マウロ・エマヌエレ・イカルディ(インテル)は今年2月、26歳になった。既婚者で二児の父、そして10年のプロ選手とし…

 マウロ・エマヌエレ・イカルディ(インテル)は今年2月、26歳になった。既婚者で二児の父、そして10年のプロ選手としてのキャリアを持つイカルディだが、それでも彼はいまだに「マウリーニョ(マウロちゃん)」と、子どものように呼ばれている。

 その理由のひとつは、実際にイカルディが子どものままだからだ。もちろんルックスではなく、その頭の中が――。数々の問題発言、体中のタトゥー、ド派手な高級車を乗り回し、服装の趣味はお世辞にもいいとは言えない。

 そしてイカルディ家のすべてを取り仕切っているのは、このスター選手ではなく、ワンダ・ナラ、6歳上の姉さん女房だ。派手で、目立つのが大好きな女性だ。サンプドリア時代のイカルディのチームメイト、マキシ・ロペス(現ヴァスコ・ダ・ガマ)の妻で、彼との間に3人の子どもがいたが、イカルディは彼女に惚れ込み、ロペスから略奪し(もしくはイカルディがワンダに略奪され?)、結婚した。



マウロ・イカルディ(インテル)と妻で代理人のワンダ・ナラ photo by Getrty Images

 だが、ワンダは妻の座だけでは飽き足らなかった。彼女はイカルディの代理人となり、夫の契約、更新、移籍と、すべてを取り仕切るようになった。こうしてイカルディは表ではすっかり何も言わなくなり、かわって彼女が常にスポットライトを浴び、チームとの交渉を一手に引き受けるようになった。

「スポットライトを浴び」というのはたとえ話ではない。ワンダ・ナラは実際『ティキ・タカ』というイタリアの人気テレビ番組の常連ゲストで、そこでチームやチームメイトについて好き勝手な発言をしている。夫の職場(インテル)のことなど屁とも思っていない様子だ。

 現在、インテルとイカルディの関係がこじれにこじれているのも、発端はこのワンダだった。イカルディとインテルの契約は2021年の6月末までだ。契約が切れるのはまだ2年も先の話なのだが、すでに2018年の終わりごろから、ワンダの激しいプレッシングが始まった。

 まずは彼女とインテルの間で、冗談めかした形での応酬が交わされた。その中でも一番強烈だったのは「インテルはマウロ(イカルディ)をユベントスに売って、(クリスティアーノ・)ロナウドとコンビを組ませたいみたいよ。契約更新は遠そうね」というワンダの発言だ。

 ちょうどその頃、元ユベントスのGM、ジュゼッペ・マロッタがインテルのCEOに就任しただけに、この発言は物議をかもした。インテルはこれを、真っ向から否定している。「ワンダ夫人の発言は都市伝説に近い。イカルディはユベントスには決して移籍しない。我々は彼との適正な契約更新を望んでいる」と。

“適正な”とは? インテルは更新の条件として550万ユーロ(約6億9000万円)の年俸を提示した。一方、ワンダは700万ユーロ(約8億8000万円)+ボーナスを要求した。

 年末休暇になり、イカルディとワンダはアルゼンチンに里帰りした。そして年始最初の練習日に、イカルディは現れなかった。マロッタはこのことを重く見て、イカルディに10万ユーロ(約1250万円)の罰金を課した。ワンダは反撃に出た。

「インテルの提示する額では、契約は更新できないと思う。今、スペインのふたつのチームと交渉している」

 この発言は炎上したが、ワンダはそれだけでは気が済まず、今度はチームメイトすべてを敵に回すようなコメントをした。

「もし契約を更新したいなら、少なくとも1試合で5回はマウロにいいボールを出せるような選手を獲得することね」

 もちろん一部の選手たちは反発し、チームはついに行動に出た。イカルディからキャプテンマークを剥奪し、GKのサミール・ハンダノヴィッチに渡したのである。ルチアーノ・スパレッティ監督はキャプテンの交代について「苦渋の決断だったが、すべてはインテルのためである」と述べている。

 イカルディはこの処分に憤慨し、練習を欠席、その後は膝の炎症という理由でヨーロッパリーグのラピド・ウィーン戦を欠場し、その後、ピッチに姿を見せなくなった。2月の半ば、イカルディとワンダはそろってサン・シーロのスタンドでインテルの試合を観戦していたが、インテリスタは彼らにブーイングを浴びせた。

 イカルディの膝に関しては診断が公にされ、何の問題もないことが判明した。膝はただの言い訳だった。インテルはチームをリスペクトしない選手にペナルティを課したのだ。「イカルディは自分のしたことの責任を取って、この処分を受けなくてはいけない」と、スパレッティはテレビのインタビューで発言している

 ロッカールームもイカルディを巡って割れていた。フィオレンティーナ戦でマッテオ・ポリターノがゴールを決めた際、イカルディと同じポーズをしてそれを祝おうとしたが、イバン・ペリシッチにあからさまに止められ、その様子は全世界に放送された。ワンダはこのことについても不平を述べているが、イカルディは相変わらず黙ったままだ。

 イカルディとインテルの対立は、SNS、テレビと舞台を変え、チームメイトや弁護士を巻き込み、今も続いている。先日のミラノダービーで、インテルは3-2でミランに勝利したが、イカルディはいなかった。「今日ロッカールームにいた選手はみんな優秀だ」と、スパレッティ監督は皮肉のように言った。

 ただしCEOのマロッタが、忍耐強く、事態を収拾しようと努めているのは確かだ。その証拠に、4月に入ると5週間ぶりにイカルディをチームに戻している。復帰のジェノア戦で、イカルディは1アシスト1ゴールの活躍を見せたが、彼の謝罪を期待していた者は失望した。イカルディは今回も何も言わなかった。

 とにかくシーズン終了までこのままでいく。そんな暗黙の了解はできているようだ。ただ、そのあとどうなるかはわからない。ブックメーカーは、イカルディが移籍するかしないかの賭け金を受付中だ。

 ひとつ確かなのは、イカルディという選手の価値が、今回の一件で大きく下落してしまったことだ。興味を示すチームはもちろんあるだろうが、イカルディを獲得するということは、ワンダがもれなくついてきて、チームの采配にあれこれ首を突っ込んでくることを意味する。イカルディの獲得を希望するチームは、それなりの覚悟が必要だろう。