開幕戦で幸先よく表彰台を獲得したレッドブル・ホンダだったが、第2戦・バーレーンでは前を追うどころか、逆に失速してしまった。今週末の第3戦・中国では挽回できるのだろうか。 チームはバーレーンGPで決定的なグリップ不足に悩まされ、両ドライ…

 開幕戦で幸先よく表彰台を獲得したレッドブル・ホンダだったが、第2戦・バーレーンでは前を追うどころか、逆に失速してしまった。今週末の第3戦・中国では挽回できるのだろうか。

 チームはバーレーンGPで決定的なグリップ不足に悩まされ、両ドライバーともに速さを引き出すことができなかった。翌週に同地で行なわれた合同テストでは、その原因究明のために徹底的なデータ収集と分析作業が行なわれ、チームはその原因を特定したという。



フェルスタッペンとガスリーは中国GPで挽回できるか

 問題は、サスペンション周りのセットアップにあった。

 テストで1日ドライブしたマックス・フェルスタッペンはこう語る。

「結論としては、僕らはセットアップを間違っていた。残念ながら、レース週末全体においてね。メカニカル面のセットアップだ。十分に大きなミスだったと言うべきだろう。テストでかなり理解を進めることができたので、僕らはそのミスから学んでさらに強くならなければならない」

 フェルスタッペンいわく、サスペンションのセッティングに根本的な間違いがあり、そのせいで、どうセットアップ変更をしてもマシンバランスが定まらず苦労したという。コーナリングの途中でマシンバランスが変わり、突然リアが抜けてしまう――だから、思い切って限界ギリギリでコーナーに飛び込んでいけないという症状だ。

「グリップ不足に苦しんでいたせいでスライド量が多くなり、そのせいでタイヤがオーバーヒートして、さらにグリップを失うという状況だった。いずれにしても、決勝ではどちらのタイヤでも僕らは遅すぎた。だけど、マシンバランスが快適に走れるようにまとめられれば、かなり彼らに接近することはできるだろう。3位表彰台だって確実に獲れていたはずだ」

 テストでその問題の原因究明と対策はすでにできており、「イージーフィックス(簡単に解決できること)だ」とフェルスタッペンは言う。中国GPで同じ轍(てつ)を踏むことはなさそうだ。

 しかし問題は、それが解決してRB15本来の速さを発揮できたとしても、開幕戦のようにフェラーリやメルセデスAMGの後塵を拝することに変わりはなさそうということだ。

 すでにチーム首脳陣が認めているとおり、RB15はダウンフォース量が不足している。昨年型よりも進化していることは間違いないが、ライバルたちに比べると負けているのだ。

「僕自身はこのクルマで気持ちよく走れているし、できる限り速く走っている。オーストラリアだって予選4位というすごくいい仕事ができたし、バーレーンの5位もすごくよかったと思う。去年のクルマよりいいマシンであることは間違いない。問題は、それが単純に(ライバルと比べて)速くないというだけのこと。その問題はバーレーンGPの前にわかっていたことだよ」(フェルスタッペン)

 木曜の上海のピットレーンでも、レッドブルのピットガレージからはリューターでパーツを削る音が鳴り響き、新たなパーツを持ち込んで、現場合わせで調整している。レッドブルにしては珍しい光景だが、そのくらいギリギリのタイミングでも、なんとかアップデートができている証だ。

 ただ、主にリアのダウンフォース量が不足しているようだが、これがすぐに解決できるとはチームも考えていない。バーレーン合同テストでは問題解決のためのプログラムも行なわれ、そのデータをもとにスペインGP以降に向けて対策アップデートの最終準備が進められているところだ。それが投入されるまでは、現状のマシンをベースに可能な限りの小変更を加えながら戦うしかない。

 開幕から不振にあえいでいるピエール・ガスリーにとっては、レッドブルの特殊なマシン特性・挙動と自分のドライビングスタイルを合致させるという課題も抱えている。

「トロロッソは(挙動の)予測ができるマシンだったし、自分の思うように走ることができた。だけど今は、クルマに乗っていて気持ちよく走れないし、予測が難しくてすごくトリッキーなときがある。それが今、もっともどうにかしないといけないことだ。

 バーレーンGPのあとにエンジニアとともにいろんなことを見直して、学べたこともたくさんあった。僕のドライビングスタイルに特化してマシンのセットアップを改善するため、やるべき方向性も見定めた。だから、それが今週末につながればと思うよ」

 その一方で、ホンダはバーレーン合同テストで今後投入予定の新ハードウェアをテストし、良好な結果を得たという。スペインGP以降に投入を予定しているスペック2の流れをくむものだ。

 現在のレギュレーションでは、パワーユニットの実走テストを行なう機会は極めて少なく、実戦投入前に実走確認をするのは、こうした合同テストくらいしかない。そういう意味では、貴重なテストができたと言える。

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターは次のように説明する。

「将来を見据えてのテストです。将来使っていきたいと思うモノを、実走で確認を行なって、収穫はありました。非常にプロダクティブ(生産的)なテストでした」

 そしてソフトウェア面でも、セッティングのさらなる改善のためにテストを行なった。これも今週末の中国GPに生かされるはずだ。

「バーレーンGPで問題になったエンジンブレーキやドライバビリティに関する部分です。同じサーキットでいろいろトライし、それを持ち帰ってベンチテストをした結果をこの週末に持ち込みました」(田辺テクニカルディレクター)

 上海サーキットは1.2kmのバックストレートがあり、ターン12の出口から連続全開時間は18秒にも及ぶ。ここでのパワーユニットにかかる負荷は大きいが、サーキット全体を見渡せば回り込むようなコーナーや中低速コーナーも多く、全開率・エンジン寄与率はバーレーンほど高いわけではない。

 となれば、やはり上海で重要になるのは車体性能だ。

 現状でフェラーリがストレートで大きなアドバンテージを持っているのは確かだが、中低速コーナーではメルセデスAMGやレッドブルが速い。バーレーンではストレート区間でフェラーリに0.5秒の差をつけられたメルセデスAMGが、1周トータルでは0.3秒差まで迫ったのはそのためだ。上海ではその比率がさらに上がるため、メルセデスAMGやレッドブルにもチャンスがあるかもしれない。

 バーレーンでの問題解決と、RB15が抱える根本的な問題の改善。バーレーンでの失速の原因となったそのふたつが、どれだけ解決できているか。

 1000レース目のF1を迎える今週末の中国GPで、レッドブル・ホンダがどこまでやれるかは、そこにかかっている。