています!

◆早川隆久(はやかわ・たかひさ)
1998(平10)年7月6日生まれ。180センチ、74キロ。千葉・木更津総合高出身。スポーツ科学部3年。投手。左投左打。昨秋、赤いラインが入った黒基調のグラブを新調された早川選手。「黒赤という配色がわりと好きなので」と笑みをこぼしながらも、赤いラインには『情熱を持つ』という意味が込められているそうです。燃える情熱は内に秘め、マウンドでは冷静に。今季はWのエースとして無双の投球を披露してほしいですね!